完結 王子に捨てられた令嬢は魔法騎士団長に拾われる

音爽(ネソウ)

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シャルル

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「ミリアム様、ただいま戻りました!」
食材を買い漁ってきたシャルルはホクホク顔である、一旦は騎士団と合同捜査をしていると見せかけた彼は、堂々と王都に戻り買い物をしてきたのである。

「おかえりなさい、貴方にばかり負担をかけますね」
申し訳なさそうにそういうミリアム・バルストルは読みかけの小説を静かに閉じた。それから、テーブルを拭き買ってきた食材を並べる。ほとんどが出来上がった総菜ばかりで直ぐに夕食となった。

「ワインはいかがですか?この鴨肉に良く合うんです」
「え、ええ。少し貰いますね」
しっとりとした鴨ハムを数枚束ねて、グイグイとミリアムに押し付ける。悪気がないのだが些か強引過ぎると彼女は思った。

「あの、ゆっくり食べさせて……」
「ああ、すみません!つい美味しいものを貴女に食べて欲しくて、ほらこれもお勧めです」
頭を掻くシャルルは頬を紅潮させて次々と彼女の皿に肉や野菜を盛り付ける、零れそうなくらい盛られたそれは今にも崩れそうだ。



そして、夕食が進むとミリアムの嫌疑は晴れたことを報告した。まだ、一部の者は疑心暗鬼らしいが王子が企てたことは露見したという。

「そう、王子が……私は余程嫌われていたようね。たった数日間の婚約だったけれど」
「そう気に病むことはありせんよ、悪いのは全部王子達なのですから。それと無罪放免になったわけですけど、すぐには戻るなとのバルストル卿の進言です」

「まあ、それはどうして?」
訝しむ彼女の顔は当然だ、てっきり王都の屋敷に戻れると思っていたのだから、その落胆ぶりはいかほどか。急に陰った顔は痛々しかった。

「シンディ・クウェル子爵令嬢の行方が知れません。王子と共謀して此度のことを起こしたのです、油断できないのですよ」
「シンディ?あの王子の影にいて色々言ってきた子ね。何かを画策していると言う事?」
するとシャルルはカモ肉を嚥下してから頷く、その顔は真剣で先ほどの道化ぶりは何処かへ消えていた。

申し訳ないがもう暫くここに隠れていて欲しいと深々と頭を下げる、そして顔を上げるとデレッとした相貌に変わっていた。
「ご安心ください!私がいる限り不自由はかけませんよ!今日はお風呂を造りましょう、あぁもちろん覗いたりしません!ゆっくり足を延ばして入ってくださいね!覗きませんからね」
「は、はぁ……」

念を押されると余計に身の危険を感じるミリアムなのだった。









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