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打ち明け話とカフェオレボウル・5 side 悠人
その後、気づけば小柄な老女――千春ばあちゃんの店で居候することになっていた。これまでと一転して穏やかな優しい時間の中で、ズタズタにされ傷だらけになっていた僕の心は、ゆっくりと癒されていった。
ああ、いけない。田嶋部長のことを聞かれているだけだったのに、随分関係ないところまで話してしまった。夜も遅いのに、手短にしないと。
店の2階で死んだように眠るだけの毎日から、簡単な手伝いを始めてやがてはカウンターに立つようになるまでどれくらいかかったろうか。
人前に出るにあたり、一番怖かったのは身バレだ。ネットで僕を見た人に出会わないだろうか、逆に新しく出会った人に氏名で検索されて、残っているかもしれないアダルトサイトの画像にたどりつかれはしまいか。日々大量の情報が現れては消えていくネットのことに、神経質すぎだと笑われるかもしれない。でも、死にたいとは思わなくなったものの、あの時の恐怖はしっかり根付いていた。また偏見と悪意にさらされるのは恐ろしかったし、何よりもそうなった時に千春ばあちゃんに迷惑をかけたくなかった。ホモがいる店になんか行きたくない――残念ながら、そういう人たちがまだまだいるのが現実だ。
とにかく目立つ赤毛は――頭皮が弱く、染めるとかぶれるので――バンダナで覆い隠し、太くてごつい黒縁の眼鏡をかけて顔の印象を変えた。
苗字も母の旧姓の「境木」を名乗ったが、役所での手続きなどの関係で、のちに関東の外れに住む叔母――母の独身の妹に連絡を取り、事情を話した上で養子縁組してもらい、正式に改姓した。両親にはもちろん無断だ。それはそれは仲の悪い姉妹なので、叔母からバレることはないだろうが、知ったら怒るだろうか。それとも、不肖の息子がいなくなってせいせいするだろうか。彼らが僕の捜索願を出しているかどうかはわからないが、年に1度、生きていることを知らせるハガキを真夜中に実家の郵便受けに入れに行っている。自己満足にすぎないが、これがどうしようもない親不孝者のせめてもの償いだ。
これが僕、三沢悠人が境木悠人になった顛末だ。
改めて思い返すと、他に色々とやりようがあったのではと我ながら情けなくなる。人に言えない弱みがあったとはいえ、不甲斐ないにも程がある。
久我山さんはこんな僕をどう思っただろう。性癖で人を判断するようには見えないけれども、これで店に来てくれなくなったとしても仕方がない。短い間だったけれど、心にほんのり灯りがともる時間を与えてもらった。田嶋部長から守ってくれた。それで充分だ。
でも、もしもまだ通ってくれるなら......今度はもっと楽しい話をしたい。千春ばあちゃんとの思い出を聞いてもらいたい。どんな風に立ち直って今の自分があるのか知ってもらえたら......欲を張ってはバチが当たりそうだが、心からそう願って話を終えた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
そして、室内に沈黙が落ちた。
久我山さんは前かがみの姿勢で膝の上で手を組み、身じろぎもしない。もう殺気立ってはいないものの、僕を見つめる視線は険しいままだ。いたたまれなくなって、
「あの......今日はありがとうございました。もう帰りま......」
ソファから腰を浮かしかけると、手で制止された。
「悪い、少し待っていてくれるか」
久我山さんはそう言って立ち上がると、僕の後方にあるキッチンに向かった。
壁面に冷蔵庫や食器収納棚を巡らせて、水回りと作業スペースを独立させた、いわゆるアイランド型のキッチンで、高級感溢れる仕様なのは言うまでもなく、とにかく広い。キッチンだけでウチの店がすっぽり収まりそうだ。
冷蔵庫や棚を開けて何やら作業していたかと思うと、久我山さんは僕を手招きした。作業台の天面がリビング側に張り出していて飲食カウンターとして使えるようになっている。置いてあるスツールに座るよう促され、おずおず腰掛ける。いつもとは逆の立ち位置で何だか面映ゆい。
「俺は子供の頃、精神的に不安定になることがよくあって」
電子レンジを操作しながら、久我山さんが語りだした。
「アメリカの養親はいい人たちなんだが、壊滅的に料理が出来なくてな。朝はシリアル、学校に持たせるランチはパンにピーナッツバターやジャムを塗ったものとフルーツが丸ごと、晩は外食か調理済みの冷凍食品だった」
よくそんなにデカくなりましたね、とは思っても言わない。養親という言葉も引っかかったけれど黙って聞いている。
「でも、俺が不安で真っ青になって震えている夜には温かい飲み物を作って側にいてくれた」
レンジの終了音が鳴り、中から取り出されたものは。
