キミに届く、一枚の勇気

伊咲 汐恩

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11.似合ってる、の意味

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 ――放課後、クジで選ばれたクラスメイトの五人で、文化祭の資材の買い出しに出た。
 メンバーは、男子二人と、女子三人。
 そのうちの女子二人は仲が良い。
 私はみんなの背中を見ながら歩いていた。
 女子二人は、刈谷くんを囲んで話しかける。

「ねぇねぇ、刈谷くんって、どこから引っ越してきたの?」
「埼玉」
「うっそ。隣の県じゃん。もしかして、転校してくるまえに彼女いたんじゃない?」

 女子二人は、刈谷くんに質問攻めに。
 ざらついた気持ちのまま見ていると、刈谷くんはピタッと足を止めた。

「友達じゃないから、そういう質問答えたくない」

 空間をばっさり切り取っているかのように、きっぱりと言う。
 私は目を見開いた。
 女子二人は、お互い戸惑うように目配せをする。

「えっ」
「俺さ、友達ってわりと選ぶタイプだから」

 彼は私をチラッと見た。
 目が合った瞬間、私は急に気まずくなって俯く。
 友達――その重みが伝わった瞬間、胸の中がポッと温かくなった。

 ホームセンターに到着。
 入口で、ハロウィンコーナーが展開されている。
 コスプレ衣装や、飾り物や、ラッピング等が売り場を賑やかせていた。

「もうハロウィンかぁ」
「ねぇねぇ、このかぼちゃの帽子かわいくない??」
「……もう行こうぜ。時間なくなるよ」

 小林くんは押していたカートを止め、女子二人に呆れた声を浴びせる。
 女子二人は小林くんをちらっと見たあと、ハロウィンの帽子を手にとって、それぞれ頭に乗せた。

「これ、文化祭で使おうよ。みんなオソロで」
「うっわ! いいね。盛り上がっちゃうんじゃな~い?」

 キャアキャアと盛り上がりを見せる二人。
 小林くんの存在を忘れているかのよう。
 私はすぐ後ろで、飾り用のかぼちゃを触り、二人の声を聞き流していた。

 フワッ……。
 誰かが後ろから、私の頭になにかを乗せた。
 重みを感じたまま振り返ると、刈谷くんが口角を上げて微笑んでいる。

「あ、ホントだ。かわいい」
「え」
「帽子めっちゃ似合ってる。これ被ってたら、お客さんいっぱい来るんじゃない?」

 胸がトンと弾んだ。
 私のことをかわいいと言ったわけじゃないのに、反応してしまうなんて。
 ざらついている帽子を前に傾け、少し温かくなった頬を隠した。
 彼の笑顔は、私の心に華を添える。

「刈谷って、厚木のことが好きだったりして……?」

 小林くんがにやけたまま言う。
 刈谷くんは表情一つ変えない。

「ってか、話飛びすぎ。友達なら『かわいい』とか『似合ってる』とか、普通に言うでしょ」
「え! 刈谷くんと厚木さんが友達?! うっそ! 信じられない」
「マジ? 共通点なくない?」

 女子二人がしかめた顔でお互いを見つめる。
 地味子と金髪男子じゃ、共通点がない。
 でも、それだけで価値観を決められてしまうなんて。
 
「共通点って……同じクラスメイトでしょ?」

 刈谷くんは、みんなの顔を眺める――帽子からチラ見している私も含めて。

「だから、冷やかしはやめてね」

 にこりと微笑んだ。
 こういう風に、自然と力になってくれることがなによりも嬉しい。
 刈谷くんに出会うまで自分は置物だと思っていた。
 でもいまは、存在を認めてもらえたような気がして心があったかい。

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