完結 愛される自信を失ったのは私の罪

音爽(ネソウ)

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失った信頼

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どうにかして会わなければならないと思ったブラッドは、時季外れのちょっとした夜会を画策する。侯爵家主催とあれば参加しなければならない、これは矜持を掛けた催しである。
引き籠り勝ちだった流石のディアナも無理矢理に参列せざるを得なかった。

「あぁ、あの方は残酷だわ。ブリタニーを侍らせる姿を見せつけようというのね……」
すっかり拗らせてしまったディアナは何も信じられないと溜息を吐く、夜会は一か月後とある。貴族の夜会は大小あれどそれなりに準備を必要とする。
ディアナもまたダンスレッスンとドレスの用意で忙しくなる。

「ダンスなど誘われるわけないのにね、私は何のために忙しくするのかしら」
浮かない顔でレッスンを終えた彼女はまたも深い溜息を漏らした。そこに珍しく従兄のロベルトが顔を出した。彼もまた招待を受けたらしい。

「やぁ、互いに迷惑この上ないね。ボクは研究に没頭していたいのにさ」
「ロベルト、そうハッキリ言うものではないわ。まだ豆の研究を?」
「そうさ、いかに空豆を下げて生やすか!」
「バカねぇ……辞めちゃいなさいよ、そんな研究」
そうやって苦笑する彼女は表向き大変喜んでいると返事を書いていた、それもまた政略ならではである。愛など信じるものではないと彼女はこの数カ月で達観してしまった。

「何言ってるのさ、誰よりも夜会に行きたくない癖に。そうだろう?」
「う"っ」
痛い所を衝かれた彼女は胸を抑えて「はぁ……辛いわ」とよろめく、それでも僅かに恋心を引き摺っているようで青白い顔を歪ませるのだ。
ロベルトはディアナによく似た顔で眉をハチの字に下げる、貴族とは縛りが多過ぎるものさと諦めた顔で言うのだ。



***

夜会当日。

その日は朝から悪天候に見舞われ、ザァザァと遅い時間まで降り続けた。心待ちにしていたブラッドは「天候を理由にドタキャンされないだろうか」と玄関ホールを幾度も往復していた。
「坊ちゃま、そのようにしては御客人方が困惑されてしまいます」
家令に諌言されるまで繰り返ししていた彼はやっと我に返り「すまない」と悄気た。

それからは次々訪れる客を丁寧に招き入れ「今夜は楽しんでくれ」と微笑む。


そして、漸く待ち人が現れた。
彼女は従兄を伴って歩いて来る、銀髪に淡い青の瞳を持つ彼らはお伽話に出てくるエルフのようだ、その姿はまるでエルフの双子のようだと周りは見惚れる。それほどに二人はよく似ていた。

「やぁ、久しぶりだねディアナ、本来ならば私がエスコートしたかったな」
「……そうですね、ですが気分が優れないので彼に頼みました。いけません?」
「いや、そ、そんな事はない。今日は無理せず楽しんでくれ」
淡々と話す彼女は能面そのもので生気を感じさせない、それに気圧されたブラッドも浸食されるように蒼い顔になった。



楽団が音楽を奏で始めるとポツポツとダンスに興じる者が増えてくる。そこでファーストダンスを申し込もうとブラッドが動いた。
「どうか私に最初に踊る栄誉を」
そう言った途端に甲高く喧しい声が響いた、ブリタニー・ロベルである。その声を聞いた途端にディアナが怒りに顔を顰める。拙いとブラッドは思ったが後の祭りである。

「ブラッドぉ!お招きありがとう!今宵は楽しみましょう!」










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