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運命のアルファを探す俺
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「亮、まだ残っていたんだな」
部活が終わり、俺は教室で1人座っている亮に声をかけた。
「…泰昌、部活終わったんだ」
「先ほどな。教室に忘れ物を取りに来たら、亮が居るのを見つけた」
本当は忘れ物なんてなかった。
部活が終わり、帰ろうとして外から校舎を見上げたら、いつものように亮のクラスに明かりがついていた。
その明かりを見ながら、俺は今日の放課後、たまたま部活に向かう途中、急いで帰って行く蓮を見かけたのを思い出した。
もしかしたら亮が1人で教室に残っているのではないかと思い、1人ここへやって来たのだ。
俺は教室に入り亮に近づく。
亮は1人勉強をしていたようで、机の上にはノートや参考書が広がっていた。
「亮、もう帰るだろ? 一緒に帰らないか?」
すると亮はほんの一瞬、少し困ったような顔をしたが、すぐに何でもないように机の上を片付け始めた。
「そうだな…帰ろうか」
亮がこんな反応をするだろうという事は分かっていた。
けれど、俺は何も気付いていないように微笑み、久しぶりに亮と一緒に帰る事にした。
この前の文化祭で、蓮は俺に、亮に気があるのかと言ってきた。
今までそんな事を言われた事も、考えた事もなかったので、正直すごく驚いた。
俺がずっと亮を意識していたのは間違いない。
でもあの時蓮に言われて、こんなにも亮の事が気になっていたのは、俺が亮を好きだったからなのかと思った。
けれどそれと同時に、俺はすでに、亮に振られていることにも気づいていてしまっていた。
亮と一緒に帰りながら、俺は亮に話しかける。
「今日は蓮と一緒じゃなかったんだな?」
「あぁ・・・泰昌、蓮は運命のアルファを見つけたようだ。
まだ名前も知らないし会話もした事ないのに、今日の放課後そのアルファの高校へ直接会いに行った」
「え? 高校へ会いに行った? そう言えば運命のアルファに出会ったと言っていたけれど・・・直接会いに?・・・蓮って凄いな」
「うん、凄いな。そして面白いよな。自分の気持ちに正直で、迷いなく行動出来るって」
そう言いながら亮が優しく笑っている。
俺はそんな亮を見て、俺が亮を意識するようになったきっかけを思い出した。
そう、亮はこういう顔をする時がある。
そして俺は、亮にこんな顔をさせる事が出来ないのだ。
中学の時から、俺は亮と一緒に過ごす機会はあったけれど、ずっと当たり障りのないような関係だった。
別に仲が悪いわけでもなく、特別良いわけでもない。近くにいたから何となくずっと一緒にいたような感じだ。
きっと亮と高校が違えば、連絡を取り合っていたかも分からない。
けれど俺はずっと亮の事が気になっていた。
亮は俺と一緒にいる時、優しいけれど、どこか寂しそうな顔をする時があった。
それは俺が原因でない事は確かだった。
亮がそんな表情をするのが不思議で、気づけば俺は、亮の表情をよく見るようになっていたのだ。
その表情に気付いていたのは俺だけだと思う。亮自身も気付いていない。
俺は亮と共に最寄り駅に着くと、亮に向き合った。
「亮、実は今日、早く家に帰らないといけないの忘れてた。悪いけど、先に帰るな」
少し驚いた様子の亮に言い、返事も待たずに俺は駆け出した。
俺はいつも亮がこの駅で、この時間に帰ろうとしているのを知っている。
タイミングが良ければ、ある人物と会えるからだ。
亮はその人物に会いたくて、時間を合わせるように学校に残っている。
何故かある時から、蓮も一緒に残るようになっていたようだが。
そして亮が会おうとしている人物が、中学の頃から亮に特別な表情をさせているのだ。
高校では、蓮と楽しそうに笑っている表情をしている。
けれど俺は亮に、どちらの表情もさせる事が出来ない。
今まで俺に関わってきた人は、みんな俺に色んな表情を見せてくれていた。
けれども亮は違う。俺に対して見せない表情があるのだ。
俺はその表情に惹かれていたのかもしれない。
俺は亮が見えなくなった所で、走るのをやめて歩き始めた。
「だって亮、俺に蓮を紹介するんだもんな」
歩きながら小さく呟く俺。
好きな人から別の人を紹介されているのだ。亮が俺の気持ちに気付いていない事は分かっている。
気持ちを伝えていないのに、はっきりと振られている様なものだ。
そして俺は亮の好きな人も知っている。
どう考えたって、亮と俺がどうにかなるとは思えない。
当たって砕けるつもりも無いし、そもそも当たる気もない。
今まで何の悩みも無く、ただ毎日を過ごし、どこか自分を客観的に見ながら生きていた。
けれども今、ようやく他人を好きだと思えるようになった。でもその気持ちも、このまま何事もなく消えていくのだろう。
自分が人を好きになれた事だけでも驚いていたんだ。振られている事への悲しさも追いついていない。
そう・・・驚くと言えば・・・亮から聞いた、蓮の行動力にも驚いたな。
明日、蓮が運命のアルファと出会えたのか、そのアルファとどうなったのか聞いてみたい。