「............カフェオレ......?」
作業台越しに置かれたのは、ほんの少しグレーがかった乳白色の陶器の椀。ぽってりとした厚みと丸みがあり、茶碗や味噌汁椀より大き目で、どんぶりよりは小さい。そんなサイズの椀――ボウルからほのかに立ち昇る湯気に、ミルクと少しビターなコーヒーの香りが合わさって鼻腔をくすぐってくる。
「小さな時はホットミルクだったけれど」
久我山さんが続ける。
「取っ手のついたコップの方が飲みやすいのにと文句を言ったら、『両手でくるみ込むようにしてゆっくり飲んでごらん。グラグラしているお胸が静かになるから』と。言われたようにしたら、確かに気持ちが落ち着くような感じがしてな。成長して安定するまでは度々これに世話になった」
手で促されて、目の前のボウルを両手の平ですくい上げるようにしてそっと持ち上げる。片手で重さのあるカップを持つ時と比べ、確かに胸がふっと安定する感覚に驚く。程よい温もりが手の平の皮膚を通して静かに沁み入ってくる。
「さっきの路地裏で、君の顔は白いのを通り越して真っ青になっていた」
ハッとして見上げると、久我山さんもじっと僕を見つめていた。いたわるような、気遣うような眼差しに落ち着いたはずの胸がまた少しざわめく。
「手も異様に冷たかったし、精神的にかなり追い詰められているんじゃないかと焦った。ここに来てからはマシになっていたんだが、話をしている内にまた顔色が悪くなってきて......何でも曖昧に終わらせることが出来ないのは俺の悪いクセだ。嫌なことを思い出させて済まなかった」
飲んで温まってくれと言われ、改めて口をつける。柔らかな厚みのあるボウルの飲み口が唇になじみ、飲み頃になったカフェオレが少しづつ流れ込んでくる。コーヒーの香ばしさと砂糖の甘みをミルクのコクが優しく包んで、渇いた喉を潤しながら落ちてゆく。
「コーヒーはカフェオレ用の濃縮リキッドだし、ミルクはスーパーで売っている普通の紙パックでそんな大層な味じゃないが」
さすがにボウルは使わないけれど、カフェオレはストレスが溜まるとたまに飲むんだ。少し照れながら久我山さんが言う。
「......いえ、美味しいです......すごく、美味しい......」
心の底からそう思った。
慰めや同情、励ましの言葉でなく、子供のころに受け取った愛情を分け与えようとしてくれるその気持ちが何よりも嬉しかった。
せっかくの甘味が塩辛くならないようにと思ったけれど、後から後からあふれてくる涙はなかなか止まってくれなくて、ちょっと困った。
(つづく)
ああ、いけない。田嶋部長のことを聞かれているだけだったのに、随分関係ないところまで話してしまった。夜も遅いのに、手短にしないと。
店の2階で死んだように眠るだけの毎日から、簡単な手伝いを始めてやがてはカウンターに立つようになるまでどれくらいかかったろうか。
人前に出るにあたり、一番怖かったのは身バレだ。ネットで僕を見た人に出会わないだろうか、逆に新しく出会った人に氏名で検索されて、残っているかもしれないアダルトサイトの画像にたどりつかれはしまいか。日々大量の情報が現れては消えていくネットのことに、神経質すぎだと笑われるかもしれない。でも、死にたいとは思わなくなったものの、あの時の恐怖はしっかり根付いていた。また偏見と悪意にさらされるのは恐ろしかったし、何よりもそうなった時に千春ばあちゃんに迷惑をかけたくなかった。ホモがいる店になんか行きたくない――残念ながら、そういう人たちがまだまだいるのが現実だ。
とにかく目立つ赤毛は――頭皮が弱く、染めるとかぶれるので――バンダナで覆い隠し、太くてごつい黒縁の眼鏡をかけて顔の印象を変えた。
苗字も母の旧姓の「境木」を名乗ったが、役所での手続きなどの関係で、のちに関東の外れに住む叔母――母の独身の妹に連絡を取り、事情を話した上で養子縁組してもらい、正式に改姓した。両親にはもちろん無断だ。それはそれは仲の悪い姉妹なので、叔母からバレることはないだろうが、知ったら怒るだろうか。それとも、不肖の息子がいなくなってせいせいするだろうか。彼らが僕の捜索願を出しているかどうかはわからないが、年に1度、生きていることを知らせるハガキを真夜中に実家の郵便受けに入れに行っている。自己満足にすぎないが、これがどうしようもない親不孝者のせめてもの償いだ。
これが僕、三沢悠人が境木悠人になった顛末だ。
改めて思い返すと、他に色々とやりようがあったのではと我ながら情けなくなる。人に言えない弱みがあったとはいえ、不甲斐ないにも程がある。
久我山さんはこんな僕をどう思っただろう。性癖で人を判断するようには見えないけれども、これで店に来てくれなくなったとしても仕方がない。短い間だったけれど、心にほんのり灯りがともる時間を与えてもらった。田嶋部長から守ってくれた。それで充分だ。
