レイヴン戦記

一弧

文字の大きさ
33 / 139
人生何が起こるかわかりません

股間の縮こまる饗宴

しおりを挟む
 股間緒縮こまる饗宴、そんな言葉が最もふさわしい宴であった。
 晩餐会が行われた、領主屋敷の広間で少々待機していると「準備が整ったとのことです」とイゾルデが伝えてきた。

「村の広場で催し物がありますので移動しましょう、暗いですので足元にご注意を」

 テオドールはにこやかに言うとオルトヴィーンとフリートヘルムの案内を開始した、ほどなくして村の広場に到着するが、その光景を見てオルトヴィーンは、絶句する。

「なんだ・・・これは・・・」

「クズの末路ですね」

 20本ほどある、地面に転がされた丸太に、裸の男達が丸太を背に縛られていた、

「どうぞ、特等席ですよ」

 二人に椅子を勧めると、待機している村人達に号令をかける。

「一人一人、順番に始めぃ!」

「はっ!」

 特等席と呼ばれたオルトヴィーンとフリートヘルムの前に丸太に縛り付けらえた男が男衆の手によって運ばれてきた、男は言葉にならない叫びを上げていた、それを見てテオドールが言う。

「煩くないように、舌は抜いてあるんですよね、舌噛まれても厄介ですからね、それでも結構うるさいですねえ」

 二人は言葉もなく、見ていた。
 陰茎は縮こまっていたが女衆の一人が皮の手袋を着けた手で睾丸を押えると、女衆の別の一人が縮こまった陰茎を踏みつけてボロクズのようにしていった、よく見ると踏みつけた靴には鋲が打ってあり、陰茎は原型を辛うじてとどめているかどうかという形状へと変化していた。男は首を大きく振り、涙を流し声にならない叫びを絞り出すようにしていだが、中止されることはなかった、同じように作業が延々と続けられた。
 さすがに男衆は、ほんの少し同情の色を見せていたが、悪行が知れ渡っているだけに女衆は嬉々として作業を進めて行った。

「いい気味だ」
「あっあいつ私のお尻触ったやつだ!私にやらせて」
「ああ、あいつに胸さわられた!そいつ私の」
「あっ汚い、こいつ漏らした」
「うわ!こいつ小っちゃ!」

 異常な盛り上がりを見せていた。

 しばらく唖然として見ていたフリートヘルムであったが、我に返りテオドールに注文を付け始めた。

「ルールは家や領地によって異なりましょう、されどこれはいくらなんでもやりすぎでは?家格以前の問題として人としての品格を疑われますぞ!」

「ああ、やっぱりそう思いますか・・・」

「当たり前です!常識を疑います!」

「ですよねぇ・・・」

「なら何故です?」

 語気鋭く詰め寄るフリートヘルムに対しどこか投げやりにテオドールは答える、それがさらにフリートヘルムを苛立たせた、しかし一転して少し大きめな声でテオドールが声を発する。

「この刑罰の提案者、挙手!」

 テオドールが声を挙げると、勢いよくヒルデガルドとユリアーヌスが挙手し、オズオズとゲルトラウデも手を挙げた、挙手した妹と王女を唖然とした目で見つめるフリートヘルムとオルトヴィーンの親子を尻目に、テオドールは続ける。

「逆らうと怖いんですよね・・・そういえば品格がどうしたんでしたっけ?」

「ユリアーヌス様、ヒルデガルド・・・本当なのですか?」

 二人にむかってオルトヴィーンが懇願するように問いかけるが、その答えは明快なものであった。

「ええ、本当ですわ」

「最初はいかに惨たらしく殺そうかって相談してたんだけど、ゲルトラウデがね『可愛そうだから命は助けてあげてください』って言うのよ、優しいわよねえ、だからこうして命は助けてあげてるのよ」

 ヒルデガルドの言っている事は半分は嘘であった、より正確に言うなら『楽に殺さず生き地獄を味あわせてやりたい』とゲルトラウデは言ったのであった。唖然とするオルトヴィーンとフリートヘルムを尻目に、ガールズトークを開始する。

「最初は目をくりぬいて鼻を削ぎ落として、とか思ったんだけど、目を潰して放置したらすぐ死んじゃうだろうしねえ」

「ええ、やっぱりきつそうってなると、鉱山とか炭鉱で死ぬまで重労働とかが思いつきますわよねえ」

「ええ、そうなると目は残す必要あるけど、舌はいらないし、舌噛んで自殺もできなくなるから一石二鳥なのよね」

「問題はそのくらいじゃ甘いんですよね」

「大甘ね!」

「そうなると一番の罪悪の根源を消去するべきでしょうけど、どうするのが一番いいかってところで、けっこうもめたのよね」

「スパッと切るよりもっとジワジワやった方がいいじゃない!」

「それには同感ですわ!」

「踏みつぶす、ハンマーで叩き潰す、焼く、この辺が候補として残ったんだけどねぇ」

「聞いた事があったんですよ、睾丸だけ残されて陰茎を潰されると、そっちの方が全部潰されるより後がきついって」

「テオドールとかカイに聞いても、聞きたくないって逃げちゃうのよねぇ」

「睾丸を残しておいた方が力は出やすいから鉱山奴隷などにはいいって話も聞いた事があったんですよね」

「よく知ってるのよね、感心しちゃった!」

「王族への反逆者に対しての拷問や、刑罰の記録がお城には大量にあったんですよ」

「ってわけで、最終的にこの刑罰で落ち着いたのよ」

 満面の笑みで父と兄に話しかけるが、唖然として何も言えないでいた。何も言えず唖然としている二人にテオドールがダメ押しのように語りかける、

「というわけで、伯爵様の領地には鉱山もおありとのことでしたので、引き取ってはいただけないでしょうか?いえいえ、本日の来訪の御礼ですので」

 この日のオルトヴィーンの日記には何も記されることはなかった、記したくなかったのかもしれない。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」  悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!? 「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」  やかましぃやぁ。  ※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。

処理中です...