俺は必死な様子の蓮と、蓮を見て笑う亮を思い出しながら、家へと帰って行った。
部活が終わり、俺は教室で1人座っている亮に声をかけた。
「…泰昌、部活終わったんだ」
「先ほどな。教室に忘れ物を取りに来たら、亮が居るのを見つけた」
本当は忘れ物なんてなかった。
部活が終わり、帰ろうとして外から校舎を見上げたら、いつものように亮のクラスに明かりがついていた。
その明かりを見ながら、俺は今日の放課後、たまたま部活に向かう途中、急いで帰って行く蓮を見かけたのを思い出した。
もしかしたら亮が1人で教室に残っているのではないかと思い、1人ここへやって来たのだ。
俺は教室に入り亮に近づく。
亮は1人勉強をしていたようで、机の上にはノートや参考書が広がっていた。
「亮、もう帰るだろ? 一緒に帰らないか?」
すると亮はほんの一瞬、少し困ったような顔をしたが、すぐに何でもないように机の上を片付け始めた。
「そうだな…帰ろうか」
亮がこんな反応をするだろうという事は分かっていた。
けれど、俺は何も気付いていないように微笑み、久しぶりに亮と一緒に帰る事にした。
この前の文化祭で、蓮は俺に、亮に気があるのかと言ってきた。
今までそんな事を言われた事も、考えた事もなかったので、正直すごく驚いた。
俺がずっと亮を意識していたのは間違いない。
でもあの時蓮に言われて、こんなにも亮の事が気になっていたのは、俺が亮を好きだったからなのかと思った。
けれどそれと同時に、俺はすでに、亮に振られていることにも気づいていてしまっていた。
亮と一緒に帰りながら、俺は亮に話しかける。
「今日は蓮と一緒じゃなかったんだな?」
「あぁ・・・泰昌、蓮は運命のアルファを見つけたようだ。
まだ名前も知らないし会話もした事ないのに、今日の放課後そのアルファの高校へ直接会いに行った」
「え? 高校へ会いに行った? そう言えば運命のアルファに出会ったと言っていたけれど・・・直接会いに?・・・蓮って凄いな」
「うん、凄いな。そして面白いよな。自分の気持ちに正直で、迷いなく行動出来るって」
そう言いながら亮が優しく笑っている。
俺はそんな亮を見て、俺が亮を意識するようになったきっかけを思い出した。
そう、亮はこういう顔をする時がある。
そして俺は、亮にこんな顔をさせる事が出来ないのだ。
中学の時から、俺は亮と一緒に過ごす機会はあったけれど、ずっと当たり障りのないような関係だった。
別に仲が悪いわけでもなく、特別良いわけでもない。近くにいたから何となくずっと一緒にいたような感じだ。
きっと亮と高校が違えば、連絡を取り合っていたかも分からない。
けれど俺はずっと亮の事が気になっていた。
亮は俺と一緒にいる時、優しいけれど、どこか寂しそうな顔をする時があった。
それは俺が原因でない事は確かだった。
亮がそんな表情をするのが不思議で、気づけば俺は、亮の表情をよく見るようになっていたのだ。
その表情に気付いていたのは俺だけだと思う。亮自身も気付いていない。
俺は亮と共に最寄り駅に着くと、亮に向き合った。
「亮、実は今日、早く家に帰らないといけないの忘れてた。悪いけど、先に帰るな」
少し驚いた様子の亮に言い、返事も待たずに俺は駆け出した。
俺はいつも亮がこの駅で、この時間に帰ろうとしているのを知っている。
タイミングが良ければ、ある人物と会えるからだ。
亮はその人物に会いたくて、時間を合わせるように学校に残っている。
何故かある時から、蓮も一緒に残るようになっていたようだが。
そして亮が会おうとしている人物が、中学の頃から亮に特別な表情をさせているのだ。
高校では、蓮と楽しそうに笑っている表情をしている。
けれど俺は亮に、どちらの表情もさせる事が出来ない。
今まで俺に関わってきた人は、みんな俺に色んな表情を見せてくれていた。
けれども亮は違う。俺に対して見せない表情があるのだ。
俺はその表情に惹かれていたのかもしれない。
俺は亮が見えなくなった所で、走るのをやめて歩き始めた。
「だって亮、俺に蓮を紹介するんだもんな」
歩きながら小さく呟く俺。
好きな人から別の人を紹介されているのだ。亮が俺の気持ちに気付いていない事は分かっている。
気持ちを伝えていないのに、はっきりと振られている様なものだ。
そして俺は亮の好きな人も知っている。
どう考えたって、亮と俺がどうにかなるとは思えない。
当たって砕けるつもりも無いし、そもそも当たる気もない。
今まで何の悩みも無く、ただ毎日を過ごし、どこか自分を客観的に見ながら生きていた。
けれども今、ようやく他人を好きだと思えるようになった。でもその気持ちも、このまま何事もなく消えていくのだろう。
自分が人を好きになれた事だけでも驚いていたんだ。振られている事への悲しさも追いついていない。
そう・・・驚くと言えば・・・亮から聞いた、蓮の行動力にも驚いたな。
明日、蓮が運命のアルファと出会えたのか、そのアルファとどうなったのか聞いてみたい。
俺は必死な様子の蓮と、蓮を見て笑う亮を思い出しながら、家へと帰って行った。
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