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第八章
177.腕を掴んだ相手
しおりを挟むバレンタイン前日の今日は、帰宅時に最寄り駅のビル内の雑貨屋さんにラッピング材料を買いに来た。
今日は前日という事もあって、バレンタインコーナーは女子中高生で賑わっている。
ラッピング袋にリボンに包装紙にシール。
ケーキボックスにマフィンボックスにトリュフボックス。
それに、チョコカップやマフィンカップやケーキの型など、多種多様なバレンタイン用品が置いてあった。
どれもこれも可愛くて目移りしちゃう。
咲用にかわいいラッピングを買っていこうかな。
小さなラッピング袋は品薄だったけど、探していたマフィンボックスは種類が豊富で山積みに。
今回は前回と同じくチョコレートマフィンにするつもり。
材料は1週間前に近所のスーパーで購入済み。
でも、肝心なラッピングが頭からすっかり抜けていて、買いに来るのが直前の今日に。
ズボラな性格はいつになっても直らない。
今日は塾もないし、理玖は駅前の英会話教室の日。
だから、会う約束はしていない。
それにまだ16時半だし、買い物する時間やマフィンを作る時間はたっぷりある。
理玖に再会するまで二度もバレンタインを渡す事になるとは思いもしなかった。
まぁ、それ以前にまた付き合うとは思ってなかったけど。
会計を済ませた後、レジ袋を片手にエスカレーターを下った。
下の階の景色を眺めている私の頭の中は、理玖の事で頭がいっぱいに。
告白の返事をした時は先行きが不透明だったけど、今は毎日が幸せ。
理玖は沢山笑わせてくれるし、優しいし、毎回塾に迎えに来てくれる。
それに、元気がない時は気持ちに寄り添ってくれる。
私自身もこうやって昔のことを思い浮かべながらバレンタインの準備をしたり、自分からキスをしたり。
積極的になってる傍らで気持ちは不透明だけど、理玖という存在は少なからず心に影響している。
勇気を出して唇を重ねた後はいつも通りの理玖に戻った。
憂鬱な様子を見せたのはあの瞬間だけ。
結局その理由は教えてもらえなかったけど、解決してればいいなと思ってる。
でも、交際を始めてからもう3ヶ月経つし、待つとは言ってくれたけど次の進展を期待してたりするのかな。
交際3日目にそんな雰囲気になった時は断る事しか考えていなかったけど、キスが当たり前になった今もやっぱり怖い。
その日を境に、心も身体も大きく変わっちゃうような気がする。
まだ全然先だと思ってたし、未知の世界だから不安ばかりが付きまとっている。
愛里紗は理玖との進展に心をザワつかせながらボーッとエスカレーターを下って、駅から遠ざかるようにバスのターミナルへ足を向かわせると……。
「愛里紗」
突然、左側から誰かに呼び止められたと同時に腕を掴まれた。
びっくりしながら相手に目を向けると……。
「う……そ……」
そこには、心臓が飛び出すくらい衝撃的な人物が立っていて、直前まで考えていた理玖の事が簡単に上書きされてしまった。
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