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記憶の扉が開くとき・3 エリックが語る話
リョースケのこと?うん、知ってた。大学に入る、ずーっと前からね。ハルには話したけど、キミが通ってたカウンセラーのトム先生、ボクの大叔父でね......にらむなよ。だってキミ、最後の方は大叔父に不信感を持っていただろう?だから、赤の他人のフリした方がいいかなって思ったんだ。そうそう、大学が同じなのも、キミの進学予定先を大叔父に聞いて先回りしたから偶然じゃなくてね......違う、ストーカーじゃないって。ちゃんとした訳があるんだって......とりあえず説明させてよ。キミの過去につながる話だ。そうだな......まずはデボラ・レドメインのことから話そうか。ああ、キミの会社の大ボス、レドメイン&アルバホールディングスの会長サマさ......。
レドメインは歴史がある一族でね。まずは1人の野心的な男が家族を連れて、アメリカ建国期にイギリスだかスコットランドだかからやって来た。ヴァイキングの末裔とか貴族の血筋って噂もあるけど、そこんとこはハッキリしていない。でも、天賦の商才で瞬く間に富裕層の仲間入りを果たした。子沢山だったから血縁もどんどん広がってね。
そんな一族の人間は容姿にも恵まれていた。輝くブロンドにグリーン・アイズ、濁りのない白い肌......。映画俳優になった者もいれば、その美貌を見初められてどこかの王家に嫁いだ女性もいたらしい。政界入りした者も多く、そんなこんなで一族の人間は皆、祖先からの血を誇りにしてきた。若い時分からスーパーモデル顔負けの美貌を誇ったデボラ会長もその1人だ。
で、そのデボラの話だが、公式には娘が2人と発表しているけれど、実はその下にジョシュアという息子がいた。彼女は当時、副社長の座にあったが、息子が幼少の頃から将来会社を継がせるための帝王学を施す一方で、彼が希望することは何でもさせたし、惜しみなく与えた。一族の美貌と頭の良さを兼ね備えながら、いわゆる金持ちの道楽バカ息子にならなかったジョシュアを、デボラは奇跡の子供・一族の誉れと呼んで溺愛した。
そんな息子が成長し、何を思ったか日本の大学で文学を学びたいと言いだした時には、当然デボラ母は猛反対した。お前は一族の頂点に立つべき存在だ、経済経営関係の勉学をするべきで、黄色い猿(ゴメン)の文化など学ぶに値しないし無用だとね。口論と説得をお互いに繰り広げた挙げ句、結局は甘いんだよね、1年間の期限付きで日本に留学させることで妥協した。そこで日本人女性と恋に落ちることになるとは思いもせずに。
実は、このジョシュアが日本にいた頃の話はよく分からないんだ。訳あって情報が徹底して隠されていたからね。何とか調べがついたのは西日本の大学に留学したこと、観光ボランティアをしていた年上の女性と恋に落ちて、こっそり同棲していたことぐらいで。
とにかく、それを知ったデボラ母の怒りはもう大変だったらしい。当たり前だよね。送り出すのも嫌々だったのに、虫けら以下の有色人種(ゴメンて。)の女に、溺愛してやまない息子をたぶらかされたんだから。
たちどころに仕送りはストップし、ジョシュアはアメリカに連れ戻されてそのまま自宅軟禁のコンボ。失意の日々を過ごしていた彼はある時、隙を見て脱出、車に乗って逃走するも、ハンドル操作を誤って事故死するという顛末を迎える。人生を悲観した覚悟の自殺という説もあるけどね。
駆け足になったけど、これが序盤の出来事だ。まぁ何となく想像ついてると思うから先に言っちゃうけど、この悲劇のお坊っちゃま、ジョシュアがキミの実の父親だ、リョースケ。つまり、キミはデボラ会長の実の孫であり、レドメイン一族の人間なんだよ。ハイスクール時代のジョシュアの写真を見たことがあるけど、キミ、とても似ているよ。デボラ会長にもね。あれ、気が付かなかった?目元とか鼻の形とかさぁ......まあ、仕方ないかな。
(つづく)
レドメインは歴史がある一族でね。まずは1人の野心的な男が家族を連れて、アメリカ建国期にイギリスだかスコットランドだかからやって来た。ヴァイキングの末裔とか貴族の血筋って噂もあるけど、そこんとこはハッキリしていない。でも、天賦の商才で瞬く間に富裕層の仲間入りを果たした。子沢山だったから血縁もどんどん広がってね。
そんな一族の人間は容姿にも恵まれていた。輝くブロンドにグリーン・アイズ、濁りのない白い肌......。映画俳優になった者もいれば、その美貌を見初められてどこかの王家に嫁いだ女性もいたらしい。政界入りした者も多く、そんなこんなで一族の人間は皆、祖先からの血を誇りにしてきた。若い時分からスーパーモデル顔負けの美貌を誇ったデボラ会長もその1人だ。
で、そのデボラの話だが、公式には娘が2人と発表しているけれど、実はその下にジョシュアという息子がいた。彼女は当時、副社長の座にあったが、息子が幼少の頃から将来会社を継がせるための帝王学を施す一方で、彼が希望することは何でもさせたし、惜しみなく与えた。一族の美貌と頭の良さを兼ね備えながら、いわゆる金持ちの道楽バカ息子にならなかったジョシュアを、デボラは奇跡の子供・一族の誉れと呼んで溺愛した。
そんな息子が成長し、何を思ったか日本の大学で文学を学びたいと言いだした時には、当然デボラ母は猛反対した。お前は一族の頂点に立つべき存在だ、経済経営関係の勉学をするべきで、黄色い猿(ゴメン)の文化など学ぶに値しないし無用だとね。口論と説得をお互いに繰り広げた挙げ句、結局は甘いんだよね、1年間の期限付きで日本に留学させることで妥協した。そこで日本人女性と恋に落ちることになるとは思いもせずに。
実は、このジョシュアが日本にいた頃の話はよく分からないんだ。訳あって情報が徹底して隠されていたからね。何とか調べがついたのは西日本の大学に留学したこと、観光ボランティアをしていた年上の女性と恋に落ちて、こっそり同棲していたことぐらいで。
とにかく、それを知ったデボラ母の怒りはもう大変だったらしい。当たり前だよね。送り出すのも嫌々だったのに、虫けら以下の有色人種(ゴメンて。)の女に、溺愛してやまない息子をたぶらかされたんだから。
たちどころに仕送りはストップし、ジョシュアはアメリカに連れ戻されてそのまま自宅軟禁のコンボ。失意の日々を過ごしていた彼はある時、隙を見て脱出、車に乗って逃走するも、ハンドル操作を誤って事故死するという顛末を迎える。人生を悲観した覚悟の自殺という説もあるけどね。
駆け足になったけど、これが序盤の出来事だ。まぁ何となく想像ついてると思うから先に言っちゃうけど、この悲劇のお坊っちゃま、ジョシュアがキミの実の父親だ、リョースケ。つまり、キミはデボラ会長の実の孫であり、レドメイン一族の人間なんだよ。ハイスクール時代のジョシュアの写真を見たことがあるけど、キミ、とても似ているよ。デボラ会長にもね。あれ、気が付かなかった?目元とか鼻の形とかさぁ......まあ、仕方ないかな。
(つづく)
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