妄想女子はレベル‪✕‬‪✕‬!? ~学校一のイケメンと秘密の同居をすることになりました♡~

伊咲 汐恩

文字の大きさ
8 / 23

8.降谷くんの苦手なもの

しおりを挟む


 汗だくのまま帰宅してからキッチンで一杯の麦茶を飲んでいると、母からLINEメッセージが入った。
 すかさずタップして開くと、そこには……。

『夕飯は冷蔵庫に用意してあるから涼くんと二人で食べてね』

 と書かれている。
 私はまさかの吉報にフフフと笑い、肩を震わせた。
 降谷くんと家に二人っきりということは……、ほぼ同棲生活。
 食事時は若い新婚夫婦のように「あーん。……ねぇ、料理は美味しい?」なんて聞いちゃったりして。
 そしたら彼が「お前が食わせてくれたものは何でも世界一美味しいよ」とか言っちゃってぇぇ!! 「お前も腹減ってるだろ? 俺が食わせてやるから口開けて待ってな」なんて言われちゃったらどうしよぉ~~っっ!!

「ふっ、ふふふふ…。お母さん、ないっすぅ~!!」

 激しい妄想に襲われて我慢できずにプルプルと身震いする。

 
 ーーしかし、それから20分後に降谷くんが帰宅。
 玄関へ出向き、早速母が帰らないことを伝えると……。

「じゃあ、飯要らないわ」

 まさかの返答が下だされる。
 
「えっ。だって、ご飯食べなかったらお腹空いちゃうよ?」
「別にいい。お前一人で食ってて」
「そ、そんなぁ~~っ」

 そのせいで、幸せな新婚夫婦像が跡形もなく崩れていった。
 更に追い打ちをかけるように部屋の扉が閉まっていく。

「うわっ……、あっ……うっ……」
 パタン……。

 せ……、せっかく二人きりでいられると思ったのにぃぃ!
 降谷くんは朝ご飯は早い時間に一人で食べて知らない間に家を出ていっちゃうし、夕飯は母と三人で食べるから自由に話ができないし。
 しかも、学校では気軽に話しかけないで欲しいみたいだし。
 ここで話さなかったらどこでお話すればいいのよーーっ!!

 私は拳を握りしめながら彼の部屋の前で立ちつくしていると、扉の奥から「うぉぉぉおおお!」といった悲鳴が聞こえてきた。
 すかさず部屋の扉を開けると、降谷くんは嫌そうな顔に手を当てたまま右壁方面を向いている。

「えっ、なにっ、どうしたの?」
「ゴキブリが……」
「どこにっ?」
「窓んとこ」

 言われるがままに目線を窓の方に向けると、彼が言う通りカーテンの真横には黒い物体が。
 それは紛れもなくゴキブリだった。
 
「あ、本当だ」

 私は一旦部屋を出てから洗面所の収納棚を開けて駆除スプレーを取り出し、彼の部屋でゴキブリを退治してティッシュに包んだ。
 その一部始終を見ていた彼は「すげぇな」と感心の声を漏らす。

「もしかして、ゴキブリ苦手なの?」
「好きなやついるかよ」
「あはは、そうだよね。実はうち、よくゴキブリ出るんだ。築30年の古いマンションだから仕方ないけど。1匹いると100匹いるって言うし」
「…………っ、100匹」
「降谷くんってモテモテだし最強かと思ってたけど、ゴキブリが苦手なんてなんか意外だった」

 思わぬ欠点を見つけてプッと笑うと、彼は「誰にも言うなよ」とふてくされた顔。
 そんなの言わないよ。
 だって、それは私だけが知ってる秘密なんだもんね!


 部屋に戻ろうと思って目線を扉の方向に移すと、扉横に置かれている一枚の絵に心惹かれた。
 その絵とは、子猫のアメリカンショートヘアー。
 愛くるしい眼差しが心を掴んで離さない。
 その上、今にも紙から飛び出してきそうなくらい丁寧に描かれている。
 私は絵の目の前へ行き、両手で掴み上げて言った。

「この絵を買わせて! 部屋に飾りたい」
「えっ……。欲しいじゃなくて?」

 私はこくんと頷き、絵を持ったまま彼の前へ。

「だって、一目惚れしちゃったんだもん。繊細なタッチに生き生きとした子猫の眼差し。この絵を見ているだけでパワーがみなぎってくる」
「大げさだよ」
「そんなことない。この絵にはお金を出して買うくらいの価値があるよ」

 人が描いた絵を欲しいと思ったのは、いまこの瞬間が初めて。
 もちろん降谷くんのことは好きだけど、この絵が好きだということはまた別。
 降谷くんが描いた絵じゃなかったとしても、私はこの絵にお金を払っていただろう。

「やるよ。それ」
「えっ」

 きょとんとしたまま彼を見ると穏やかな目をしていた。

「お前んちに世話になってるお礼。その代わり、俺が絵を描いてることを誰にも言わないって約束してくれる?」
「どうして?」
「……誰にも知られたくないから」

 絵は自慢できるくらいの趣味なのに、どうして隠すんだろう。
 でも、それを聞き返すとまた突き返されちゃうような気がして言えなかった。

「うん、わかった。私と降谷くんの二人きりの秘密かぁ……。いいひ・び・き! んふふ、一緒に暮らしてると二人だけの秘密が増えていくね」
「……」
「冗談だよ、冗談っ!! 絵、大切にするね。ありがとう!」

 スキップ気味に部屋を出ていこうとすると、彼は引き止めるように言った。

「あのさ。お前の名前……なんていうの?」

 残念ながら、そのひとことが衝撃的過ぎて足が止まる。

「……もしかして、一緒に暮らしているのに私の名前すら知らなかったの?」

 いや、正確に言えば気になるのはそれだけじゃない。
 入学してからこの2年数ヶ月もの間に5回も告白していたのに名前を知らないなんて。

「興味ないから」
「うぐぐっ……。じゃあ、名前を聞いてくれたってことは少しは興味が湧いてくれたの?」
「別に。家の中で呼ぶのに不便だから聞いただけ」
「っっ!!」

 相変わらず可愛くない……。
 でも、ポジティブに考えたら、全く興味がない人に名前なんて聞かないよね。
 少しは私に興味が湧いてくれた証拠だよね。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる

まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」 父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。 清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。 なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。 学校では誰もが憧れる高嶺の花。 家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。 しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。 「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」 秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。 彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。 「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」 これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。 完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。 『著者より』 もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。 https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...