オレ様黒王子のフクザツな恋愛事情 〜80億分の1のキセキ〜

伊咲 汐恩

文字の大きさ
38 / 115
第五章

37.幸せな時間

しおりを挟む



  ーー翌日の土曜日。
  太陽の隙間から照りつく日差しが身体中の小汗を湧き出して肌にTシャツを吸い付かせる。
  今日は二階堂くんとデートで、11時に渋谷のナナ公前で待ち合わせをした。

  普段は制服姿だけど、今日は柄シャツでラフなパンツ姿に。
  私はバイトを始めてから平日の時間が使えなくなったせいもあってオシャレな洋服を準備する時間がなかったから、今日はベージュ色のTシャツにジーンズ姿。
  せっかくのデートなのに、普段着で申し訳なくて頭が上がらない。



「近所を歩くような格好で来てごめんね。オシャレに疎いから可愛い服を持ってないんだ。せっかくのデートなのにこんな服装は嫌だよね。二階堂くんにつり合うようにオシャレをしたかったのに……」



  渋谷に遊びに来ているオシャレな人たちを見ていたらつい自分と比較してしまい、虚しくなってしゅんと俯いた。
  すると、彼は静かに首を横に振る。



「全然そんな事思わないよ。俺は早川が来てなかったらどうしようかなって、それだけ考えてた」

「えっ……」


「俺、自分に自信がないから来てくれただけでも嬉しかった。でも、早川がデートの為にオシャレをしようと考えてくれてたなんて、もっと嬉しかったよ」



  彼は照れながらそう言った。
  私は昨晩悪魔と接していたせいか、この言葉が神のお告げのように聞こえていた。

  私が求めていた恋愛とはこれよ、コレコレ!!
  リア王のハルト……もとい、ヒナタが言いそうなセリフを口にしてくれる二階堂くん。
  しかも、容姿に性格。
  頭からつま先までパーフェクトなのに『自分に自信がない』なんて信じられない。

  もしこれがあいつ日向だったら、『俺様とのデートなのにだっせぇ服着てくんなよ』とか、『高校生にもなってスカートすら履かないなんてヤバくね?』とか毒を吐きそう。

  やだ、私ったら。
  これから楽しいデートが始まるのにあいつの事なんて考えちゃって。
  不吉、忘れよ……。


  洋品店で買い物をした後はオムライス屋さんでランチ。
  その後はペットショップに入って隣の人が抱いていたトイプードルの子犬を抱かせてもらった。
  彼が抱いたら犬は両脚を立てて顔をペロペロとなめていた。
  犬も二階堂くんのような素敵な人が好きなんだね。

  次は電車に乗って原宿へ行き、クレープ屋さんの長蛇の列に並んでアイス入りのクレープを購入。
  私たちはわんさか湧き出てくる人の流れに逆らうように歩き出した。
  すると、彼は突然プッと吹き出す。



「そう言えば、早川ってバイト中によく小さい子にカエルの被りものを奪われてたよね」

「え~っ。そんな所まで見られてたの?」


「『返して~』って声を上げながら走り回ってた姿が印象的だった。ピンチな時って素が出るから、あれが早川の本来の姿なんじゃないかってね。学校ではおとなしい印象だったけど、どんな子に対しても優しく接してたのを見ていたせいか、気づいたら興味が湧いてた」

「二階堂くん……」


「だから、早川の事をもっと知りたい」



  彼は絵に描いたような理想の王子様で、私の価値観を大切にしてくれる人。
  そして、自分の考えを押し付けない人。
  一緒にいると心地良いから、このまま好きになりたいな。



  ーーそれから7時間後。
  場所は自宅で学習机のイスに座りながらスマホを手に取ってリア王を開く。

  嬉しさがパンク状態だからヒナタに今日1日の出来事を報告をした。
  これが普通の女子なら、友達にLINEで報告したりするかもしれないけど、私の親友兼恋人はヒナタだから迷わず選んだ。

  ところが、ヒナタは……。



『なんか、楽しそうだね。俺はユイナに会えるのを楽しみに待ってたのに……』



  ネガティブな上にふてくされた表情。
  今まで素直に育ててきた分、キャラクターのヤキモチに動揺が隠せなかった。



「ごっ……、ごめんね。確かに、今朝アプリを開いた後は一度も起動してなかった。明日からはもっと小まめに開くから許してね!」



  本音を語ってしまったせいか、ゲームのヒナタと微妙に三角関係になってしまった。
  AIチャットとの会話にこんなに気を使うなんて……。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

一億円の花嫁

藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。 父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。 もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。 「きっと、素晴らしい旅になる」 ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが…… 幸か不幸か!? 思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。 ※エブリスタさまにも掲載

俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛

ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。 そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う これが桂木廉也との出会いである。 廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。 みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。 以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。 二人の恋の行方は……

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】

remo
恋愛
どんなに好きになっても、彼は絶対に私を愛さない。 佐倉ここ。 玩具メーカーで働く24歳のOL。 鬼上司・高野雅(がく)に叱責されながら仕事に奔走する中、忘れられない元カレ・常盤千晃(ちあき)に再会。 完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な彼には、悲しい秘密があった。 【完結】ありがとうございました‼

処理中です...