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猪突猛進の魔法使いギルマ 3
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僕はギルマに負けたことにより、推薦の癖に弱い生徒として名が通っていた。
冷ややかな目が痛い。
ただ食事をしているだけなのに関係のない他者の言葉を気にしてしまう。
僕のことを言ってるんじゃないかって。
「あ、ライカじゃん。前座っていい?」
「アクアか。いいよ」
「何々? 元気なさそうじゃん。気にしなくていいんだよ。確かにしばらくは汚名は拭えないけど、学園の行事とかテストとか得意分野でギルマを越えればさ」
「待ってられないよ。すぐにでもやりたい」
「はぁ!? 無理だって、一発でやられたんでしょ」
自分でも無茶なことを言っているとわかってはいたけど、さすがにここまでズバッと言われると結構傷つく。
それに気づいたのかアクアは申し訳なさそうな表情を浮かべ言った。
「だ、だってまだ魔力もまともに使えないんでしょ。ノル先輩から聞いたよ。実技のある授業は受けてないって」
「だから頼みたいことがある。アクア、俺に魔法の使い方を教えてほしい」
「私が? 無理無理。私教えるの下手だから」
「お願い! 僕は僕がどこまでできるか試したい。ようやくスタートラインに立ったんだ。あとはやれることをやるしかないんだよ」
勢いあまって声も大きくなり、気づけばアクアの手を握っていた。
「あ、ごめん!」
「案外情熱的というか、熱血なところもあるんだね。……ぶっちゃけさ、一応初日挨拶したから気にかけたんだけど、このまま落ちるようなら触れないでおこうとか思ってた」
「ど、ドライなところもあるんだな……」
「人数が減ればそれだけ魔道者になれる確率も上がるからね」
魔道者、魔法使いよりも上の存在で、魔法の研究や開発、さらに指導を許可された存在。その上には魔道師という存在もいるとか。
多くの生徒たちは魔道者を目指す。それが魔法使いにとって名誉あることだからだ
アクアもまた魔道者を目指しているんだ。
「でもね、こんな力強く手を握られてさ。そんな熱い瞳をしててさ。それを無下にできるほど私は冷たくなれない。だから手伝ってあげる。打倒ギルマをね!」
そこから、あまり人が来ない場所で練習し、アクアはいろいろと教えてくれた。
魔力の流れは、心臓から血が送られるように、魔力も体の中の魔力コアから生成され全身へと送られる。
アーキュさんはたぶん魔力コアに何かしらの刺激を与え、魔力の通る道魔力回路に刺激を伝達した。それが血管に炎があるような痛みの答えだろう。
「学んで練習すれば多くの魔法を習得はできるけど、結局得意不得意は絶対あるの。例えば、私なら水の魔法が得意。水そのものを発生させたり、噴水の水を操ったりね」
「じゃあ、ギルマは風なのかな」
「おっ、正解! どうしてわかったの?」
「ギルマのお兄さん、フーカが風を使ってギルマを吹き飛ばした。兄弟なら似るんじゃないかって。それに全然見た目は似てないけど双子だから、余計に似てくるのかと」
「そうだね。魔力の素質は遺伝するって言われてる。例えば、両親が水と炎の魔法を人並み以上に得意とするなら、比較的その子どもは水と炎を得意になる傾向が強い。とはいっても、子ども自身が水や炎の魔法を使う機会がなかったり、別の魔法に興味を抱いてしまえば、素質も才能も意味はないんだけどね」
どれだけ秘められた力があろうと、天才だとしても、結局のところそれを使う機会、つまり行動し認識し理解することでしか見つけられない境地。
この学園にいる生徒は恵まれてはいるだろうけど、少なくともみんなそれぞれの才に気づいて行動してる。ないものねだりだけをした僕よりもよっぽど立派なんだ。
「少し見せてあげようか。私の魔法を」
アクアは手のひらに水の渦を発生させて見せてくれた。
僕はぐるぐると回る水の動きに魅入られ、つい触ってしまった。
指先が渦に触れた瞬間、指の関節を逆方向に曲げる力が一気にのしかかる。
「うわっ、あぶないよ!」
すぐに渦を止めてくれからよかったけど、あのままだったら指が折れていたかもしれない。それだけアクアの水魔法は強力だということだ。
ただ、同時に不思議な感覚がした。
何か新しいものを発見したような独特な感覚。
「もし、アクアとギルマが決闘をしたらどっちが勝つ?」
「私かな」
アクアは躊躇せず答えた。
「もちろん理由がないわけじゃないよ。私やギルマは格闘術に優れてる。そこに魔法を利用することで簡単には打破できないトリッキーな動きや強烈な力を生み出す。やろうと思えば壁も壊せるよ」
「こ、怖いな……」
「学年ごとに二つ名を持つ魔法使いってのがいるんだよ。私は水流の鉄拳なんて言われてるよ」
「ギルマは?」
「二つ名はない。お兄ちゃんのフーカは神出鬼没の嵐って二つ名があるかな。ちなみに白マントみたいなトップレベルの魔法使いも二つ名があるけど、私たちみたいな一般生徒よりもはるかに上なんだ」
いまの僕じゃ想像さえできない。
「ねぇ、ライカは何になりたいの?」
「何になる……か」
ただの魔法使いだってそれなりにいいものだ。
優秀な魔法使いなら暮らすのには困らない。
魔道者になればよりいろんな世界を見れる。
その上の魔導師は大陸の中でもわずかな人数しかなれない。
そして、僕が憧れたのは伝説の存在。
「誰かの憧れになれるような存在になりたい」
「大きい夢だね」
アクアは笑いながら言ったけど、小ばかにするようなかんじではなかった。
その笑顔はとても優しいものだった。