でも、もしもまだ通ってくれるなら......今度はもっと楽しい話をしたい。千春ばあちゃんとの思い出を聞いてもらいたい。どんな風に立ち直って今の自分があるのか知ってもらえたら......欲を張ってはバチが当たりそうだが、心からそう願って話を終えた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
そして、室内に沈黙が落ちた。
久我山さんは前かがみの姿勢で膝の上で手を組み、身じろぎもしない。もう殺気立ってはいないものの、僕を見つめる視線は険しいままだ。いたたまれなくなって、
「あの......今日はありがとうございました。もう帰りま......」
ソファから腰を浮かしかけると、手で制止された。
「悪い、少し待っていてくれるか」
久我山さんはそう言って立ち上がると、僕の後方にあるキッチンに向かった。
壁面に冷蔵庫や食器収納棚を巡らせて、水回りと作業スペースを独立させた、いわゆるアイランド型のキッチンで、高級感溢れる仕様なのは言うまでもなく、とにかく広い。キッチンだけでウチの店がすっぽり収まりそうだ。
冷蔵庫や棚を開けて何やら作業していたかと思うと、久我山さんは僕を手招きした。作業台の天面がリビング側に張り出していて飲食カウンターとして使えるようになっている。置いてあるスツールに座るよう促され、おずおず腰掛ける。いつもとは逆の立ち位置で何だか面映ゆい。
「俺は子供の頃、精神的に不安定になることがよくあって」
電子レンジを操作しながら、久我山さんが語りだした。
「アメリカの養親はいい人たちなんだが、壊滅的に料理が出来なくてな。朝はシリアル、学校に持たせるランチはパンにピーナッツバターやジャムを塗ったものとフルーツが丸ごと、晩は外食か調理済みの冷凍食品だった」
よくそんなにデカくなりましたね、とは思っても言わない。養親という言葉も引っかかったけれど黙って聞いている。
「でも、俺が不安で真っ青になって震えている夜には温かい飲み物を作って側にいてくれた」
レンジの終了音が鳴り、中から取り出されたものは。
「............カフェオレ......?」
作業台越しに置かれたのは、ほんの少しグレーがかった乳白色の陶器の椀。ぽってりとした厚みと丸みがあり、茶碗や味噌汁椀より大き目で、どんぶりよりは小さい。そんなサイズの椀――ボウルからほのかに立ち昇る湯気に、ミルクと少しビターなコーヒーの香りが合わさって鼻腔をくすぐってくる。
「小さな時はホットミルクだったけれど」
久我山さんが続ける。
「取っ手のついたコップの方が飲みやすいのにと文句を言ったら、『両手でくるみ込むようにしてゆっくり飲んでごらん。グラグラしているお胸が静かになるから』と。言われたようにしたら、確かに気持ちが落ち着くような感じがしてな。成長して安定するまでは度々これに世話になった」
手で促されて、目の前のボウルを両手の平ですくい上げるようにしてそっと持ち上げる。片手で重さのあるカップを持つ時と比べ、確かに胸がふっと安定する感覚に驚く。程よい温もりが手の平の皮膚を通して静かに沁み入ってくる。
「さっきの路地裏で、君の顔は白いのを通り越して真っ青になっていた」
ハッとして見上げると、久我山さんもじっと僕を見つめていた。いたわるような、気遣うような眼差しに落ち着いたはずの胸がまた少しざわめく。
「手も異様に冷たかったし、精神的にかなり追い詰められているんじゃないかと焦った。ここに来てからはマシになっていたんだが、話をしている内にまた顔色が悪くなってきて......何でも曖昧に終わらせることが出来ないのは俺の悪いクセだ。嫌なことを思い出させて済まなかった」
飲んで温まってくれと言われ、改めて口をつける。柔らかな厚みのあるボウルの飲み口が唇になじみ、飲み頃になったカフェオレが少しづつ流れ込んでくる。コーヒーの香ばしさと砂糖の甘みをミルクのコクが優しく包んで、渇いた喉を潤しながら落ちてゆく。
「コーヒーはカフェオレ用の濃縮リキッドだし、ミルクはスーパーで売っている普通の紙パックでそんな大層な味じゃないが」
さすがにボウルは使わないけれど、カフェオレはストレスが溜まるとたまに飲むんだ。少し照れながら久我山さんが言う。
「......いえ、美味しいです......すごく、美味しい......」
心の底からそう思った。
慰めや同情、励ましの言葉でなく、子供のころに受け取った愛情を分け与えようとしてくれるその気持ちが何よりも嬉しかった。
せっかくの甘味が塩辛くならないようにと思ったけれど、後から後からあふれてくる涙はなかなか止まってくれなくて、ちょっと困った。
(つづく)
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