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第二十四章
181.梓の気持ち
しおりを挟む梓は不安と恐怖に駆られるあまり、肩を震わせながらヒクヒクと啜り泣き始めた。
ところが、蓮はキョトンとした表情で梓の前で少し屈み、ヒョイと顔を見上げた。
「あのさ……、思いっきり感情的になってるみたいだけど、何か勘違いしてる?」
「えっ……」
「俺はお前の気持ちが知りたいって言ってたつもりだったんだけど……」
涙が視界を阻んでてよく見えないけど、真っ直ぐに見つめている眼差しは、どうやら別れを選択してる様子ではなさそうだ。
紬、大和、奏……。
私と蓮が大切にしている仲間達から、今日までたくさんの勇気を貰った。
蓮と気持ちがすれ違った日も。
蓮に話すらしてもらえなかった日も。
気持ちが不安定で喧嘩してしまった日も。
どんなに気分が沈んでいても、いつも傍で励ましてくれる仲間がいたからこそ、今日まで前向きに頑張ってこれた。
だから私は、古い殻を脱ぎ捨てなければならない。
クヨクヨしている時間はもうおしまいにしよう。
3年間応援してくれていた仲間の為に。
そして、自分の未来の為に……。
梓は高校生活最後のラストステージで秘めていた想いを吐き出す決意をしたが、先に唇が震え始めた。
「私は……、蓮が好き……だよ」
「えっ? なんて言ったの? 聞こえない」
自分でもびっくりするほど小さな声。
恥ずかしくて目を合わせる事が出来なかった。
蓮は顔を近づけているから聞こえてるはずなのに気持ちを煽ってくる。
だから、次は目線を合わせた。
「蓮が……好き……」
「声がちっちゃくて聞こえないから、よく聞こえるように大きな声で言って」
聞こえているくせに……。
意地悪。
だから、次は教室に響き渡るくらい大きな声で言った。
「蓮の事が好きで好きでたまんないよ!」
「俺のどこが好きなの?」
「全部が大好き!」
梓は心に溜め込んでいた気持ちを全て吐き出した瞬間、先程までグイグイと返事を催促をしていた蓮の動きが止まった。
「バカでエロで……、自分勝手で本当にどうしようもなくて……。私の事になると見境がなくなったり、高梨先生に奪われるのが嫌で生意気に突っかかったりして。……だけど、そんな不器用な所も愛おしくて」
「梓……」
「私の気持ちは別れた後の努力する10パーセントじゃなくて、やり直そうとしていた時の90パーセントじゃなくて……。あんた以外見えなくなってしまった200パーセントなんだよ!」
「…………」
「蓮が復縁したいと言ってきた時には気付かなかったけど、私が蓮を追いかけ始めてから傍にいてくれた大切さに気付いたよ」
「…………」
「残念だけど、私はあんた以上に人を好きになれないみたい。やっぱり蓮じゃなきゃ嫌だよ……」
全身全霊、勇気を振り絞った。
今は3年前に告白した時以上に緊張している。
自分でもビックリするほど声が震えた。
心臓はバクバクしていて今にも壊れそうなくらいうるさくなった。
でも、今まで喉の奥に引っかかっていた気持ちがようやく言えた。
本当はもっと早く伝えなければいけなかったのに。
「もぉっ……。イジワルなんだから」
梓は頼りない手つきで涙を拭いながらヒクヒクと泣く。
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