転生したら、HEROになれるはず

緋咲 ツバメ

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育成

借り

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そんなこんなんで屋敷を出た瞬間、リョーは大きなため息をついた。
すると、虎丸はそんな姿に可哀想な眼差し向けていた。
「虎丸、いつの間に居なくなってたんだよ。大変だったんだぞ。」
虎丸はしれっとした表情で。
「いゃ、屋敷の中から何とも言えない嫌な気配がしてたから……。」
だが、そういう虎丸の目は泳いでいた。
その瞬間、思い出した事がある。
「分体からか?フランの傍にも居なかったな……そう言えば。」
虎丸は慌てながら。
「違うんだよ。ちゃんと主に言おうとしたんだよ。でも、フランが言うなって……ほら、あっちの立場が……。」
そんな虎丸の姿を見て、これ以上責める訳にもいかず、ただポンポンと肩を叩いた。
少し力が入ってしまったかもしれないが、それもご愛嬌だろう。
そんな二人が門の出口へ歩いていくと、一人の男がダルそうに欠伸をしていた。
男は二人に気付くと。
「今、屋敷から出てきたよね?中の話、長引きそう?」
「もうすぐ終わるんじゃないかな。」
男は礼を言うと、ダルそうに伸びをしながら辺りに意識を向けた。
多分、誰かの護衛なんだろうなって思いながら、二人は離れていった。
しばらく歩いた後、虎丸は独り言の様に。
「あの人、強いよね。何で……あんな風に演じてるのかな?」
演じてるかどうかは分からないが、実力自体があるのは身体と目の動きなどから伝わってきていた。

だが、あそこに居たと言う事はあの屋敷に居た誰かの関係者であろう。
自ら進んで、関わろうと思う訳がなかった。
とりあえず食事を済ませると、リョーは大人しく床についた。
荒々しくノックする音でリョーは目を覚ました。
寝起きで目を擦りながら、ドアを開くとそこにはゲイガが立っていた。
その表情は何とも言えないモノであった。
「こんな朝から……何があったの?」
ゲイガは無言で一枚の紙を差し出してきた。
その紙に書かれてた内容は近衛騎士団への推薦希望者の募集であった。
随分、仕事が早いなって思いながら、何か問題があるのかなって思い、ゲイガを見ると。
ゲイガは応募条件を指さし、少なすぎると。
家柄も問わず、自分の実力と資質に自信があり、国の為に命を捧げれる者と一文だけであった。
リョーにとっては何の問題があるのか分からなかったが……こんな緩い募集はないらしい。
勿論、既にギルドを通して募集されてるので取り消す訳にもいかない。
ゲイガが来た理由としては他の家から苦情があったらしい。
リョーにとっては何故、苦情が出るのか理解出来ないが、わざわざこんな浅早くから来るという事はギルドとして、困ってるのは事実なんだろう。
リョーは仕方なしにゲイガから紙を取り、一文を付け足した。
それをゲイガは見ながら、更に顔を引き攣らせた。
リョーが書いた一文は“武器は真剣等を使用します。怪我は当然、命を落とす覚悟がない方はご遠慮ください。”であった。
流石に近衛騎士団への推薦であっても、そこまで覚悟する者は少ないし、まして推薦を勝ち取っても怪我などすれば本選考に間に合わなくなる可能性が高かった。
ゲイガはその紙を受け取り、それで一旦引き下がるしかなかった。
一旦、受け付けてしまった時点で本来、文句言うなどお門違いであった。
しかし、滅多にないイグランド家の案件で受付どころか、ギルド内が異様な空気に包まれた。
それにより、何故か数分と言う短い時間で承認されてしまった。
また間の悪い事にゲイガ、ミューゼの両名がギルドに居なかったらしい。
んー、都合が良すぎるよな。
絶対に何かしたな、あの爺さん(フラン)。

相手にせずに追い返されても文句さえ言えない立場であるゲイガの話をちゃんと聞き、少しでも付け足してくれた。
だが、ギルドに戻る道でゲイガは何度もその紙を見ながら……自問自答を繰り返していた。
“これで良かったのか。自分は余計な事をしたのではないか。”と。
リョーが本気なのは間違いないし、この一文は大袈裟じゃないのも感じていた。
良くて、怪我人多発。悪ければ、正しく死者が出てしまうんだろうなって。
ギルドにとって、最近は頻繁に闘技場を借りてくれる上得意さまになっていた。
ゲイガとミューゼも色々なグランの鍛錬風景を見た事はあったが、リョーのグランは異質であった。
精鋭を鍛えるかの如き、鍛錬風景で二人して苦笑いしながら、顔を見合わせたのを思い出していた。
ゲイガは気付くと、ギルドのドアの前まで戻ってきていた。
ゲイガはギルドの中に入ると、自分の椅子に倒れ込む様に座り、大きな溜息をついた。
そして、近くにいた職員にさっき、受け取ってきた紙を手渡し、掲示する様に指示した。
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