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第一章
9.彼の瞳の奥の私
しおりを挟む「今日二階堂くんが受け取った手紙だけど……」
「うん」
「ごめん。あれは私が書いた手紙じゃないの」
「えっ……。どういう事?」
「私にもよくわからないの。二階堂くんが差し出す瞬間まで私は手紙の存在すら知らなかった。しかも、どうして自分が差出人になっていたかさえ……」
「誰かが早川に偽って手紙を出したって事?」
「うん……」
「一体、何の目的で……」
「……だから、二階堂くんとは付き合えない。ごめんなさい」
差出人不明の手紙に左右されてる私たち。
もし誰かが私と偽って書いた手紙が彼の元に届けられなければ、この時間すら存在しない。
彼は被害者なのに一方的な気持ちを押し付けなきゃいけなくなった自分が腹立たしくなって席を立って離れようとした。
ーーところが。
「待って」
彼の右手は私の左手を引き止める。
困惑したまま振り返ると、彼は真剣な眼差しで目線を釘付けさせた。
「さっきも言った通り、俺は早川と付き合いたい。その気持ちは変わらないよ」
彼からの意外な返事に度肝を抜かれた。
正直に話した時点で先ほどの件がリセットされると思っていたから。
「どうして……」
「実は、バイト先が早川と同じショピングセンター内で、バイト中に何度も見かけてたんだ」
「そうだったんだ。……全然気づかなかった」
丸い目を向けていると、彼は先程まで座っていた席に指を向けたので、私は再び同じ席に座った。
「俺、携帯ショップの向かいのレストランでバイトしてて、いつも従業員に叱られている不器用なカエルが気になってたんだ。そしたら、偶然にもそのカエルの着ぐるみを着ているのが早川だって知ってね。迷子を放っておけないくらい優しくてさ。なんか、いいなって思ってた矢先に手紙が届いたんだ」
「……私の事を知っててくれたんだね」
「じゃないと『付き合いたい』なんて言わないよ」
「でも、私なんて地味で友達もいないし、おしゃれには疎いし、二階堂くんの彼女じゃ釣り合わないし……」
二階堂くんのような王子様にはお姫様のようなかわいい子がお似合いだ。
それに、私は性格が明るい訳じゃないし、コミュニケーション力がある訳でもない。
つまり、容姿から性格から何から何まで自信がないから釣り合うはずがない。
結菜が暗い顔で俯いていると……。
「それ、誰を基準にして言ってるの? 他の人? それとも俺?」
「それは…………」
「早川は自己評価が低いだけ。俺はいいところをいっぱい知ってる。……だから、どんな事を言われても引き下がらないよ」
「二階堂くん……」
「もし、少しでも俺が気になってくれていたら、友達以上恋人未満っていう関係はどうかな」
「えっ……」
少女漫画のような展開に浮かれていた。
あの手紙が彼に届かなければ、卒業まで無縁な人。
二階堂くんに好意を寄せている杏には申し訳ないけど、彼の言葉が本当に嬉しかった。
彼の目の奥には素の私が映っていてくれたから。
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