Re.start ~学校一イケメンの元彼が死に物狂いで復縁を迫ってきます~

伊咲 汐恩

文字の大きさ
35 / 184
第六章

34.おっちょこちょいな両親

しおりを挟む



  蓮の自宅から花火大会の会場まで、徒歩10分。
  そこには、数々の屋台が横一列に並び、会場に訪れているお客さんでごった返している。


  蓮の両親と蓮、そして私。
  四人揃って会場に到着してからおよそ5分経った頃、事は起きた。

  それまでにこやかに会話していたおばさんが突然何かを思い出したかのようにサーッと顔を青ざめさせた。



「あらやだ!  どうしましょ……」

「お母さん、どうした?」


「お茶を飲もうとしてヤカンに火をつけたまま家を出てきちゃったわ」

「お母さんはおっちょこちょいなんだから。……あっあれ、ない!」



  と、次はおじさんがグレーのパンツのポケットを漁りながらオロオロしている。



「お父さん、どうしたの?」

「どうやらスマホを家に忘れてきたようだ。会社から連絡があるかもしれないのに」


「もう、お父さんったら……」



  まるで茶番劇のようだが、焦ってる様子からしてわざとではないと判る。
  蓮の両親は普段からどこか抜けてるから、特に驚きはしなかった。

  すると、おじさんは蓮の肩に手を置きこう伝えた。



「そろそろ打上花火の開始時刻だから、先に二人で見ていなさい。お父さん達は一度家に戻るから」

「うん、わかった。後で連絡して」



  蓮が頭を頷かせてそう伝えると、両親は人混みの間を通り抜けて自宅へと戻って行った。
  結局、今年も例年通り。
  蓮と二人きりで花火を見る事に。

  軽く相談しながら花火がよく見える場所に移動していると、ある出来事が蓮の彼女だった頃の感覚に引き戻した。



  暗くても聞こえる……。
  少なくとも私の耳には届いている。
  私達が通り過ぎた後、うしろでキャーキャーと興奮気味に騒ぐ女子達の声が。



「いま通り過ぎた人、超イケメンじゃない?」

「芸能人じゃない?  オーラが漂ってきた」

「ホントにカッコイイね。めちゃくちゃタイプなんだけど」



  背後から届いてくる反応は、昔も今も変わらない。
  花火大会が始まる直前で、若干テンションが上がっているせいか彼女達の声が耳にまとわりつく。
  しかし、蓮は普段からきゃーきゃー言われ慣れてるせいか気にも留めない。


  昔は嫌だった。
  蓮の隣を歩いてるだけで見下される目つき。
  蓮があまりにも美しいから不釣り合いなのはわかってる。

  噂の隙間に挟まれた私への悪口。
  蓮の隣から引っペがされて、手のひらと膝を擦りむいた事もあった。
  当時彼女だった私を妬ましく思うくらい蓮はモテていた。

  でも、今はもう彼女じゃない。

  そうなんだけど。
  わかっているんだけど……。

  なんだろ、劣等感と優越感。
  そして、背中合わせなこの気持ち。
  最近感じてなかったな……。



  蓮は見晴らしのいい場所で足を止めると、私の肩に手を添えた。



「屋台で何か買ってくるから待ってて」

「私も一緒に行くよ」


「屋台は混んでるし人とぶつかって危ないからここで待ってて。但し、絶対に動くなよ」

「あっ、うん……」



  軽く頭を頷かせると、蓮は川のように流れている人混みの中に消えていった。
  それから10秒もしない間に、一発目の花火が打ち上げられた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

俺様系和服社長の家庭教師になりました。

蝶野ともえ
恋愛
一葉 翠(いつは すい)は、とある高級ブランドの店員。  ある日、常連である和服のイケメン社長に接客を指名されてしまう。  冷泉 色 (れいぜん しき) 高級和食店や呉服屋を国内に展開する大手企業の社長。普段は人当たりが良いが、オフや自分の会社に戻ると一気に俺様になる。  「君に一目惚れした。バックではなく、おまえ自身と取引をさせろ。」  それから気づくと色の家庭教師になることに!?  期間限定の生徒と先生の関係から、お互いに気持ちが変わっていって、、、  俺様社長に翻弄される日々がスタートした。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さくら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛

ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。 そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う これが桂木廉也との出会いである。 廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。 みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。 以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。 二人の恋の行方は……

お嬢様は地味活中につき恋愛はご遠慮します

縁 遊
恋愛
幼い頃から可愛いあまりに知らない人に誘拐されるということを何回も経験してきた主人公。 大人になった今ではいかに地味に目立たず生活するかに命をかけているという変わり者。 だけど、そんな彼女を気にかける男性が出てきて…。 そんなマイペースお嬢様とそのお嬢様に振り回される男性達とのラブコメディーです。 ☆最初の方は恋愛要素が少なめです。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

溺愛彼氏は消防士!?

すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。 「別れよう。」 その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。 飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。 「男ならキスの先をは期待させないとな。」 「俺とこの先・・・してみない?」 「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」 私の身は持つの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。 ※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。

処理中です...