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第七章
40.重大発表
しおりを挟むーー高梨先生とデートをした翌日の月曜日の昼休み。
紬と一緒に教室から出てくると、付近で大和に遭遇した。
大和は蓮の秘密を知っているのだろうか。
いや、蓮の事だから恐らく病気の事は伝えていない。
元カノの私には何でもお見通しだ。
でも、親友なのにこんなに大事な事を知らないでは済まされない。
刻一刻と迫る命の期限。
早急にこの事実を伝えなければと思い、腕時計で残り時間を確認してから二人を中庭に連れ出した。
「重大発表がある」
緊張のあまり、ゴクリと音が鳴るほど大きく息を飲んだ。
正面右側には大和。
そして、正面左側には紬を立たせて神妙な面持ちでそう言った。
ここ2日間、蓮の病気の件で人知れず頭を悩ませていた。
蓮は病気を隠す為に誤魔化していたけど、命に関わる問題だから一人では抱えきれない。
紬と大和。
蓮と接点があるこの二人には現状を知ってもらった方がいいと思って、思い切って打ち明けた。
「蓮はもう先が長くないかもしれない」
そう言った瞬間、二人は仰天して目を見開いた。
その言葉を口にした自分自身も怖くて唇が震える。
大和「え……。いきなり何なんだよ」
紬「ねぇ、蓮くんの先が長くないってどういう事?」
先日の花火大会が私と蓮にとって最後の思い出かもしれないと思ったら急に悲しくなって涙が浮かび上がった。
梓の涙によって事態の深刻さに拍車がかかると、紬と大和は顔を見合わせた。
梓「どうやら不治の病みたい。蓮に探りを入れてみたら誤魔化したの。恐らくもう先は長くない……」
大和「は? 見る限りではピンピンしてるけど」
紬「嘘でしょ……。蓮くん、今日もいつも通り元気だったよ」
うんうん、わかる。
認めたくないし、驚くのも無理はないよね。
先日、蓮に体調はどうかと尋ねたら『昨日よりは良くなった』と言ってたから、きっと体調には波があるに違いない。
きっと二人は仮の姿に惑わされてしまったのだろう。
梓「実は先日から様子がおかしかった。突然私とやりなおしたいって言って頭を下げてきたり、いきなりかわいいとか言い出したり、体調はどうって聞いてみたら、『昨日よりは良くなった』って。それに、本人の口から『もう時間がないんだ』って言ってて……」
大和「マジか……。お前をかわいいって言うなんて、病状は相当深刻だな。毎日あいつの傍にいたのに全く知らなかった」
梓「何よその言い方! ムカつく~」
紬「蓮くんの体調が悪かったなんてちっとも気が付かなかった。元カノだからこそ気付いたんだね」
梓「多分ね。心配になって本人に何度か病状を確認したんだけど、曖昧な返事をしたり、誤魔化したり。きっと病気だという事を知られたくないのかも」
大和「お前の話を聞いてると、それはマジなやつだな。蓮は確かに肝心な事を話さないから」
紬「もしかしたら、私達の想像以上に病状が深刻かもしれないね。あんなに元気そうに見えるのに……。ショック」
梓「蓮がこの世から居なくなってしまうと思ったら耐えられなくなって、思わず『逝かないで』と伝えたら、『まだ、逝ったらダメ?』と聞き返してきて……。もしかしたら、心の中で覚悟を決めているのかもしれない」
紬「梓……」
大和「……そっかぁ。それはキツイな」
梓「でも、今一番苦しいのは本人だと思う。人生の残り時間、みんなで力を合わせて気遣ったり優しく接してあげないとね。毎日笑顔で過ごせるように寄り添ってあげよう」
大和「そうだな。みんなで身体を労わってやろう。蓮の為に各々が出来る限りの事をしてあげよう」
紬「賛成。せめて私達だけでも力になってあげないとね。少しでも元気づけてあげたいよね」
蓮の現状を聞いたばかりの紬と大和は、ショックを受けて肩を落としていた。
深刻な現状を伝え終えると、昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴った。
まるで口から魂が抜けていくかのように深いため息をつく大和。
顔面蒼白で身体を震わせている紬。
蓮が身近な人物が故に、衝撃的な事態は二人の心に影を被せた。
三人は重苦しい空気の中、暗い顔をしながら誰一人として口を開かぬまま教室へと帰って行く。
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