電色チョコレートヘッド

音音てすぃ

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新しい四月

2話 ゴッドヘッド

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後日、授業終わりの部活動見学。
案の定、やってきたのは神田 櫻、彼女一人だけだった。
昨日見たぼさぼさの髪はきちんとくしで整えてあり、「あれ?麗乃の兄弟?」と言いたくなる程の容姿だった。

「こんにちわ、神田 櫻と申します。わぁ広い部室ですね」

そう、新聞部の部室は長い掃除戦の末、嘗ての広さを取り戻したのであった。

「お、きたきた!櫻さんね!よく来たね!待ってたよ。話は廻君から少し聞いているよ。さあさあ座って」

葛城がさっそく食らいついた。

葛城かつらぎ 麗乃れの
我らが新聞部の部長である。
茶色がかったセミロングの髪の毛、たれ目と思ったがつり目、身長160くらいの元気女子と僕は思っている。
全てはコイツから始まった。

「入部してくれるんだよね?」
神田は中央の机に用意されている椅子に座り、葛城と向い合せになった。
「はい、そのつもりで入学しましたから」

へぇ、そこまで言い張ってしまうか、と少し関心した。

「ありがとー!あのね、だーれも入部届出してくれないの、嫌になるよ」
「そ、そうなんですねハハハ……」

葛城の愚痴に神田は困ってしまった。

「ハルくーん、自己紹介してよー!」

葛城がそう叫ぶと、奥の機械だらけの空間から、眼鏡をかけた青年?が登場した。

「私が影山 春人です!親しみを込めてハルと呼んでくださいね」

中央の机の椅子、葛城の隣に座り、自己紹介をした。

影山かげやま 春人はるひと
特徴は特にないメガネ野郎。
アタックαの製作者である。
いつも機械類をいじっていて、部室にいないことも多い。
また、部室の一部が機械だらけになっているのはハルのせい。


「はい、ハルさんですねよろしくお願いします」

ハルはメガネをキラッと輝かせている。

「廻君、自己紹介!」
葛城は僕に促すが、僕はそれを拒否する。

「別にいらないだろ。昨日会ったわけだし」
と辛い返事をしながら、そこら辺にある机に向かってポスターを描いている。

「廻君いつまで書いてるの?期限とっくに過ぎてるじゃん」
「はぁ?期日一日前に押し付けてきたのは誰だよ!」

葛城は目をそらして苦笑いをしている。

『ポスター』そう、これは部活動紹介ポスターである。美術部にはかなわない。
それなりに僕も頑張って絵を描いたんだ(モデルは葛城)。
ポスターの張り出されている掲示板に一つ空きがあるから、完成次第、貼り付けに行くつもりだ。

「あ、そうそう櫻ちゃん頭の具合はどう?まだ痛い?」
「えぇ、大分よくなりましたよ」

大丈夫なわけない、だってアタックαには金属板が貼り付けられていて、絶対痛いはずだ。
「あのさ……神田、悪かった」
「ほんとだよ廻君、馬鹿じゃないの、女の子殴るなんて」
「まぁまぁ麗乃さん、廻さんは善意でやったんですから。ね?」

憤怒している葛城をハルがなだめていた。
「だーかーらー、神田がヤバい状況だったから、ああするしかなかったの!分かれよ麗乃!」

激突寸前の二人に神田が割って入った。
「やめてください!私あのままだともっとヒドイことになってたと思うので音希田さんには感謝してるんです」

「櫻ちゃん、そういうけどさ、ほら」
葛城は神田の頭をツンツンとつついている。
「痛いです……」

「というわけで……」と、葛城は言うと、アタックαをポケットから取り出した。
そしてそれを円運動で振り回しながら言った。

「廻君、これは没収ね」
葛城はいたずらっぽくニコニコしている。

「お、おい!それは僕のメインウェポンだぞ!なんで麗乃が持ってるんだ!?」
「盗みました~」
「か、返しやがれ!」
「一か月はダメ」

僕は椅子から立ち上がり、麗乃に取り返そうと組み付こうとするが、華麗に避けられた。
「うっぜー!」

「反省時間ですよ廻君」

しょうがない、ここは受け入れていくしかない。
とぼとぼとポスター制作中の机に戻ることにした。

「ああ、それなんですか?」
神田がアタックαに興味を持った。

「私が説明しましょう!」
ハルであった。こんな時にしか出番がないからはしゃいでいるようだ。

「手に装備するタイプの武器ですね。今まで十回のバージョンアップをしてきましたが、アタックαが最高傑作ですね。ああそう、特徴ですよね。貼り付けられた金属板からは私が特別にチューンアップした電磁波が放出されるように出来ていまして、そう、霊的な存在にダメージを与えられるはず?の武器なのです!それと必殺技がありま……」
「まぁそういうことだから、危ない手袋なんだよ」

ハルの台詞を途中で遮って麗乃がまとめてしまった。

「なるほど、それのおかげで私は助かったんですね……」

「どういうことですか櫻さん?」
説明が終わったハルは問いかける。

「それ、貸してください!」
神田は葛城からアタックαを奪い取ると部室から飛び出していった。

「あれ、とられちゃった……」
「僕からは余裕で逃げたくせにな」

「へへへ、やっちゃったー」
「顔が真っ赤だぞー」


新任務、神田 櫻を追え!!
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