完結 悪意を向けられたので返しただけですが、何か不満でも?

音爽(ネソウ)

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卒業式は誰の為

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学生最後の大舞台、卒業式と盛大なパーティが開かれた。
大赤点を出した王子とヒーナは在校生側で仏頂面を露わに参加した、手には木箱と袋を手にしていて周囲を騒つかせる。恥も外聞もなく現れた二人に職員らは呆れて見ていた。

送辞と答辞が交わされる行事が例年通り行われた、在校生からの祝福の言葉は恙なく終わった。しかし答辞を指名されていたバカ王子が卒業が出来なかった。やむなく主席卒業を果たしたナディアが代役を務めた。
恥を晒した揚げ句に華の舞台を奪われたフレッド王子は凄い形相で壇上のナディアを睨んでいた。
そして、国王の祝辞で締められる場面がやって来た。

父王が壇上へ姿を現すやいなや、バカ王子とヒーナが乱入をした。
大荷物を抱えた彼らはマイクを奪うと、声高にナディアの悪行の数々を知らしめる時がきたと叫んだ。
何事かと狼狽える生徒達とやりおったと頭を抱える教師たち、そして全てを把握済みの愚王と貴賓席に並ぶ大臣らが青い顔をして項垂れる。

「きょうの良き日に水を注すことを許して欲しい!ここにいるヒーナ嬢へ悪辣非道な行いをしてきたナディア・ルフィンス・リフレートの罪を白日の下に晒したいのだ!全ては俺とヒーナの尊厳のために!」
その宣言は一個人の都合であるというのは明白だ、彼ら二人以外は全員関係のない話である。
王は大きくため息を吐くと愚息に向かって言った。

「やめなさい、今なら咎めなしで赦してやる。王族の籍に留まりたいならばな」
「な!父上なんていう事を被害者はヒーナだというのに!罪人の肩を持つと言うなら親とて容赦しないぞ!」
自分の言葉に酔っているらしい王子には王の言葉が通じない、王は生気のない目で貴賓席にいる宰相の顔を見た。
だがその表情には慈悲は伺えなかった。

諦めた王は「好きにしろ、余は疲れた」と言葉を残して壇上から去って行く。
一番聞いて欲しい相手が場から消えてしまった、焦る王子だがヒーナがせっついてスーツの端を引っ張る。
「フレッドぉ早く断罪しちゃいましょう、きっと皆は私たちの味方だわ。そして盛り上がったところでパーティよ!」
「そうか、そうだな!」
宰相や大臣はいるのなら問題ないと踏んだ王子は捏造した証拠の数々を打ち撒いて咆えた。
ボロボロの教科書、インク塗れのドレス、そしてヒーナの怪我した写真と診断書を掲げていかに虐げられてきたかを衆目へとアピールした。
そして三文芝居を披露するヒーナは身振り手振りで「あーだこーだ」と訴える。

「見て下さい皆様!これは私が大切にしていた髪飾りですわ!御婆様の形見ですのよ!」
四方に折れ曲がった状態の成れの果てを掲げて瞳をウルウルさせるヒーナは悲劇のヒロインそのものだった。
シーンと静まりかえった会場を見回して王子は「うまくいった!」と拳を握る。
だが、それに水を注す声が響いた。

「恐れ入ります殿下、その髪飾りはうちの商会が最近流行らせたものです。ですから形見になるはずがございません」時系列的に無理がある品物を指摘して大商会の令嬢が論破してしまった。
それを聞いた生徒らがざわつき始めて波のように広がった。

「あらぁどういう事かしら?そういえば同じものを妹が愛用してますわ」
「そうだわ、間違いない。最近店頭に並んだものじゃない」
ヒーナが吐いた嘘が盛大に広がっていく、恥で顔を真っ赤にした彼女は「間違っただけよ!言葉の綾だわ!」と弁解する。

「こちらをご覧なってズタズタの教科書よ!ナディアが盗んで破り捨てたものだわ!私がゴミ箱で発見して泣いていたのを見た人もいるわ!」
目撃者がいると叫ぶヒーナだが、名乗りでる者はいない。それどころか違う目撃者が現れる。
「その教科書だけど、ヒーナ嬢が自ら刻んでいた所を見たぞ。変わった子だなと思って観察してたんだ。たしか3学年の廊下だった。そこなら映像記録に残ってると思う、先月の上旬のことだ」

予期してなかった目撃者の登場に王子は瞠目して叫ぶ。
「え、映像記録!?なんだよそれは!知らないぞそんなもの」
「私も知らなーい!ないようそれぇ!ずるーい!」
ぎゃいぎゃいと煩い彼らを尻目に学園長の指示で何かの機材が壇上のすぐ横に設置された。そして、ここ最近の防犯カメラの映像を早送りして披露する。事務員が手慣れた様子で先月分の記録を投影した。

白い壁に映し出されたのは廊下の隅でコソコソやっているヒーナの姿だ。手にはナイフとインクがある、己の鞄を漁って教科書を取り出すとザクザク切り刻み始めた。動かぬ証拠を見せつけられたヒーナは「ずるいずるい!プライバシーの侵害よ」と叫び出す。
捏造した証拠はまだまだあるが、もう駄目だとバカ王子は頽れてしまった。

「階段落ちをして痣まで造ったのに!ぜんぶぜんぶ台無しよ!どうにかしてよバカ王子!」
「なんだと!だから止せと言ったのに、俺に責任を押し付けんじゃないよ!乳オバケ!」
「きぃーー!乳オバケですって!?そのオバケで喜んでたドスケベは誰よ!」
口汚くの罵り合いだした二人をしばし傍観する生徒とお歴々たちは「面白い余興を見た」と喜んだのは内緒である。

結局たくさん作った証拠のほとんどは日の目をみないままゴミクズになった。

「わざわざ登城してアリバイを作るまでもなかったわ」
文明の利器に感謝するナディアはとても穏やかに微笑んでいた。



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