Re.start ~学校一イケメンの元彼が死に物狂いで復縁を迫ってきます~

伊咲 汐恩

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第二十章

139.見つかってしまったチョコレート

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  蓮の観察力はかなり鋭い。
  だから、すっからかんの机の中と私の歪な鞄の形を見て、犯行に気付いてしまった可能性がある。
  しかも、いきなり触れて欲しくない話題へ。



  蓮の疑い深い眼差しは不格好な鞄から足元へ行くと、何かの結論に至ったかのように席を立った。
  蓮は私の真横に立つなり、少し見下ろしてこう言った。



「お前の鞄を貸せ」

「えっ?!」


「いいからよこせ!」

「絶対ダメッ!  鞄は貸さない……」



  蓮は机の横の鞄を奪い上げて私が届かないように高々と持ち上げると、ファスナーを開けた。

  ジ……ジ……ジジジ……

  鞄がパンパンなせいで若干ファスナーの滑りは悪いが、ファスナーが半分くらい開くと、まるでポップコーン製造機の吹き出し口のように鞄からバレンタインチョコが溢れ返っていき、ドサドサと床に落下していった。

  バサバサと山積みになっていくプレゼントの宛名は、全て蓮。
  言い逃れが出来ない現実に表情が固まった。



「俺のチョコを奪った犯人はお前か?」

「えっ?  ……チョコ?  一体何の事?」



  今更シラを切り通しても無駄だがこうする他ない。
  蓮は床に散乱しているチョコの宛名を目で一つ一つ確認すると、同時に深いため息をついた。



  終わった……。
  チョコが発見された瞬間から私は加害者に。



「お前の足元にバレンタインのチョコが落ちているのを見て、おかしいなと思ったんだよ」

「えっ、うそっ!」


「嘘じゃねーよ。そこに1個落ちてるから見てみろよ」



  梓は椅子を膝裏で押して、屈んで足元を確認した。
  すると、足元には先ほど手紙を盗み見しようと思った弾みで一緒に落ちてしまったと思われるバレンタインチョコがひっくり返っている。

  言い逃れの出来ない現実に動揺が隠せない。



「あぁあ……いや、そのぅ……」

「人の物を勝手に盗むなって。チョコを渡した奴の気持ちになってみろよ」


「ゴメン……。他の人からのチョコを受け取って欲しくなくて……」

「何?  他の奴にヤキモチ妬いてんの?」


「うん、妬いてる……」

「そりゃ、光栄だね」



  蓮はそう言って冷ややかな目で私の頭をグシャグシャした後、床に散らばったチョコと鞄の中の残りのチョコを全て自分のリュックに詰め込んだ。

  結局、願いも空しく蓮宛てのチョコ達は最終的に本人の鞄へ静かに収まっていった。

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