ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)

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新天地篇

攫われたドリュアス2

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汚い縄で縛られたのが不愉快極まりないが大人しく囚われてやった。
アジトはそれほど遠い場所ではなく、河川下流へ向かった先に横穴があってその奥を根城にしている。
「なるほど、ふんふん。川沿いの崖が畝ってたせいで岩陰になってたのか」

乱暴に牢に入れられて、ひとりボソボソと感想を述べていたら目が暗がりに慣れてきた。
よくよく観察してみれば牢には他に捕らえられていた人間に気が付く。

6人の女性が寝そべっていたり、岩壁に凭れている。
新入りのボクには興味なさそうだった。

おそらく盗賊達の癒し相手をさせられいるのだろう。そう思ったら苦い気持ちになった。
そのうち一人はボクと同じくらいの少女だった、ふと目があってしまい気まずい。

「なに見てんのよ!ふん、カシラに寵愛されてるのは私だけですからね!あんたなんか下っ端の相手よ!」
同じ牢屋の住人だというのになんだその余裕?

頭ってのはロリコンなのか?
牢屋の中にもヒエラルキーは出来上がるらしく、偉そうに喚いてた少女が牢名主のようだ。
幾重にも重ねられたムシロの上にデンと座って、一段高い所から他を見下している。
薄汚れたドレスを着ているが、元は豪華な作りだったと見える。どこかのお嬢様だったのだろう。

環境に慣れるというのは怖いな。
汚い牢内でそこが玉座のように見えてしまうんだろう。

彼女らは暇を持て余してるのかボクに小石や腐った何かを投げてくる。そして暴言を浴びせる。
「どこの田舎もんよ」「へんな髪色気持ち悪い」「あっちイケ!」など。
地味に腹が立つし、鬱陶しい。


牢の隅に身を寄せ、こっそり根を伸ばしてマホガニーへ通信した。
頭の中に彼の声が大きく響いた、怒ってるからガンガンと喧しくて仕方ない。
居場所はこれで知れただろう、後は適当に……。


ボクはスックと立ち上がり縄を切り牢を破壊して出た、女達がなにか騒いだがどうでもいい。
助けようとか、一緒に逃げようなんて言うわけない義理はないからね。
牢内でのボクへの対応がアレだもの同情心など湧くほうが可笑しい。

掌から荊鞭を伸ばして歩けば、すぐに手下たちが7人ほど駆け寄ってきた。
面倒なのでなにか騒ぐ前に鞭で首を刎ねてやった、盗賊は捕まれば即処刑なんだし問題ないでしょ。
人族の決めたルールだけどね。

「ドリアードに害成すものは排除、これがボクのルールだから」

細長いアジトを出口へ進めばアイツらの居間に出たようだ、酒盛りの跡らしきが残っていた。
「不健康だな、時間関係なく飲んだくれてんのか」

酔って寝腐っていた盗賊達を蔦でドスドスと突き殺した。これで15人目。
カシラってのはどこにいるんだろう?

ドカンドカンと洞穴内を暴れてやれば出てくるだろうと居室らしきを壊していく。
出口に向かって左手に曲がった通路奥から背の高い男がのそりとやってきた、これか?

盗賊らしからぬ相貌に一瞬驚いた、身なりは薄汚いが銀髪で顔の整った男だったのだ。
鈍い仕草で荒れた部屋を一瞥して大欠伸をしながら腹を搔いていた。

「馬鹿どもが酔って暴れたかぁ?……んでお前は新顔のオモチャか、ほう、珍しい毛色だがメンコイな」
下卑た笑顔をボクに向けた、気持ち悪い……悪寒が体を走る。

「先に味見されちまったか?こっちきな」
ボクを手招きするが寄る代わりに鞭を奮ってやる、男はなんなく避けた。さすが下っ端とは違うらしい。

「クヒヒいいねぇ、勝気な女は嫌いじゃねぇぞ」
「ボクは男だよ」
平面の胸を強調してやれば男は目を見開いた。

「チッ馬鹿野郎どもが、なるほど可愛い顔に俺も騙されたぜ。青白い顔と動きの悪そうなヒラヒラの服、貴族様かよ」
男が快刀を取り出し威嚇してきた。切っ先は迷わず心臓に向いている。
「ボクを刺すのは得策じゃないよ」
「へぇ、肝が据わってるね。殺す前に名前を聞こうか」

ニタニタと獲物を追い詰めた余裕顔が腹立つ、猫が子ネズミを嬲る前の嗜虐性が垣間見えた。
「名は教えないよ、腹立つかい?ボクを刺してみる?」
ボクは自身の腕に爪を立ててガリガリと掻いて見せた。

無色透明の液体がポタポタと滴り、傷は数秒で塞がった。
「な!?おまえ何者だ!」
「さぁ?ない頭で考えなよ盗賊のカシラ」

得体の知れない化物と認知した頭は大声で手下を呼ぶも誰もこない。きょどる男に尋ねてみた。
「ねぇ手下って全部で何人?」
「は?」

「ボクねさっき壊した人間は15体だったよ。ひょっとして全員だったのかな?ごめんね」
ヘラヘラと嗤うボクに顔色を悪くしていく男。


奥のほうからパタパタと軽い音がしてきた、さっきの少女達だった。
「か、カシラ!みんなが……男達が死んでる!どうなってんの!?」

閉じ込めておいたはずの女たちが、出てきていたのを激高した男は恫喝した。
「てめぇら!勝手に出て只で済むと思うなよ!」
「キャーッ!」

縋りついてきた少女に刃を突きつけ盾にした。
「わぁ小者丸出しだね、恥ずかしくないの?」
「うるせぇんだよ!コイツはナザルの姫さんだぞ、傷つけたらお前も同罪だぜ!」

ん、ナザルの姫……。
ナザルリーフの王女?

「キミらナザルリーフの王女を攫ったの?スゴイね、やるじゃないか」パチパチ☆
「へ、どうだ王族殺しに加担したらどうなるかわかっ・・」
「どーぞ?」

「は?なんだと、王女だぞ。ものを知らんのか?」
「だから、刺せばソレ。ボクは興味ないし、死んでも咎められるのは人間同士のルール内の事でしょ」

さきほど見たボクの異形の一部を思い出した男は青くなって狼狽えた。
「ちょっと、さっきから刺すだの殺すだのなんなの!?」

王女らしい少女が羽交い絞めされつつ暴れだした。
少女の白い首に一筋の血が流れた、暴れた弾みで傷つけたようだ。

「いやー!痛い!何すんのよ!お父様が黙ってないんだから!」
気丈にも食ってかかる王女に感心してしまう。意外と豪胆だね。

男がドンと王女の背を蹴って逃げ出した。
人質の価値がなくなったので逃走するようだ、見事なクズっぷり。殺さなかったのは覚悟も勇気もないんだろう。
「ひっどーい!バリーのバカ!人質になって身代金をせしめたら結婚するって約束したのに!」

は、この子なに言ってんの?

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