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静かな怒り
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「やっと裏が取れたぞ。デマの噂を流したのがシャルルであると証言する者を捕まえた!」
ルフィント卿は”やったやった”と子踊りする勢いでアデライドの執務室に雪崩れ込む。彼女はにっこりと微笑み「ちょっとばかり騒ぎ過ぎです」と諌言する。
腸が煮えくり返るほどでは無くとも、飼い犬に噛まれた気分だった彼女は意趣返しが出来そうだと安堵したのだ。
「まぁ、あの方が本気で懺悔するとは思えませんけど、今後の牽制になれば幸いですわ」
「それだな、で。どうするのだ?裏切者をこのまま伴侶としておくのか?」
ルフィント卿は至極当然なことをいう、アデライドは普段は柔和であるが背信行為をしたものには容赦がない。彼女は再び温厚な顔を父に向けてこう言った。
「ふふ、私は懐に入った者には慈愛を持って迎えますが、そうでない者には遠慮しませんの。苛烈に相手をするまで、オホホホホホ……」
「ほ、ほお……」
やはり娘の目が笑っていないとルフィント卿は背筋を凍らせる、我が娘ながら恐ろしいと思うのだ。
その頃、ルフィント家でやらかしたばかりのオレール夫人は、情け容赦なく鞭で打たれて高熱を出し寝入っていた。打たれた背を仰向けにして魘されている、帰ってくるなり「御向けに寝かせて」と泣き喚きながら懇願したものだ。
そのまま鎮痛剤を飲み苦悶の表情で「あの女には気を付けろ」とブツブツ寝言を言った。
一切の事情を説明しないでそのような状態になった夫人を訝しむオレール家の面々は、一体何があったやらと首を捻るばかりだ。
オレール卿は言う。
「たしかアレはルフィントの家に茶会しに行ったと思うが、だからどうだと言う話よ。まぁ、茶菓子も持たず乱入したようだがいつも通りだからな」
卿はボテ腹を揺らしてたっぷりの生クリームを乗せたカスタードケーキをムシャムシャやっていた。シャルルはその様子を「オエップ」とえづいてからしばし長考する。
「うーん、わからないよ父上。ルフィントの連中を怒らせるような事はしてないとボクは思うなぁ」
相変わらず呑気に構えているシャルルだ、妻の逆鱗に触れて最も怒りをかっていると言うのに、どうしてこうも軽い頭なのか。
「まぁ、何れにせよ妻が回復しないことにはなぁ?」
「はい、そうですよね~。ねぇメリエ~?ふふ、今日も美しいな」
「はぁい♪私はいつでも努力しているのですぅ、見てこの括れをうふふふ~」
まるで蟻のようなその括れを見せびらかし、大きなでっぱりを見せつけるメリエであった。
そんな時、オレール家の執事が二通の封書を銀盆に乗せてやってきた。仰々しく赤い蝋封が押されている。シャルルは片眉を上げてそれを手に取ったが「大方社交のお誘いだろう」と深く見ようとはしなかった。
それが裁判所からの通知とも知らずに。
ルフィント卿は”やったやった”と子踊りする勢いでアデライドの執務室に雪崩れ込む。彼女はにっこりと微笑み「ちょっとばかり騒ぎ過ぎです」と諌言する。
腸が煮えくり返るほどでは無くとも、飼い犬に噛まれた気分だった彼女は意趣返しが出来そうだと安堵したのだ。
「まぁ、あの方が本気で懺悔するとは思えませんけど、今後の牽制になれば幸いですわ」
「それだな、で。どうするのだ?裏切者をこのまま伴侶としておくのか?」
ルフィント卿は至極当然なことをいう、アデライドは普段は柔和であるが背信行為をしたものには容赦がない。彼女は再び温厚な顔を父に向けてこう言った。
「ふふ、私は懐に入った者には慈愛を持って迎えますが、そうでない者には遠慮しませんの。苛烈に相手をするまで、オホホホホホ……」
「ほ、ほお……」
やはり娘の目が笑っていないとルフィント卿は背筋を凍らせる、我が娘ながら恐ろしいと思うのだ。
その頃、ルフィント家でやらかしたばかりのオレール夫人は、情け容赦なく鞭で打たれて高熱を出し寝入っていた。打たれた背を仰向けにして魘されている、帰ってくるなり「御向けに寝かせて」と泣き喚きながら懇願したものだ。
そのまま鎮痛剤を飲み苦悶の表情で「あの女には気を付けろ」とブツブツ寝言を言った。
一切の事情を説明しないでそのような状態になった夫人を訝しむオレール家の面々は、一体何があったやらと首を捻るばかりだ。
オレール卿は言う。
「たしかアレはルフィントの家に茶会しに行ったと思うが、だからどうだと言う話よ。まぁ、茶菓子も持たず乱入したようだがいつも通りだからな」
卿はボテ腹を揺らしてたっぷりの生クリームを乗せたカスタードケーキをムシャムシャやっていた。シャルルはその様子を「オエップ」とえづいてからしばし長考する。
「うーん、わからないよ父上。ルフィントの連中を怒らせるような事はしてないとボクは思うなぁ」
相変わらず呑気に構えているシャルルだ、妻の逆鱗に触れて最も怒りをかっていると言うのに、どうしてこうも軽い頭なのか。
「まぁ、何れにせよ妻が回復しないことにはなぁ?」
「はい、そうですよね~。ねぇメリエ~?ふふ、今日も美しいな」
「はぁい♪私はいつでも努力しているのですぅ、見てこの括れをうふふふ~」
まるで蟻のようなその括れを見せびらかし、大きなでっぱりを見せつけるメリエであった。
そんな時、オレール家の執事が二通の封書を銀盆に乗せてやってきた。仰々しく赤い蝋封が押されている。シャルルは片眉を上げてそれを手に取ったが「大方社交のお誘いだろう」と深く見ようとはしなかった。
それが裁判所からの通知とも知らずに。
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