「なら、ギルマを倒したら私を越えないとね」
「ライバルか」
「今は仲間だよ」
「いつか手合わせをお願いするよ」
「望むところ」
僕の心が踊っているのがわかった。
冷ややかな目が痛い。
ただ食事をしているだけなのに関係のない他者の言葉を気にしてしまう。
僕のことを言ってるんじゃないかって。
「あ、ライカじゃん。前座っていい?」
「アクアか。いいよ」
「何々? 元気なさそうじゃん。気にしなくていいんだよ。確かにしばらくは汚名は拭えないけど、学園の行事とかテストとか得意分野でギルマを越えればさ」
「待ってられないよ。すぐにでもやりたい」
「はぁ!? 無理だって、一発でやられたんでしょ」
自分でも無茶なことを言っているとわかってはいたけど、さすがにここまでズバッと言われると結構傷つく。
それに気づいたのかアクアは申し訳なさそうな表情を浮かべ言った。
「だ、だってまだ魔力もまともに使えないんでしょ。ノル先輩から聞いたよ。実技のある授業は受けてないって」
「だから頼みたいことがある。アクア、俺に魔法の使い方を教えてほしい」
「私が? 無理無理。私教えるの下手だから」
「お願い! 僕は僕がどこまでできるか試したい。ようやくスタートラインに立ったんだ。あとはやれることをやるしかないんだよ」
勢いあまって声も大きくなり、気づけばアクアの手を握っていた。
「あ、ごめん!」
「案外情熱的というか、熱血なところもあるんだね。……ぶっちゃけさ、一応初日挨拶したから気にかけたんだけど、このまま落ちるようなら触れないでおこうとか思ってた」
「ど、ドライなところもあるんだな……」
「人数が減ればそれだけ魔道者になれる確率も上がるからね」
魔道者、魔法使いよりも上の存在で、魔法の研究や開発、さらに指導を許可された存在。その上には魔道師という存在もいるとか。
多くの生徒たちは魔道者を目指す。それが魔法使いにとって名誉あることだからだ
アクアもまた魔道者を目指しているんだ。
「でもね、こんな力強く手を握られてさ。そんな熱い瞳をしててさ。それを無下にできるほど私は冷たくなれない。だから手伝ってあげる。打倒ギルマをね!」
そこから、あまり人が来ない場所で練習し、アクアはいろいろと教えてくれた。
魔力の流れは、心臓から血が送られるように、魔力も体の中の魔力コアから生成され全身へと送られる。
アーキュさんはたぶん魔力コアに何かしらの刺激を与え、魔力の通る道魔力回路に刺激を伝達した。それが血管に炎があるような痛みの答えだろう。
「学んで練習すれば多くの魔法を習得はできるけど、結局得意不得意は絶対あるの。例えば、私なら水の魔法が得意。水そのものを発生させたり、噴水の水を操ったりね」
「じゃあ、ギルマは風なのかな」
「おっ、正解! どうしてわかったの?」
「ギルマのお兄さん、フーカが風を使ってギルマを吹き飛ばした。兄弟なら似るんじゃないかって。それに全然見た目は似てないけど双子だから、余計に似てくるのかと」
「そうだね。魔力の素質は遺伝するって言われてる。例えば、両親が水と炎の魔法を人並み以上に得意とするなら、比較的その子どもは水と炎を得意になる傾向が強い。とはいっても、子ども自身が水や炎の魔法を使う機会がなかったり、別の魔法に興味を抱いてしまえば、素質も才能も意味はないんだけどね」
どれだけ秘められた力があろうと、天才だとしても、結局のところそれを使う機会、つまり行動し認識し理解することでしか見つけられない境地。
この学園にいる生徒は恵まれてはいるだろうけど、少なくともみんなそれぞれの才に気づいて行動してる。ないものねだりだけをした僕よりもよっぽど立派なんだ。
「少し見せてあげようか。私の魔法を」
アクアは手のひらに水の渦を発生させて見せてくれた。
僕はぐるぐると回る水の動きに魅入られ、つい触ってしまった。
指先が渦に触れた瞬間、指の関節を逆方向に曲げる力が一気にのしかかる。
「うわっ、あぶないよ!」
すぐに渦を止めてくれからよかったけど、あのままだったら指が折れていたかもしれない。それだけアクアの水魔法は強力だということだ。
ただ、同時に不思議な感覚がした。
何か新しいものを発見したような独特な感覚。
「もし、アクアとギルマが決闘をしたらどっちが勝つ?」
「私かな」
アクアは躊躇せず答えた。
「もちろん理由がないわけじゃないよ。私やギルマは格闘術に優れてる。そこに魔法を利用することで簡単には打破できないトリッキーな動きや強烈な力を生み出す。やろうと思えば壁も壊せるよ」
「こ、怖いな……」
「学年ごとに二つ名を持つ魔法使いってのがいるんだよ。私は水流の鉄拳なんて言われてるよ」
「ギルマは?」
「二つ名はない。お兄ちゃんのフーカは神出鬼没の嵐って二つ名があるかな。ちなみに白マントみたいなトップレベルの魔法使いも二つ名があるけど、私たちみたいな一般生徒よりもはるかに上なんだ」
いまの僕じゃ想像さえできない。
「ねぇ、ライカは何になりたいの?」
「何になる……か」
ただの魔法使いだってそれなりにいいものだ。
優秀な魔法使いなら暮らすのには困らない。
魔道者になればよりいろんな世界を見れる。
その上の魔導師は大陸の中でもわずかな人数しかなれない。
そして、僕が憧れたのは伝説の存在。
「誰かの憧れになれるような存在になりたい」
「大きい夢だね」
アクアは笑いながら言ったけど、小ばかにするようなかんじではなかった。
その笑顔はとても優しいものだった。
「なら、ギルマを倒したら私を越えないとね」
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