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第八章
75.親友だから……
しおりを挟むーー翌日。
学校に到着したばかりの結菜は、日向の事を考えながら下駄箱の扉を開けようとすると、突然後から日向に声をかけられた。
「昨日はごめん。俺が言い過ぎたわ……」
振り返ると、日向は申し訳なさそうな目を向けている。
私は首を小さく横に振った。
「ううん。私の方こそ盗み聞きをしてごめんなさい。聞かれたくない話だったのにね」
「少し屋上で話せる?」
「うん、いいよ」
それから私たちは教室にも寄らずに荷物を持ったまま屋上へ向かった。
明日は台風上陸の恐れがあるせいか、どんよりとした曇り空にしっとりとした強風が襲いかかってくる。
階段裏の壁面に荷物を置くと、2人で柵の前に立って後方から吹いてくる風で服をはためかせながら校庭を眺めた。
「ミカには親が死んだ事を言わないで欲しい。頃合いを見て伝えるつもりだから」
「わかった。ミカちゃんは両親が亡くなった事を知らなかったんね。だから、あんなに甘えて……」
「両親の命日はミカの4歳の誕生日だったんだ」
「えっ」
「あの日は俺が予約していたケーキを取りに行くつもりだった。ミカに喜んでもらおうと思ってキャラケーキを作ってくれる店で注文してたから。でも、あの時は足を骨折してた上に台風が接近してたから両親に頼んだ。そしたら行きに落雷事故に遭ってしまって……」
「そんな……」
「俺があの時ケーキを取りに行ってれば、今でも親は生きてたのに。甘えたい盛りのミカから両親を奪ったのは、この俺。まだ幼いのに不憫な想いばかりさせてしまってる。だから、俺がミカの責任をとるのが当然だし、誰に何を言われようとも手放したくない」
彼は感情的にそう言うと、身体を小刻みに震わせながら手で顔を覆った。
私は彼の胸中を聞いた途端、胸がキュッと苦しくなる。
彼の家でミカちゃんと対面した日は、どんなに声をかけてもテレビから目を離さずに心を閉ざしていた。
黒塗りにされていた人間の絵。
それに、目を離した隙に家を飛び出した事もあった。
更に記憶を遡|《さかのぼ》ると、私がショッピングセンターで着ぐるみバイトをしてた時に、ミカちゃんはピアノ教室から脱走してお兄ちゃんの名前を叫んでた上に、両親の事を訊ねたら何も答えてくれなかった。
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