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第五章 花火コンテニュー
三十四話 爆発スマイル
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再び森に入り、しばらく歩いたのだが、四人は見つからない。葛城からは『肝試し』と聞いただけで、幽霊とか、そういうのが出るとは聞いていない。でも、さっきの出来事から推測するに、この森には何かいるに違いない。
「梛ちゃん、僕達、どれくらい歩いた?」
「今度はちゃーんと計っています。えぇと……三分二十秒ですね」
時間を計っていることには驚きだが、まだ三分か。
「梛ちゃんならこの森に隠れろと言われたらどこに隠れる?」
「隠れたくないです……暗いし迷いそうじゃないですか」
「一本道でどう迷うんだ?」
僕は梛ちゃんの顔を懐中電灯で照らすと、梛ちゃんは不思議そうな顔で僕を見てきた。
「眩しいのでどけてください。……えぇと、私なら一本道じゃなくて、道のない森の奥へ隠れますね」
「道をそれるということか。だから迷いそうだと言ったのか」
だとしたら、この森のことを熟知している人物が犯人である可能性はある。もしくは、この一本道の奥にいるのかもしれない。
「とりあえず、このどこまであるかわからない道を進むぞ」
「もう戻ったりしませんから安心してくださいね」
「ならいいんだけどね」
歩いて七分経っただろうか。僕の足に硬いものが当たった気がした。
懐中電灯で照らしてみると、それは、『アタック9』だった。
「どうしてこれがここに?」
「廻さんの落し物ですか?以外とおっちょこちょいですねー」
これはあの時ハルに返した物だ。もしかしたら、本当に何か幽霊のようなものが現れた四人を襲ったのかもしれない。
その時のハルの落し物のような気がした。僕はアタック9をポケットに入れた。
「梛ちゃん、急ごう」
「私走れませんよ。廻さんこそ走れますか?」
「……じゃあ、早歩きで」
そんな話をしている時だった。
僕らの通ってきた道の方から大きな物音がした。
「廻さん……振り向いていいですか?」
梛ちゃんは振り向いていないが、僕は既に振り向いていた。
「やめておけ」
僕が見たもの、それは、異常なまでに長い髪、白い服を着た四つん這い女の人だった。
「廻さん、前前前前前前前前」
僕も前を見ると、先ほどの女の人と同じ容姿の人が立っていた。
「挟み撃ちかっ」
僕は脱出路を切り開くために、前の方の女の人から片付けることにした。
「どけっ!」
勢いよく殴打しようとしたが、豪快にころんでしまった。
「いってて……ってあれ」
起き上がると、そこには僕しかいなかった。
女の人も、梛ちゃんも消えていた。
僕は無我夢中で前へ前へ走った。これは、連れていかれたと考えたほうがいい。
痛みなんか知らない。
ーーー美しき拉致ーーー
「梛!」
僕は一本道を走りきった末に、少し開けた場所に来た。そこは、河川敷が一望できる高台のような場所だ。
「廻君、よくここまで来たね。いや、来てもらわないと困るけど」
この声は葛城だ。
「お前ら無事か?」
僕は懐中電灯で辺りを見回しながら葛城を探す。
すると、葛城が笑っているのが聞こえた。
「前にも言った通り、看板に書かれていることには従ってもらうよ……ドッキリ大成功!」
葛城と、ハル、紫重ちゃんも巡も、梛ちゃんは巡に手を引かれて、皆僕に姿を現した。
「廻さん、怖かったですー」
「おい、お前の仕業か?」
「そのとーり。廻君が見たものは全て私達の仕組んだドッキリでございまーす」
葛城が堂々と話す中で、紫重ちゃんは申し訳無さそうにしている。
「音希田君、実は、私だけこの籤を引いた後にこのことを聞かされたんだ。騙してゴメンね」
それに引き換え、ハルは満足げである。
「楽しかったですか、廻さん!」
どうやらドッキリのことを聞かされていないのは僕と梛ちゃんだけだったようだ。
「皆、並んで」
葛城がそう合図すると、梛ちゃんを中心にして、一列に葛城、ハル、紫重ちゃん、巡、と並んでお辞儀した。
「すいませんでしたー!」
こんなことをされると許さずにはいられない。
「わかった……だから顔を上げろよ」
皆、顔が笑っている。まぁ、楽しかった?かもしれない。
「でも、梛ちゃんを巻き込んだのはよくないな」
「──ほら廻君、花火花火!」
聞いていない。
花火大会が始まった。
ここから見る花火はうるさけど、とても明るくて、綺麗だ。
爆発音が体を震わせる。皆の顔色が花火が爆発する事に変わる。
「葛城、なんか……ありがとう」
「ねえねえ、私も音希田君じゃなくて廻君って言ってるからさ……」
「何だよ」
「廻君もさ、名前で呼んでよ」
別に照れるわけではないけれど、すぐに葛城の名前を言うことができなかった。
「廻君、問題。私の名前は、葛城れ……」
「お前の名前は 麗乃 だ。忘れたりしない」
「よし、よく出来ました」
麗乃はやけに嬉しいそうだった。
僕が麗乃から離れ、一人で花火を見ていると、梛ちゃんが僕の隣に来た。
「綺麗ですね」
「うるさいけど、本当に綺麗だ」
