Re.start ～学校一イケメンの元彼が死に物狂いで復縁を迫ってきます～

第九章

59.形だけ

  蓮……。
  何一人で盛り上がっちゃってるのよ。

  もしかしたら、イケメントリオとしてのプライドもあるかなぁ。
  でも、私の答えはノーしかないし、あんた1人の問題でもない。

  頼むから、こんなクダらない事で人生のストライキなんてしないでよ。
  センター試験まで日も残されていないし、卒業間近なんだよ。
  頼むのはあんたじゃなくて、私の方。
  お願いだからこれ以上困らせないでよ……。



  内緒話がバレないように、まるで腹話術師のように口元をあまり動かさぬまま小声で話していた。
  二人とも明らかに不自然な動きだから、多分異変に気付いているだろう。



「私には彼氏がいるって知ってるでしょ」



  人前で言える話じゃないけど、諦めてもらうにはこれが最適だと思った。
  すると、蓮は。



「とりあえず形だけでいいから」

「えっ？  形だけ？」



  突然意味不明な事を言い出した。

  でも、よくよく考えたら3年連続イケメンコンテスト優勝者の蓮を、ごくごく一般人の元カノの私がここで断ったら、一瞬で全校生徒の標的になるかもしれない。
  今まで受けていた嫌がらせも倍増するのかな。

  それに、去年後夜祭の告白タイムが羨ましいと言っていた事を思い出して、こんなバカげた真似をしたの？
  私達はとっくに別れているのに、今更告白されても嬉しくないんだけど……。

  こんなに胸をドキドキさせてくれるなら、付き合ってた時にやって欲しかったよ。


  でも、よく考えて。
  形だけでもYesと返事をしたら、少しでも延命するかな。
  最期のいい思い出になるかな……。

  いや、やっぱりそれはダメ。
  いま頭が混乱してるから、何が何だか訳分からなってる。


  でも、蓮と付き合っていると嘘の周知をすれば、先生との関係を隠し通す事ができるかな。
  蓮自身も形だけでもいいって言ってくれてるし、提案自体は悪くない。

  自分の為。
  そして、先生の為に……。


  よし、決めた！
  蓮、ごめん。
  申し訳ないけど、この機会を利用させてもらうね。

  そして、先生……。
  後で謝るから、無謀な決断した私を許してね。
  これは形だけの返事だからね。
  どうか、誤解だけはしないでね。