オレ様黒王子のフクザツな恋愛事情 〜80億分の1のキセキ〜

伊咲 汐恩

文字の大きさ
12 / 115
第二章

11.不思議な面接

しおりを挟む



  ーー翌日の午後。
  制服姿のまま母親から面接の場として言い渡された、駅から徒歩2分の有名コーヒーチェーン店に向かった。
  店内に入って顔を左右させながら見回すと、中央席に座ってる叔母が気づいて手を振った。



「おぉ~い、結菜ちゃ~ん!  こっちこっち~!」

「あっ、由美叔母さん!」



  彼女の隣に目を向けると、スーツ姿の30代くらいの男性がスクッと立ち上がって一礼した。
  彼は前髪を立ち上げた短髪で銀色のフレームのメガネを着用していて、紺色のスーツ姿でいかにもビジネスマン風。
  少しお固めな雰囲気に身が引き締まる。

  私は彼の向かいの席の前に立って一礼をした。



「お待たせしました。早川 結菜と申します」

「初めまして。風波エンターテイメントの堤下と申します」



  両手で差し出された名刺を両手で受け取って名前を確認した。

  あれ……、風波エンターテイメント?
  ここって大手芸能事務所じゃない?
  家政婦と子守りと言われたから、てっきり裕福な家庭に入るかと思ってた。

  しかも、アルバイトの面接と言ったら事務所で書類を書いてシフトの話をするのが主流だけど、こうやってお固く名詞を受け取るのは初めて。



「どうぞおかけ下さい」

「あ、はい……」



  恐縮気味に返事をすると、叔母はテーブルに手をかけて立ち上がった。
  重々しいお腹を見た途端、出産間近だとより感じさせる。



「じゃあ、私はそろそろ行くね。面接頑張ってね」

「叔母さん、色々とありがとう。出産頑張ってね」

「仁科さん、ありがとうございました」


「堤下さん、結菜ちゃんをよろしくお願いします」

「かしこまりました。では、また後日ご連絡致します」



  叔母はニコリと微笑み、私に軽く手を振って出口へと向かって行った。
  2人きりになると、彼はひざに置いたカバンの中から二枚の書類を出してテーブルに置き、ブレザーの胸ポケットに挿しているペンを横に置いて本題に入る。



「仁科さんからこの仕事は秘密厳守という話を聞いてますか?」

「母親を通してですが……」


「そうですか。実は、私はある方の芸能マネージャーを行っております。そこで、今回早川さんには彼の家政婦をして頂きたいのです」

「内容は簡単に聞いてます」


「じゃあ話が早い。では、早速こちらの履歴書と誓約書を書いてください」



  彼はそう言うと、手元の書類をスッと前に差し出した。
  二枚重ねられている書類を見て驚いた。
  履歴書を書く理由はわかるけど、誓約書を書く理由がわからない。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。

甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。 平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは── 学園一の美少女・黒瀬葵。 なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。 冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。 最初はただの勘違いだったはずの関係。 けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。 ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、 焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】好きって言ってないのに、なぜか学園中にバレてる件。

東野あさひ
恋愛
「好きって言ってないのに、なんでバレてるんだよ!?」 ──平凡な男子高校生・真嶋蒼汰の一言から、すべての誤解が始まった。 購買で「好きなパンは?」と聞かれ、「好きです!」と答えただけ。 それなのにStarChat(学園SNS)では“告白事件”として炎上、 いつの間にか“七瀬ひよりと両想い”扱いに!? 否定しても、弁解しても、誤解はどんどん拡散。 気づけば――“誤解”が、少しずつ“恋”に変わっていく。 ツンデレ男子×天然ヒロインが織りなす、SNS時代の爆笑すれ違いラブコメ! 最後は笑って、ちょっと泣ける。 #誤解が本当の恋になる瞬間、あなたもきっとトレンド入り。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

元暗殺者の俺だけが、クラスの地味系美少女が地下アイドルなことを知っている

甘酢ニノ
恋愛
クラス一の美少女・強羅ひまりには、誰にも言えない秘密がある。 実は“売れない地下アイドル”として活動しているのだ。 偶然その正体を知ってしまったのは、無愛想で怖がられがちな同級生・兎山類。 けれど彼は、泣いていたひまりをそっと励ましたことも忘れていて……。 不器用な彼女の願いを胸に、類はひまりの“支え役”になっていく。 真面目で不器用なアイドルと、寡黙だけど優しい少年が紡ぐ、 少し切なくて甘い青春ラブコメ。

処理中です...