Re.start ~学校一イケメンの元彼が死に物狂いで復縁を迫ってきます~

伊咲 汐恩

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第十九章

132.それぞれのキス

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  ーー今は授業の合間の10分休み。
  大和は教室の扉の向こう側から、扉付近に着席している紬に声をかけた。



「紬~。悪いんだけど、教科書貸して」

「いいよー。何の教科?」


「国語ある?」

「うん、あるよ。ちょっと待ってね」



  紬は大好きな大和に頼られて嬉しそうに口元を緩ませながら国語の教科書を机の中から探している。

  最近、大和はうちのクラスに出入りする回数が増えた。
  しかも、蓮より紬を呼ぶ事が多い気が……。

  控えめな紬は、唯一大和の意見を否定しないから、大和にとっては一番頼りやすい相手なのかもしれない。


  ひょっとしたら、二人の距離が縮まっていたのかな。
  ふと思い出したけど、二人はチューした仲だもんね。
  遊び人の大和にとってキスは大した事ないかもしれないけど、紬にしては一大事件だったはず。


  大和と二人きりで話す紬はとてもしおらしくて、初々しく笑う。
  恋してるんだなぁ~って、誰から見ても丸わかり。
  そんな紬を見ているうちに、私も蓮と交際を始めた頃は紬みたいに初々しかったのかな~、なんて思ったりして。


  紬の幸せそうな姿を見ていたら羨ましくなって、席で自習をしている蓮の元へ数学のノートを持って行き後ろから声をかけた。



「蓮。ちょっとここがわからないんだけど……」

「んー?  ちょい見せて。どこがわかんないの?」



  冬は恋する季節。
  私も蓮と幸せになりたい。

  先週、友達レベルまで距離を縮めてくれた蓮。
  偽彼氏時代から比べるとまだ同じ位置まで到達してないけど、卒業間近の今は二人の間の亀裂を少しでも修復出来て良かった。

  つい先日まで口を利いてくれなかったのが嘘のよう。


  だけど、再接近した私達に気付いたクラスの女子は、再び陰口を言うようになった。
  きっと、再三にわたって蓮に近付いた事が気に食わないのだろう。


  その日を境に、私は花音だけじゃなくて他の女子からも堂々と悪口を言われるようになった。
  卒業まで時間がないのはライバル達だって一緒。


  下校時間になって、紬と一緒に帰ろうとして階段を降りていると……。



「蓮と別れたクセに、また近付いてんじゃねーよ」

「何度も何度も付き纏って、いい加減ウザいんだよ」

「二度も別れればもう十分だろ?  蓮にまとわりついてしつこいんだよ」



  背中から三人組の悪口が次々と聞こえてきた。
  彼女達は決して真っ向勝負はしない。
  きっと、面倒な展開を避けたいのだろう。

  同じく背中から悪口を聞き取った紬は横から心配そうに声をかける。



「気にしないで。あの子達は梓が羨ましいだけだから」

「……うん、大丈夫」



  紬は、目にうっすら涙を浮かべる梓の肩を寄せた。
  全てを受け入れてくれる母親のような温かみは、まるで雪崩が起きてしまったかのように強がりな建前を崩壊させていく。



  悪口なんてもう慣れてる。
  一年の頃から散々繰り返されてきた嫌がらせだって、3年間ずっと我慢してきた。

  だけどね。
  今の私はみんなと一緒の立場なんだよ。
  蓮の事で嫌がらせを受けても、今の私は蓮の後ろ盾がないんだよ。

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