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第六章 秋空メモリー
四十話 蒼炎ラフ
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秋ちゃんの話によると、札を貼ったのは本校舎だけで、旧校舎には貼っていないらしい。僕達は、目の札をさっさと回収して、秋ちゃんの感覚を頼りに札を探すことになった。
「私が貼った札は、目、鼻、耳、足、腕、胸、頭です」
「じゃあ残り六つか」
「次は鼻にしようよ。秋ちゃん、どこに貼ったの?」
「えぇとー、調理室に貼りました」
マズイな。僕ら部外者は調理室には入れない。
「とりあえず行ってみよう。お願いしたら聞いてくれるってかもしれないよ」
麗乃の言う通りだ。とりあえずでも行ってみるべきだ。
ーーー役に立つーーー
「あのぉ、少しだけでいいんです、入っていいですか?」
麗乃のお願いを調理室の人々は聞いてくれないようだ。
「だめだめ、お客さんの召し上がる料理は衛生的でないと」
確かにあの部室に入ってからだと、僕でも調理室には入れてあげないね。
すると、だいぶ見なかった顔が登場した。
「麗乃さん、廻君、そして美人さんまで、調理室になんの用事です?」
話しかけてきたのはハルである。エプロンを着ているところから察するに、何か作っていたのだろう。
「少し、少しだけでいいから調理室に入りたいんだ」
「麗乃のお願いなら……と言いたいですが、ここの担当の先生、とっても怖いんですよ」
「なら、頼み事されてよ」
僕らはハルに“鼻”と書かれている札を取ってくるよう頼んだ。すると、既に剥がしていたらしく、ハルからすぐに受け取ることができた。
「何に使うんですか?」
「ナイショ!」
ハルは少し残念な表情だった。
そして、耳は吹奏楽部室、足は二階廊下、腕はメイド喫茶、胸は美術室にあった。最後の頭は体育館の天井に貼ってあったが、どうしても届かない。靴を投げたりと試みたが、無駄だった。しかし、しばらくすると、剥がれて落ちてきた。何故なのかは、よくわからないけど。
ーーー火葬ーーー
札を全て回収した僕達は、本来入ってはいけない本校舎の屋上に侵入し、札を燃やす準備を進めた。
「麗乃、札を燃やしたら煙が上がって先生達に気づかれてしまうんじゃないか?」
「大丈夫、見てなよ」
屋上は手入れもされていなく、コケや雑草すらも生えている。掃除すれば綺麗なのになぁ。
僕が屋上を観察している間に、女性二人は準備が完了したみたいだ。
「それじゃあ秋ちゃん、魂の札を渡してくれるかな?」
「はい……」
秋ちゃんは、ためらいながらも麗乃に札を渡した。
麗乃は全ての札をひとまとまりにして、マッチで火をつけた。
「それでは皆さん、合掌をお願いします」
僕と秋ちゃんは麗乃の指示に従って手と手のしわを合わせた。
そして、札は青い炎を上げながら燃え始めた。
「麗乃、これって……」
「これは愛さんの、魂の色っていうんだよ。廻君と秋ちゃんは初めて見るのかな?」
「音希田さん、こんな不思議なことってあるんですね。私は逃避でこんなことをしてきましたが、これで、やっと愛は成仏できそうです」
秋ちゃんは、なんだか優しい顔をしていた。
「秋ちゃん、この炎に触ってみなよ」
麗乃が奇想天外なことを言うので秋ちゃんは驚いてしまった。
「え、でもっ」
「大丈夫、熱くなんてないから」
麗乃が秋ちゃんを炎の前まで背中を押して誘導すると、ゆっくり炎に手をかざした。すると、秋ちゃんはいきなり泣き出した。
「ごめんね、勝手に体を使ったりして……もう一度会いたかっただけだったの。でも、許してほしい」
すると、炎は一瞬何倍にも大きくなったと思ったら、灰も残らずに消えてしまった。
「じゃあ……戻ろうか!」
「……はい!」
秋ちゃんは笑顔になってくれた。こりゃ女優になれるぜ。
そんな帰り際だった。
「ありがとう……」
僕の耳に、確かに聞こえた。振り返っても誰もいないし、ここにいるのは三人だけ。でも、しばらくして、あれは愛さんだと僕は考えた。
さぁ、文化祭をまた楽しむか!
