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第四章
31.俺のテレビ
しおりを挟む颯斗がコンビニバイトから帰宅すると、何故か自宅の部屋の鍵が開いていた。
閉めたはずなのにと思いながらドアノブを引いて室内に入ると……。
「おかえりなさ~い」
サヤはそう言って玄関へ駆け寄って来たが、部屋の奥に目線を向けるとそこには衝撃的な光景が待ち受けていた。
リビングの右側に設置していたはずのテレビがない!
一年半コツコツと貯金してようやく購入したもので、我が家の高額家電の一つ。
その代わりと言ってはなんだが……。
部屋の2/3以上の面積を占有している天蓋付きキングサイズのベッドが置かれていた。
ちなみに普段部屋の中央に置いていたちゃぶ台は、何故かベッドの隅に立てかけられている。
な……ぜ………。
俺は玄関で呆然としながら聞いた。
「あ、あの……。部屋にどうやって入った?」
「昨日の中年女性の部屋に行って、颯斗さんの部屋の鍵を開けて欲しいと伝えたら開けてくれました」
「(100万円の威力は半端ないな)あぁ、大家ね。……で、俺のテレビは?」
「処分しました」
「はあぁああ?! どうしてテレビを捨てた。俺の大切な宝物だったのに……」
「無駄な情報は要りません。サヤだけを見ていて下さい。よそ見なんて時間の無駄です」
俺は彼女の身勝手な言動に気持ちが追いつかない。
一緒に暮らす事は同意したけど、まさか個人的な意思で私物が勝手に捨てられてしまうとは……。
「テレビがぁあ……うっ……うっ……。そっそれと、その天蓋付きのベッドは?」
「あっ、これですか? サヤの私物です。このベッドは生まれた頃から使用しているので、これじゃないと眠れないんです」
残念ながらそれを聞いた途端、一瞬で涙が引いた。
ここは俺の部屋。
にも拘わらず、彼女のコンスタントは良くて俺はダメ。
当然、不条理な話を受け入れるはずがない。
「はぁ……。それこそ今すぐ片付けようか」
「嫌ですよ」
「あのさ。部屋の中をよく見回してごらん。そのベッドが部屋の中央をぶんどってるだけで普通に生活出来ないと思わない?」
沙耶香は颯斗の呆れ顔を見ると、渋々電話をかけた。
すると、15秒もしないうちに右京と左京がやってきてベッドの解体を始めた。
ってか、この二人は電話で呼んでから来るのが早過ぎる。
明らかに外で待ってたよな……。
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