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第五章
42.気持ちの波
しおりを挟むーー授業の合間の休み時間。
人がまばらに歩いてる廊下で結菜とみちるが教室へ入って行くと、廊下でそれを見ていたクラスの男子2人が反応して小声で噂話を始めた。
「早川ってさ、かわいいし、何かいいよね~」
ちょうどその時、教室から出てきたばかりの杏は2人の噂話に気づくと、足をスローペースにさせて聞き耳を立てた。
「えっ、お前も早川派?」
「……マジ? お前も?」
「あぁ。先日前の席の人からプリントを受け取った時に指を切っちゃってさ。早川がそれにいち早く気づいて、斜め前の席から『大丈夫?』と言って絆創膏を差し出してくれたんだよね。俺ら喋った事もないのにさ」
「優しいなぁ~。俺なんて、髪を切った翌日に輪島から「髪型だっせぇ~」とイジられてたら、たまたま隣に早川がいて「私は似合ってると思うよ」ってフォローしてくれたんだよね。新しい髪型にチャレンジしたから不安だったのに」
「あの優しさとかわいさは天使だよな。しかも、よく笑うし。髪を切るまでは魅力に気づかなかったけど」
「わかるわかる。控えめな性格もいいよな~」
失恋の傷が想像以上にえぐれている杏は、こんな小さな噂話さえ憎くなり、手のひらに爪を食い込ませながら離れて行くと、日向とすれ違った。
日向も杏と同じく雑談が耳に入っていて、廊下の中央に立っている男子2人の前で足を止めて言った。
「そこ、邪魔。2人で道を立ち塞がないでくんない?」
「あっ、ごめん」
「……(あいつが可愛くなった途端、手のひら返しかよ。どいつもこいつもあいつの表面的な所しか見てなかったんだな)」
2人が恐縮気味に廊下の窓側と教室側に寄って道を開けると、日向はスッと教室へ入って行った。
しかし、話の続きが気になって扉のすぐ左の掲示板を眺めていると、中断されていた噂話が再び始まった。
ところが、話の続きは結菜の話題ではなく……。
「阿久津ってネクラのくせに性格悪いよな」
「だから友達いないんだよ。早川は優しいから話しかけてあげてるみたいだけど……」
なんと自分の悪口だった。
しかも、結菜からお情けで喋りかけられてるような感じで話が進められている。
日向は拳をプルプルと震わせながらじっと耳を澄ます。
「風貌からして絶対アニオタだな。見るからに私服姿ダサそうだし」
あいつ……。
俺の本性を知らないからって言い気になりやがって。
しかも俺は、私服がおしゃれな俳優ランキング3位だ。
変な髪型のお前の100倍以上はおしゃれに拘ってるのに。
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