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第十一章
99.ひとつに繋がった身体
しおりを挟む「ミカァァァ! ミカァァァ!! お兄ちゃんの声が聞こえたら返事してくれ! ミカァァァ!!」
身体に力を振り絞って叫んでも、声が雨音にかき消されていく。
傘に降り込んできた雨が、黄色い半袖シャツに染み込んで肌に吸い付いていく。
真っ暗闇の中、雨のカーテンに包まれている公園や幼稚園。
スマホの地図アプリで近所を検索しながら住宅街の中へ入った。
ミカの捜索は内密に行っているので、コンビニやスーパーやホームセンターや病院や公民館など人目に触れる場所には堤下さんと林さんに頼んだ。
ゴロゴロゴロゴロ…… ドオオオォォォン……
「うぐうああぁっぁ……。はぁっ……はぁっ……はぁっ……」
日向は落雷する度に傘をさしたまま両手で耳を押さえて肩を縮こませる。
襲いかかるトラウマに、どんなに探し回っても見つからないミカ。
そして、2時間経っても吉報が届かないスマートフォン。
しきりに襲いかかる不安と恐怖は、やがて弱気な自分を作り出していく……。
日向はズボンのポケットからスマホを出して電話帳をタップした。
ダメだとわかっているけど。
絶対に電話をかけちゃいけない相手だと言われているけど……。
俺はもうこの時点で限界を迎えていた。
プルルルル…… プルルル…… プルッ……
「もしもし、俺だけど」
『うっ、嘘っ! 日向……』
日向の電話先は結菜。
学校を退学したあの日からお互い連絡は取らなかったので、この電話が約1ヶ月半ぶりの繋がりになった。
「うん……。急に電話してごめん。お前しか頼る人がいなくて」
『どうしたの? スピーカーから雨音がするけど、いま外にいるの? 雷が鳴ってるのに平気なの?』
結菜は部屋の窓の外を眺めながら、日向がトラウマに苦しめられてないか心配していたところだった。
スピーカー越しの声に異変を感じると、心配な気持ちが充満していく。
「平気……じゃない。助けて…………」
『えっ! 何かあったの?』
「ミカがまた行方不明に……。家政婦が目を離した隙にまた脱走したみたいで。堤下さん達と手分けをして何時間も探し回ってるのに、行く当てさえわからなくて」
日向は震えている手でスマホを持ったまま涙を溢した。
声を忍ばせて泣いているが、結菜には息遣いで泣いてる事に気づく。
お互いもう二度と近づいてはいけないとわかっているが、一度走り出した気持ちは止まらない。
『私も一緒に探しに行く。いま何処にいるの?』
「ありがとう。いま麹西駅付近」
『……それって隣駅じゃない。もしかして、自宅から歩いて探し周ってたの?』
「ミカが何処にいるか検討がつかなくて。堤下さんと林さんは駅近辺を探してくれてる」
『わかった! 今からそっちに向かうから待っててね。20分くらいで到着するから』
結菜は学生鞄から財布と定期入れをショルダーバッグに入れ替えて、母にひと声かけてから家を飛び出した。
ミカちゃん、こんな大雨の中何処へ行っちゃったのかな。
何か嫌な事でもあったの?
時間はもう22時を過ぎてるのに……。
それに、日向の声も震えてた。
両親の落雷事故から雷がトラウマになってるのに、それに耐えながらミカちゃんを探してるなんて……。
結菜は到着したばかりの上り電車に飛び込んで2駅先の麹西駅に向かった。
電車を降りてから人の合間をすり抜けて、階段を駆け降りた後に交通ICカードを改札にタップして、日向と連絡を取りながら出口に向かう。
麹西駅から徒歩10分の公園に到着すると、傘をさしている人物を発見。
その人は金髪で見覚えのある黄色いシャツを着ていて、遠目からでも日向だとわかる。
降りしきる雨に阻まれながらお互いの姿が視界をとらえた瞬間、まるでスタートを切ったかのようにお互いの方へ駆け寄って行く。
日向は目の前で足を止めると、持っていた傘を落として力強く結菜を抱きしめた。
結菜はその反動でポロッと傘を落としてしまい、一つに繋がったばかりの身体は雨のシャワーに包まれていく。
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