可憐に咲く花のように

ナナホシ

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花は散り行き舞い戻る

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あの時、彼女の言った言葉が唐突に脳裏をよぎる。
それは、少年少女らと彼女のとても大切な日で、一番の思い出。

『この組のルールはね、無視ぜず守る...よ』

少女と少年たちは深く頷き、心に言葉を刻む。すると彼女は笑顔で抱きしめて、ふたたび口を開く。

『困ってる人がいたら無視しちゃダメよ?...よっし、それじゃあ私たちの活動を始めましょうか』


もう五年になるのか...皆んなで誓い合ったあの日から、気付けば5年という年月が過ぎている。
誓い合ったあの日以来、俺たちは今でも活動をしている...1人を除いたメンバーで。『彼女』宮野可憐、グループの創設者にしてリーダー。そして、欠けたメンバーである。
彼女...可憐はあの日、俺たちが決まって集まる集会の日に来なかった。外せない用事があって来れなかっただけだと思ったりもしたが、普段活動報告に使っていたノートに、可憐からの手紙が人数分挟まっていた。
俺たちは自分の名前が書かれた手紙を急いで開けて目を通した。

『─田村悠へ─ 悠はいつも皆んなを引っ張ってくれるとても強い子だったよね。えーと、いきなりこんなこと書くの、私らしくなくて変かな。いつも通りが一番だよね!私ね、先生になるために学びに行くことにしたの。県外の大学でどうしてもここには居られなくなってね。こんな形で言いたくなかったけど、私ってダメで...あって話すと行くのやめちゃいたいと思っちゃう。だからごめんね、こんな形での報告で』

紙はところどころしわになっていて、後半になるたびに字が荒くなっていた。可憐はきっと泣きながらこの手紙を書いたのだろう。
そんな、可憐の手紙を俺は泣きながら読んだ。

『リーダーの私が抜けちゃったらきっと組はバラバラになっちゃうと思う。だって、皆んな優しいから、私がいなくなったらやめちゃうでしょ?...悠言ってたよね。私がいなくなったらどうするって聞いた時、可憐の始めたことだからこの組みは続けられなくなると思う。けど、組の方針は絶対に忘れないよって言ってくれたよね。すっごく嬉しかったよ。でもね、どんな形になっても三人一緒にいて欲しいな...私の組みじゃなくても、三人の組みをつくって。いつか絶対に会いに行くから、その日まで2人をお願いね。悠』


あれから5年、俺は...俺たちは、高校生になる。
組の元メンバー3人で、同じ高校に進学することになった。だが、ここに来るまでかなりの苦労があった。なんせこの学校のレベルはそこそこに高いからな。皆んな受かろうと思うと、かなりの難易度だったのだ。
それならばなぜ、この高校を選んだのか不思議に思うところだろう。理由は1つ、可憐の通っていた高校だからだ。
可憐は先生になると言っていたんだ。もしかしたら自分の母校にいるかもしれない、ここに俺たちが来るのを待っているかもしれない。そんな風に思ったんだ。
それにもう1つ、可憐のいた高校でやりたいことがある。

俺は後ろの2人に目を向ける。

「わかってる。悠の言いたいことはな」
「そうだよ?何年一緒にいると思ってるの?」

藤井遥斗と豊田詩織、あの組みの残りのメンバーだ。
可憐がいなくなったあの日から、俺たちは組みとは別の場で活動を続けて来た。
自己満足のようなことばかりだが、地域からはそれはもう頼りにされていた。
そんな俺たちがここでやりたいことと言えば...。

「分かってるなら話が早いや。ここに俺たちの組を作ろうか」
「「おー!!」」

中学校という所では絶対に実現不可能なことだった部活立ち上げ。
組み自体は俺たちで作れる。それは当たり前だが、どうせやるなら形が欲しい。
名誉や賞賛の声が欲しい訳ではない、だけどこうしたいと思う。そして、叶うのなら共に活動のできる仲間が欲しい。
人を集めるという意味でも、こう言った形が一番だと俺は考えた。
俺たちの作る組に入る人間なんだから、きっと可憐も喜んでくれるはずだ。

今の俺たちがここまで可憐のことばかり考えているのを、おかしいと思う人もいるかと思う。
けど、理由があるんだ。

それを説明するためにまず、そもそもなぜこのような組ができたのかって話をしよう。
昔、俺たち3人はいじめこそないものの、孤独だった。
家に引きこもって誰とも関わろうとしない、そんな日々だった。
遥斗も詩織も通っている学校が違って、俺たちは接点なんてなかった。
そんな俺たちを集めてくれたのが可憐だった。俺は通学中にたまたま可憐と会って、組を作るから入らない?って誘われたんだ。
絶対入らないって言ったんだけど、可憐は諦めることなくスカウトしてきた。
拒み続けた俺だが、流石に折れたよ。

だが、入ってみたらいい所だった。
2人ともいい奴だったし、何より可憐はとても優しかった。
そうして時間が経つにつれて、恋愛感情にも似た感情を抱くほどに信頼していった。

そんな組みに入ってしばらく、俺の母が亡くなった。事故だとか殺人だとか、そんなことはなく、病気による死だった。

母が亡くなったその日から俺は、組には顔を出さなくなった。別に組の奴らが嫌いになった訳じゃないし、会いたくない訳じゃない、けど...その時の顔は見せられないよ。
俺が置かれている状況を知った可憐は毎日、俺の家に通ってくれた。俺が立ち直るまで何度も、何も言わずに寄り添ってくれた。

だから俺は可憐には並々ならない思入れがあるんだ。普通では測りきれない気持ちが、友達とはまた違った思いが。

そんな可憐がしてくれたように、俺も人を助けたいと思う。
それが組への思いと、可憐への思いだ。

2人も同じ思いを抱き、俺について来てくれている。あいつらも色々あったんだ...可憐との間に。
それはいずれあいつらの口から聞けるといいな。

さて、始めようか。
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