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第十一章
102.小さな彼女の大きな悩み
しおりを挟む「うあぁぁあぁっん……。結菜お姉ちゃああん……。ずっとどこへ行ってたのぉぉ……」
「ミカちゃん……」
「ミカはずっと会いたかったのにぃぃ……。また一緒に公園で遊ぶって約束したのにぃぃ……。結菜お姉ちゃんにいっぱい話したい事があったのに何処へ行ってたの……。ひっく……うぐっ……」
「全然会いに行かなくてごめんね……。お姉ちゃんもミカちゃんに会いたかったよ。今日こうやって久しぶりに会えて、本当に……本当に嬉しかったよ」
声を詰まらせながら号泣してるミカに、左目からポロリと涙を流す結菜。
日向は2人の劇的な再会を目の当たりにすると、胸がチクっと痛んだ。
「ミカのパパとママは天国に行っちゃったんだって。お空で幸せに暮らしてるんだって。さっき叔母さんから聞いたの。だから、もう二度と会えないんだって。お兄ちゃんからは、パパとママの仕事が忙しいから遠い所に行っちゃったって聞いてのに……」
雨で冷やされてる小さな身体に、限界を迎えてる気持ち。
彼女は現実を知らされたようで、行き場のない気持ちを押し潰していた。
日向はミカの心の悩みに追いつくと、2人の目の前に立つ。
「ミカ……、お父さんとお母さんの話を秘密にしててごめん」
「お兄ちゃん! どうしてミカにパパとママが死んだ事を内緒にしてたの? ミカはいつか帰ってきてくれると思ってたんだよ。お兄ちゃんなんて嘘つきだから大嫌い!」
「ミカがもう少し大きくなってから言おうと思ってた。去年の誕生日に急用が出来て帰って来れなくなっちゃったって嘘をついてごめん。お兄ちゃんはただ、ミカを傷つけたくなかったんだ」
「そんなの酷いよ……。うあぁぁああ……ん。うあぁぁあああん……」
5歳の少女に両親が亡くなった現実を受け止めろという方が難しいだろう。
でも、それはいつか伝えなきゃいけない。
そのいつかがいまこの瞬間だなんて皮肉な話だ。
まだまだ甘えたい時期なのに、両親に甘えられないままこの1年を過ごしていたのだから。
彼女の苦しみや悲しみを全身で受け止めていたら、いつしか自分も一緒になって泣いていた。
一方、3人の一部始終を一眼レフのカメラに収めていた黒いキャップを被った男は撮影を終えると、付近に待機させていた軽自動車に乗り込んで現場から去って行った。
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