恋は、美味しい湯気の先。

林崎さこ

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<番外編・小話詰め合わせ>


<葬式のために緊急帰宅した秘書が愚痴る話>

「いや、帰って来てもらって、ホント助かったわー。親父はヘルニアで入院してるし、お袋はオロオロするだけで何もしないし」
「『爺死亡。孤軍奮闘タスケテ』なんてメール来たら、そりゃあね...。でも結局、兄さんがほぼ手配してくれてたじゃない。実家のそばに住んでてくれて良かったよ」
「まぁ、そのせいで嫁には逃げられたけどな......。それにしても、お前の弔問客さばきは凄かったな。一流ホテルマンの仕事を見たっていうか」
「ここ3年ほどは秘書業務だけどね。社長代理で弔問に行くこともあるから慣れてはいるし。とりあえず5日間休みもらったんで、みっちり手伝うよ。父さんの見舞いにも行きたいしね」
「やった、ラッキー!でも仕事大丈夫?社長のお供で出張中だったろ?アメリカから来たスーパーイケメンの」
「うん......いや、おれもどうしようか悩んだんだよね。新しい社長、言葉は完璧なんだけど、全然日本文化慣れしてないし、冬の山奥に1人放り出していくのもどうかと思って。で、最悪葬式に出れればいいって遠慮してみたんだけど、言われたセリフが『君がいなくても仕事は回る』」
「言い方」
「でしょ?ま、確かにそうなんだけどさ......」
「んー、帰りやすくさせてもらった、って善意に捉えてみるとか。俺なんて、『え、早退?死んだのおじいさんでしょ?ご両親に動いてもらえばいいじゃない』って真顔で言われた」
「それはそれで嫌だな......。でもさ、もうちょっとオブラートに包んでほしいというか。普段でも物言いが冷たいんだよな。前の社長はあんまり日本語上手くなかったけど、気遣いとか優しさがあったよ。今日の交渉も決裂してるね、絶対」
「......慣れない土地で就任したばかりで気が張ってるんじゃない?日本的な物の考え方とかがわかってくれば変わるよ、きっと」
「......変わるかなあ.........」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ( 変わります。大丈夫です。(^O^)/ )




<久我山亮介初来店時のイケメントリオのひそひそ話>

 ワールドワイドな熱狂にひとしきり盛り上がった後。
 恐ろしい勢いで食器をカラにしていく美形の大男の横で、池本さん達は顔を寄せ合い、一転、沈痛な面持ちで話しはじめた。
「......グループ名を変えようと思う」
「賛成」
「そだねー」
 "本物"を前に、なんちゃってイケメン達はあまりにも無力だった。
「イケオジトリオとか」
「変わってないじゃん」
「そだねー」
「でもちょっと名残惜しいよね。社内ではしっかり定着してるし。経理のオバちゃんとか『トリオの皆さん、出張費申請早くして下さいねー』なんて言ってくれてさ」
「上半分を言ってくれたことあった?」
「ない」
「そだねー」
「誰だよ、さっきから『そだねー』しか言ってない奴」
「......」「......」
「いっそのこと、トリオ呼びから脱却してみる?そんでもって、身の丈にあった愛称で勝負しようよ」
「何と戦うんだよ」
「親しまれる中間管理職を目指して日夜戦ってマス。とりあえず身の丈......チビ、デブ、ハゲ......」
「ヤメテ」
「ハゲてませんー。薄毛なだけ。あと、デブじゃなくてメタボね」
「メタボ......メタボの人......おっ、メタボニアンなんて、どう?」
「メタボニアンねぇ。なんかそんな名前の動物いなかった?」
「ポメラニアンな」

 おじさん達の会話はいつも聞いてて楽しい。

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