完結 豊穣の力は差し上げません、悪しからず。

音爽(ネソウ)

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「ドリアードめ!大人しく捕縛されるが良い、そして役に立つのだ。私の手駒としてな!ハハハハッ!」
そう宣うアンセル王子は恋人であるシャリー・ロズランドを呼び寄せ「これで全て大丈夫だ」と言って侍らせた。

「ふふ、お姉ちゃん。良い恰好だわ、いつも私を見下していた同一人物とは思えないわ」
柊の檻に入れられたかのようなサラジーヌの状態を、嘲け笑う妹は憎たらしい顔をする。

「あぁ、どうして人族はこうも無知なのだろう」
サラジーヌは嘆くように頭を横に振ると体を緑色に輝かせた、その姿は神々しく、そこに居合わせた者に魅せ付ける。

「お、お姉ちゃん……今さら足掻いたところで」
「足掻く?何を言っているのかしら、脳内花畑の貴女のいう事は理解できないわ」
「んな!失礼ね、私は」

妹が何か言い訳をする前に、彼女は再び光り輝くと柊の檻にその手を翳し墨色に変色させて破壊した。瞬く間に炭化したそれは粉塵となり消えてしまう。

「どうお?柊の命を奪ってあげたわ、吸い上げたと言う感じかしら見るも無残ね。可哀そうに」
塵を掃うサラジーヌを見た王子は信じられないものを見たとばかりの瞠目して震える。

「そんなバカな!柊の葉はドリアードの唯一の弱点で……触れれば弱体化してしまうと」
「あら、そんな古い伝承を信じていたの?私の先祖がそんな欠点をいつまでも放置するわけがないわ。人間が地に蔓延る以前から命を繋いで生きているのよ、克服するに決まっているじゃない」

不敵に笑うサラジーヌは自慢の蔦鞭を大きく膨らませると威嚇してみせた。それは大木のように太く、長く、無数の棘を生やしている。

「ひ、ひぃ!化物が!」
腰を抜かして喚き散らす王子は最後のプライドを見せて「エメリアンがどうなっても良いのか!」と脅してきた。それを聞いた彼女は蔦を大蛇のように戸愚呂を巻くとクスリと笑う。

「な、何が可笑しい!私の意一つでエメリアンは命を狩られるのだぞ!わかっているのか!」
「ふう……良く吠えること、煩くて敵わないわ。ねぇエメリ?」
「え?」

すると戸愚呂が巻かれた箇所がゆっくりと開くとエメリが微笑みながら出てきて「あぁ、外は素晴らしいな」と言った。サラジーヌはとうの昔に彼の行方を探り、地下牢に閉じ込められていた所を救っていたのだ。

「な、な……なんで!どうしてお前がそこにいる!」
「わからないの?おバカさん。土さえあれば私はどこにでも根を張って状況を把握できるのよ」
彼女はそう言うと愛しそうにエメリに柔らかな蔦で擦り寄った。

「ふふ、擽ったいよサラ、とても嬉しいけれどね」
「愛しているわエメリ、こんな私は怖い?」
「いいや、益々惚れたね。ボクの恋人はパーフェクト過ぎる」








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