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第十一章
78.二度目の自宅
しおりを挟むデートを放ったらかしてきたから今すぐ先生の元に向かわなきゃいけないのに……。
私はこの家を出ていく事が出来なかった。
蓮の体調不良が本当かもしれないし、手を掴んでいた時の瞳が寂しそうだったから。
「両親が不在中だからって変な事しないでよ」
「しねーよ。……ってか、俺を何だと思ってる」
「だから、エロバカ狼でしょ? この前も言ったでしょ。自分の都合が悪いところは学習しないのね」
「お前だって他人事じゃねーだろ。……まぁ、いいや。玄関で言い争っていても意味がないから、とりあえず家に上がって」
手を離してぶっきらぼうにそう言うと、部屋に行くよう背中を向けた。
足元に目を向けると、尻尾を振って再会を喜ぶ愛犬キャラメル。
キャラメルのつぶらな瞳までもが、私の足を引き止める。
仕方ない。
既にデートは投げ出しちゃってるから、先生には後で謝ろう。
悪意はないけど、理解ある先生の方をつい後回しにしてしまう。
「ワガママに付き合うのは今日だけだからね」
膨れっ面のまま渋々靴を脱いで家に上がり、玄関で靴を揃えた。
共稼ぎの蓮の両親は、土日は外出する事が多い。
今日もそんなサイクルなのではと思って、両親不在というのは特に気に留めなかった。
予め用意されていたお昼ご飯のカレーを二人で食べ終えると、蓮は私を部屋に連れて行き、先日撮った学園祭の写真を見せてくれた。
「はい、渡すの忘れてた。学園祭の時の俺らのツーショット写真」
「要らないよ……。先生にこの写真を見られたらマズイし」
「お前がいま俺と一緒にいる事がバレたらもっとヤバイけどね」
「せっかく来たのに、そんな意地悪言うんだ。蓮の身体を心配してたのに。もう帰る……」
「嘘だって。まだ帰らないで」
蓮は冗談を間に受けて腰をあげる私にほんのり微笑みながら腕を掴んで引き止めた。
今日の教科は、国語と英語。
数学はよく理解しているなぁ~と思って感心していたけど、時間を計りながら同じ文章題を解いて、互いにドリルを交換して丸付けをしても、蓮はやけに点数が取れている。
普段、クラブで遊びまくっている遊び人気質の蓮は一体いつ勉強しているのだろう。
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