「私が貼った札は、目、鼻、耳、足、腕、胸、頭です」
「じゃあ残り六つか」
「次は鼻にしようよ。秋ちゃん、どこに貼ったの?」
「えぇとー、調理室に貼りました」
マズイな。僕ら部外者は調理室には入れない。
「とりあえず行ってみよう。お願いしたら聞いてくれるってかもしれないよ」
麗乃の言う通りだ。とりあえずでも行ってみるべきだ。
ーーー役に立つーーー
「あのぉ、少しだけでいいんです、入っていいですか?」
麗乃のお願いを調理室の人々は聞いてくれないようだ。
「だめだめ、お客さんの召し上がる料理は衛生的でないと」
確かにあの部室に入ってからだと、僕でも調理室には入れてあげないね。
すると、だいぶ見なかった顔が登場した。
「麗乃さん、廻君、そして美人さんまで、調理室になんの用事です?」
話しかけてきたのはハルである。エプロンを着ているところから察するに、何か作っていたのだろう。
「少し、少しだけでいいから調理室に入りたいんだ」
「麗乃のお願いなら……と言いたいですが、ここの担当の先生、とっても怖いんですよ」
「なら、頼み事されてよ」
僕らはハルに“鼻”と書かれている札を取ってくるよう頼んだ。すると、既に剥がしていたらしく、ハルからすぐに受け取ることができた。
「何に使うんですか?」
「ナイショ!」
ハルは少し残念な表情だった。
そして、耳は吹奏楽部室、足は二階廊下、腕はメイド喫茶、胸は美術室にあった。最後の頭は体育館の天井に貼ってあったが、どうしても届かない。靴を投げたりと試みたが、無駄だった。しかし、しばらくすると、剥がれて落ちてきた。何故なのかは、よくわからないけど。
ーーー火葬ーーー
札を全て回収した僕達は、本来入ってはいけない本校舎の屋上に侵入し、札を燃やす準備を進めた。
「麗乃、札を燃やしたら煙が上がって先生達に気づかれてしまうんじゃないか?」
「大丈夫、見てなよ」
屋上は手入れもされていなく、コケや雑草すらも生えている。掃除すれば綺麗なのになぁ。
僕が屋上を観察している間に、女性二人は準備が完了したみたいだ。
「それじゃあ秋ちゃん、魂の札を渡してくれるかな?」
「はい……」
秋ちゃんは、ためらいながらも麗乃に札を渡した。
麗乃は全ての札をひとまとまりにして、マッチで火をつけた。
「それでは皆さん、合掌をお願いします」
僕と秋ちゃんは麗乃の指示に従って手と手のしわを合わせた。
そして、札は青い炎を上げながら燃え始めた。
「麗乃、これって……」
「これは愛さんの、魂の色っていうんだよ。廻君と秋ちゃんは初めて見るのかな?」
「音希田さん、こんな不思議なことってあるんですね。私は逃避でこんなことをしてきましたが、これで、やっと愛は成仏できそうです」
秋ちゃんは、なんだか優しい顔をしていた。
「秋ちゃん、この炎に触ってみなよ」
麗乃が奇想天外なことを言うので秋ちゃんは驚いてしまった。
「え、でもっ」
「大丈夫、熱くなんてないから」
麗乃が秋ちゃんを炎の前まで背中を押して誘導すると、ゆっくり炎に手をかざした。すると、秋ちゃんはいきなり泣き出した。
「ごめんね、勝手に体を使ったりして……もう一度会いたかっただけだったの。でも、許してほしい」
すると、炎は一瞬何倍にも大きくなったと思ったら、灰も残らずに消えてしまった。
「じゃあ……戻ろうか!」
「……はい!」
秋ちゃんは笑顔になってくれた。こりゃ女優になれるぜ。
そんな帰り際だった。
「ありがとう……」
僕の耳に、確かに聞こえた。振り返っても誰もいないし、ここにいるのは三人だけ。でも、しばらくして、あれは愛さんだと僕は考えた。
さぁ、文化祭をまた楽しむか!
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