目を覚ました気弱な彼女は腹黒令嬢になり復讐する

音爽(ネソウ)

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「私とっても幸せよ」
彼女はそう微笑んで、彼の肩に凭れる。少しばかり擽ったいと天使は思う。


ジーンは安らかな死を選び、こうして天使の横にいる。
死人の彼女はずっと天界に留まれるわけではないが、それを選んだ。


僅かな期間だがジーンに後悔はなかった。

最初の願い通り、死を望んだ。
初めて愛した人の元を離れるくらいなら、魂を消して欲しいと彼女は泣いた。


そんなことは叶えられない、彼女は罪人ではないのだから。
なによりそれを由としなかったのは神だった。


「想像以上の美しい魂だ。だが娘、正しく生きた人間は転生せねばならない。天使と添い遂げることは出来ない。それでも死を選ぶなら来世は聖女として人々を救うために生きよ。」

「聖女として転生を?それが対価でしょうか?」
ジーンは神に問う。


神は目を閉じて肯定した。



僅か一月、ジーンは天界に留まることを許された。死者の魂が必要以上に留まることを許可されたのは異例中の異例。とても短い期間だが神なりの慈悲だった。

それでも彼女は「幸せだ」と微笑む。



「ところでねぇ、神様が羊の姿だとは知らなかったわ。白くてフワフワで可愛いわ」
「羊……君にはそう見えたのか」

天使はそう言って笑う。
見る者によって姿が変わるのだと天使は言う、ジーンは彼にはどう見えるのか尋ねたが教えて貰えなかった。



天界で過ごす日々は穏やかだった。
ここには悪意を持つものは存在しない、ジーンは何度目かわからない「幸せだ」を呟いた。


逆さ虹が出たと聞いては見物に行ったり、下界を見下ろせる穴を覗きに行ったりジーンたちは楽しんだ。

時々、天寿を全うした魂がフヨフヨとやって来てお迎え天使達が飛び回るソレを追いかけて回収している。
もちろん、ジーンの天使も同様に仕事していた。


魂たちはジーンとは違って人の形をしていない、霞のようだったり、ゴムボールのようだったり個性的だ。
魂になった彼らに自我はない、真っ新な心にもどっているからだ。


「そうか、赤ちゃんが純粋無垢なのはそういう理由があったのね」
「うん、ジーンは本当に特別に優遇されているんだ。感謝しなければいけないよ」

天使が真面目な顔でそう言った。

「ええ、ここを去ったら人々の役に立てる聖女として頑張るわ、それが唯一の恩返しだもの」




それからあっという間に時は過ぎて、転生する日がやって来た。
「ねぇ、ジーン。俺の事忘れないで」
「え、でも……そんなこと可能なの?」


困り顔のジーンに天使は少し考えた。
「逆さ虹に誓う、俺はジーンを
「私も虹に誓うわ、あなたをずっと忘れない。忘れても絶対思い出すから!」


二人は抱き合って、初めて口づけを躱した。

”忘れないでジーン”


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