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第二章
7.勝ち誇ったような目
しおりを挟むそれから私と蓮は、回収したクラス分の数学ノートを半々に分けて持って職員室へ向かっていた。
正直、二人で分けると一人分が16冊程度しかないから分ける必要がない。
蓮とは久しぶりに単純な会話をしながら肩を並べて歩く。
「ねっ、久しぶりにデートしない?」
「デートと言ってもどうせ蓮の自宅でしょ? ……私を襲うに決まってる」
先生との関係を知ってるのに、どーゆー神経でデートに誘ってくるのか。
すると、蓮は半々にしていたクラス分のノートをヒョイと取り上げた。
「お前さぁ、そんな事ばっかり考えているなんてエロだな。ヤベー……」
イジワルな笑顔は相変わらず。
だから、小さな事でもペースが乱されてカチンとムキになってしまう。
「もーっ! 蓮めーっ!」
「あはは。冗談だよ、ジョーダン! 間に受けるなって」
手をグーにしながらふざける蓮を追いかけ回した。
だが、蓮は右に左にとおちょくるように振り返りながら、捕まらない程度の速度で逃げる。
付き合っていた頃はいつもこんな感じだった。
蓮が冗談を言って私が追いかける。
二人の笑顔が絶えなかったあの時は、本当に楽しくて幸せだった。
まぁ、悪夢を齎したのも蓮だけどね。
久々に二人で走り回ってるうちに、付き合っていた当時まで時計の針が戻ったような感覚になった。
そんな彼の隣は、最も危険な場所であり、絶対的に安全な場所でもあった。
ドンッ……
「……あ、悪りぃ」
調子に乗って後ろ向きで走っていた蓮は、職員室前の廊下でぶつかった相手にすかさず横目で謝った。
しかし、そのぶつかった相手の顔を見た途端、二人の言動が停止する。
何故ならその相手とは、渦中の人物である高梨先生。
そう、私の彼氏だ。
先生は、仲睦まじそうにふざけ合っている私達を何も言わずにじっと見つめていた。
すると、蓮は満面の笑みで持っている30冊ほどのノートを先生に勢いよく押しつける。
「センセー、ちょうど良かった。はい、全員分の数学のノート!」
先生は胸の前でノートを受け取ると、蓮は馴れ馴れしく肩を組んできた。
「じゃ、仕事が終わったからもう行こうぜ~」
「ちょっ、ちょっと……。蓮……」
蓮は私の気持ちなんてお構いなし。
後ろ髪が引かれる思いの私の肩を、動けないほどの力で組み職員室前から離れていく。
先生が心配で冷や汗混じりで振り返ると、先生は困惑した表情を隠すかのように手で口を覆っている。
一方の蓮は、ニヤリと勝ち誇ったように宣戦布告の横目を向けている。
先生は、私と蓮が付き合っていた過去を知らない。
だから、過剰にまとわりつく行動を見てどう思ったのだろうか。
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