憑拠ユウレイ

音音てすぃ

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第五章 花火コンテニュー

三十五.七話 誕生ハッピー (番外)

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「なぁ麗乃、記事かけた?」
「完成したよ。廻君こそ、休み明けテスト大丈夫なの?」
「……いや、それどころじゃあないんだ」
僕と麗乃は遅刻ギリギリのところで偶然、校門前で出会った。今日は八月二十日。だが、この物語は十五日から始まる。

ーーーハルーーー
八月十五日 昼。僕達いつもの三人は、先生の目を盗んで部室で活動していた。
「じゃあ僕ちょっとトイレに行ってきます」
「はーい」
ハルは僕にこう言うと、部室を出ていった。先生達にバレないといいんだけど。
「ねぇ廻君」
小さい声で麗乃が話しかけてきた。
「なんだよ」
「今日ね、ハル君の誕生日なんだよ」
「へぇそうなんだ……えぇとここは……」
「もぉ冷たいなー。そうだ、時間あるし、二人で誕生日プレゼント用意しようよ」
ここ二日間はぶっ通しで記事を書いているため、麗乃の笑顔をこうして見るのは久しぶりだ。
「プレゼントといっても、何がいいかな」
「廻君、何がいいと思う?」
「ケーキ……かな」
「ケーキか……お家でも食べそうだから、別のにしない?」
「僕に質問するのもいいけど、麗乃は何かないの?」
「……んー、じゃあねぇ……お花でもプレゼントしようよ。ハル君って意外と花好きなんだよ」
「いいね、いいね!」
麗乃もたまにはいいこと言うな。いや、仲間の誕生日を知らない僕はもっと酷い……かな?
「じゃあ、いつ買いに行く?」
「今でしょ」
「ギャグじゃないよね?」
「マジマジ、本気よ」
いや、今お金は持っているけど、今じゃなくてもいいんじゃない?でも、麗乃の顔は本気だ。
「じゃあ……どっちが買いに行く?」
「二人でしょ」
「イヤイヤ、それはハルに怪しまれるでしょ」
僕はてっきり、片方が行くのだとばかり……
「じゃ、行こ」
「ハルに伝えなくていいの?」
「大丈夫、目標は三時前ね」
意外と時間ありますね、麗乃さん。

そして、とりあえず、という言い方は適当なのかはわからないけど、お花を購入した。いい香りがする。

「いやぁ、ヒマワリ綺麗だなー」
「夏といえばヒマワリだもんな」
これはハルのやつ、喜ぶな。

ーーーサプライズーーー
「後、三秒だよ」
「え!短くない!」
僕と麗乃はサプライズのタイミングを決めていた。そしてあっという間に三秒経過した。
「ハ、ハル!お誕生日おめでとう!」
「おめでとう!」
僕はハルの目の前にお花の束を差し出した。
「え、廻君覚えていてくれたんですか?」
「あぁもちろん!(一回も聞いたことないけど)」
「僕……今年で一番嬉しいです!」

僕は、今日一人の仲間を幸せにした。

ーーー梛ちゃんーーー
そしてお話は二十日に戻る。僕達は休み明けテストを終えて、部室に集まった。
「重要な話がある。よく聞いてほしい」
「なになに?」
今日はハルは新作のメンテだと言って帰ってしまった。
「今日はな、梛ちゃんのなんだ!」
「……なんですとぉ!」
麗乃さん、驚き方面白すぎ。

「で、だ。プレゼントを考えていないんだよ」
「はぁ、廻君が言わなければ知らないで済んだのになぁ……」
麗乃は額に手を当てて項垂れた。
「そんなこと言わないで!なぁ、一緒に考えてくれよ」
「わかんないよ……あ、いや、ある」
「どっちよ」
麗乃は大きく空を指指した。

「天体観測よ。この前姉さんから天体望遠鏡貰ったんだ」
「お前の姉さん凄いな」
なんとあっさり決まってしまったので、巡に梛ちゃんを連れてくるように今日の夜伝えたので、多分大丈夫だろう。

ーーー天体観測ーーー
「麗乃、準備できた?」
ここはあの花火大会の時に来た高台。星が良く見える。
「……私もあんまり触ったことないんだよね」
麗乃は身の丈より大きな天体望遠鏡をいじりながら喋る。
「まじかよ……それにしても、巡と梛ちゃん、おっそいなぁ……」
現在時刻は二十二時時を過ぎている。僕と麗乃は梛ちゃんの家の事情を気遣い、パーティが終わってからでいいよと伝えている。さらに巡もそのパーティに参加しているから安心だ。

「廻さーん、麗乃さーん遅れました!」

ようやく主役とサブの登場だ。
「お、来たね。それじゃあまずは……お誕生日おめでとう!」
「梛ちゃん、おめでとう!」
暗くても梛ちゃんの喜んでいる様子はわかる。
「ありがとうございます、廻さんに祝っていただけるなんて……」
「そうだ兄ちゃん、私達が遅れた理由はな、パーティが遅れただけじゃないんだよ」
「巡ちゃん言わないでー!(服を選んでいたなんて言わないでー!)」
声からして、巡は楽しんでいて、梛ちゃんは焦っているのがわかる。

「それじゃあ、始めっか、天体観測」
「やっぱり廻さんはロマンチストですね!」
「え、そう?(提案者は麗乃だけど)」


今日は素敵な日になった。
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