「そう、ですね……あの、廻さんって……」
「何?」
それ以上梛ちゃんは何も聞いてくれなかった。
「何でもないです。今日は怖かったけど、楽しかったですよ!」
梛ちゃんの笑顔は、花火よりも見たかった。
「梛ちゃん、僕達、どれくらい歩いた?」
「今度はちゃーんと計っています。えぇと……三分二十秒ですね」
時間を計っていることには驚きだが、まだ三分か。
「梛ちゃんならこの森に隠れろと言われたらどこに隠れる?」
「隠れたくないです……暗いし迷いそうじゃないですか」
「一本道でどう迷うんだ?」
僕は梛ちゃんの顔を懐中電灯で照らすと、梛ちゃんは不思議そうな顔で僕を見てきた。
「眩しいのでどけてください。……えぇと、私なら一本道じゃなくて、道のない森の奥へ隠れますね」
「道をそれるということか。だから迷いそうだと言ったのか」
だとしたら、この森のことを熟知している人物が犯人である可能性はある。もしくは、この一本道の奥にいるのかもしれない。
「とりあえず、このどこまであるかわからない道を進むぞ」
「もう戻ったりしませんから安心してくださいね」
「ならいいんだけどね」
歩いて七分経っただろうか。僕の足に硬いものが当たった気がした。
懐中電灯で照らしてみると、それは、『アタック9』だった。
「どうしてこれがここに?」
「廻さんの落し物ですか?以外とおっちょこちょいですねー」
これはあの時ハルに返した物だ。もしかしたら、本当に何か幽霊のようなものが現れた四人を襲ったのかもしれない。
その時のハルの落し物のような気がした。僕はアタック9をポケットに入れた。
「梛ちゃん、急ごう」
「私走れませんよ。廻さんこそ走れますか?」
「……じゃあ、早歩きで」
そんな話をしている時だった。
僕らの通ってきた道の方から大きな物音がした。
「廻さん……振り向いていいですか?」
梛ちゃんは振り向いていないが、僕は既に振り向いていた。
「やめておけ」
僕が見たもの、それは、異常なまでに長い髪、白い服を着た四つん這い女の人だった。
「廻さん、前前前前前前前前」
僕も前を見ると、先ほどの女の人と同じ容姿の人が立っていた。
「挟み撃ちかっ」
僕は脱出路を切り開くために、前の方の女の人から片付けることにした。
「どけっ!」
勢いよく殴打しようとしたが、豪快にころんでしまった。
「いってて……ってあれ」
起き上がると、そこには僕しかいなかった。
女の人も、梛ちゃんも消えていた。
僕は無我夢中で前へ前へ走った。これは、連れていかれたと考えたほうがいい。
痛みなんか知らない。
ーーー美しき拉致ーーー
「梛!」
僕は一本道を走りきった末に、少し開けた場所に来た。そこは、河川敷が一望できる高台のような場所だ。
「廻君、よくここまで来たね。いや、来てもらわないと困るけど」
この声は葛城だ。
「お前ら無事か?」
僕は懐中電灯で辺りを見回しながら葛城を探す。
すると、葛城が笑っているのが聞こえた。
「前にも言った通り、看板に書かれていることには従ってもらうよ……ドッキリ大成功!」
葛城と、ハル、紫重ちゃんも巡も、梛ちゃんは巡に手を引かれて、皆僕に姿を現した。
「廻さん、怖かったですー」
「おい、お前の仕業か?」
「そのとーり。廻君が見たものは全て私達の仕組んだドッキリでございまーす」
葛城が堂々と話す中で、紫重ちゃんは申し訳無さそうにしている。
「音希田君、実は、私だけこの籤を引いた後にこのことを聞かされたんだ。騙してゴメンね」
それに引き換え、ハルは満足げである。
「楽しかったですか、廻さん!」
どうやらドッキリのことを聞かされていないのは僕と梛ちゃんだけだったようだ。
「皆、並んで」
葛城がそう合図すると、梛ちゃんを中心にして、一列に葛城、ハル、紫重ちゃん、巡、と並んでお辞儀した。
「すいませんでしたー!」
こんなことをされると許さずにはいられない。
「わかった……だから顔を上げろよ」
皆、顔が笑っている。まぁ、楽しかった?かもしれない。
「でも、梛ちゃんを巻き込んだのはよくないな」
「──ほら廻君、花火花火!」
聞いていない。
花火大会が始まった。
ここから見る花火はうるさけど、とても明るくて、綺麗だ。
爆発音が体を震わせる。皆の顔色が花火が爆発する事に変わる。
「葛城、なんか……ありがとう」
「ねえねえ、私も音希田君じゃなくて廻君って言ってるからさ……」
「何だよ」
「廻君もさ、名前で呼んでよ」
別に照れるわけではないけれど、すぐに葛城の名前を言うことができなかった。
「廻君、問題。私の名前は、葛城れ……」
「お前の名前は 麗乃 だ。忘れたりしない」
「よし、よく出来ました」
麗乃はやけに嬉しいそうだった。
僕が麗乃から離れ、一人で花火を見ていると、梛ちゃんが僕の隣に来た。
「綺麗ですね」
「うるさいけど、本当に綺麗だ」
「そう、ですね……あの、廻さんって……」
「何?」
それ以上梛ちゃんは何も聞いてくれなかった。
「何でもないです。今日は怖かったけど、楽しかったですよ!」
梛ちゃんの笑顔は、花火よりも見たかった。
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