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最終話 祝福
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※エロあり
悪魔の養分は人間の負の感情だ。リアムは悪魔になってから、以前はエイジュンがどう思うかと歯止めが効いていた嗜虐心が抑えきれなくなっている。これは生きるための本能だろう。悪魔の王として生きていくのだから、抑える必要はない。悪魔たちは命じたわけでもないのに自然とリアムのことを「魔王様」と呼ぶ。リアムはとりあえず国の中枢を支配することにした。国王含め宰相や主要大臣たちを悪魔にして、国民を生かぬように殺さぬように痛めつける方法を考えさせて全て実行させた。
リアムはエイジュンを探すことはしなかった。エイジュンがどうでも良くなったわけではない。逆だった。探して目の前に連れて来させたとして、それはリアムが愛したエイジュンではなく、リアムを捨てたエイジュンだ。それを目の当たりにして、自分がどうなってしまうか想像がつかないのが恐ろしかった。発狂してなにかもを壊しつくして、エイジュンを永遠に失って……、そうなった時自分は魔王を超える悍ましいナニカになっている予感がした。
捜さなければ会うこともない。エイジュンを求める欲求を忘れる努力をした。
ある日、リアムが根城にしている王家の別荘に下級悪魔が侵入したという報告を受けた。生命の宿るものは何もかも悪魔化させて思い通りに動かせる力を持ったリアムだったが、リアムが悪魔化させたわけではない野良の悪魔がごく少数いるらしいとは知っていた。神話の時代の悪魔の生き残りらしいが、全て大して力もない下級悪魔だからと歯牙にもかけていなかった。
しかし魔王になって一ヶ月弱、早々にリアムは飽きていた。人間は家畜的な感覚で、自分で悪魔にしたものは思い通りに動くのでつまらない。向こうから飛び込んできた自分の管理化にない下級悪魔はいいおもちゃになるだろう。どうやってで遊ぼうか考えながら謁見室に引き出すように命じた。その時のリアムは、その下級悪魔が自分の知っている人物かもしれないなどとは微塵も思っていなかった。
国王の別荘であるこの屋敷の閲覧室は悪趣味に豪華でだだっ広い。その中心に跪いていたのは、リアムが一番会いたくて、絶対に会いたくないエイジュンだった。
「リアム、久しぶり」
少し緊張したふうなエイジュンは、一見全く変わっていないように見えた。だが、いまのリアムには視覚とは違う感覚で分かってしまう。エイジュンは人間ではない。淫魔になっていた。
よりにもよって、自分でない悪魔の手によってその身を堕としていた。悪魔崇拝の女と駆け落ちしたとは聞いたが、まさかあのエイジュンが人間を止めるほどの思いだったとは。
リアムは配下の悪魔によって跪かされていたエイジュンに近づき見下ろす。怒りというには冷たく、失望と言うには熱い感情が全身を支配していた。
エイジュンの小さな顎を乱暴に掴み引き寄せる。
「淫魔になりたくて俺のこと捨てたんだ?言ってくれたらそんなエッチな望み、俺が叶えてあげたのに」
リアムは自分の頬が引き攣っているのを感じた。自身の邪悪な笑みがエイジュンの瞳に映り込んでいる。エイジュンが何かを言おうとしたが、顎を掴んでいた手に力を込めて止める。
開けたままの状態になった口の端から溢れたエイジュンの唾液がリアムの手を濡らす。ずっと自分なんかが欲を持って触れちゃいけない人だと思ってた。それが淫魔に堕ちて自分の前で物欲しげに涎を垂らしている。
倒錯した欲求が電流のように背筋を走る。
配下の悪魔を排除して、だだっ広い謁見室には二人きりだ。配下たちは人間のように余計なお喋りもせず黙々と命じたことをやるので外からの音もない。
世界に二人きりになったような気分だ。
「リアム、話をっ」
顎から手を離した隙にエイジュンが話し始めるが、自身のベルトを引き抜いて猿轡代わりに噛ませて言葉を封じる。
エイジュンが言うことなんて何も聞きたくなかった。今だけは一緒に暮らしていた頃の『リアムだけのエイジュン』を自分のものにしているという錯覚をしたいのだ。
仰向けに押し倒して服をはだけさせる。配下の悪魔が両手を後ろ手に縛っていたせいで腕に全体重がかかって痛そうだと思ったが、そのままシャツはボタンを全て外して下半身からは全て衣を剥ぎ取る。
エイジュンが淫魔となってどれくらいなのだろうか。身体は一見、未通なように綺麗だった。悪魔の回復力によるかもしれないが、今は考えない。リアムの前にいるのは、昔と変わらない純真で善良なエイジュンだ。そう思い込むことにした。
「ぅん……ぁ」
胸の飾りを弄ると噛ませたベルトの隙間から小さく声が漏れる。先ほどまでの抗議を示すような呻きと違って色を感じる吐息だ。指はそのまま敏感な部分を嬲りながら、エイジュンの首筋に顔を埋める。パンケーキの匂いがした気がして、腹の奥がギュッと締め付けられた。一瞬、何かモヤが晴れたような気がして顔を上げた。
だが、その時エイジュンの下半身が反応しているのが目に入り、すぐにまたリアムは苛立ちに支配された。エイジュンがこれくらいの刺激で感じる身体であることが、リアムにとってとても不快な事実を暗示している。それから、濡れた穴に指を差し込んだ時には、一瞬思い出したエイジュンへの優しい気持ちは無くなっていた。
このまま壊してしまいたい。
いや、まだまだ、リアムの心と同じだけ傷付けたい。
そんな気持ちがグルグルと渦巻いていた。雑に馴らして自身を突っ込んでからはただ衝動に身を任せた。
何度目か果てたとき、リアムはスッと悪夢から目が覚めたように激情が収まっていた。搔き抱いていたエイジュンのかすかな吐息を首筋に感じる。
いま、エイジュンはどんな表情をしているだろうか。泣いているのか、淫魔らしく快感を悦んでいるのか。
エイジュンの顔を見たくなくて抱きしめたままのリアムの頭に暖かい手が触れた。ハッとしてエイジュンを見る。エイジュンの腕を縛っていた紐が解けたようでワシャワシャとリアムの頭を撫でていた。
気付くと、リアムの左目から涙が流れていた。
人生で初めて流した涙だ。
リアムは覚悟を決めて、エイジュンから身を離し、口を縛っていたベルトを外す。何を言われても真摯に受け止めようとエイジュンを見つめる。しばらく咳き込んでいたエイジュンが口元を拭って口を開く。
「った、……た、高そうなベルトがべちゃべちゃになっちゃったね」
「……は?」
口汚く詰られるものと思っていたのが、子供の頃一緒に泥遊びをして服を汚した時と同じような口調のエイジュンにリアムは思わず間抜けな声が出た。
「あはは、そんな顔しないでよ。とりあえず、僕の話聞いてくれる気になった?」
不思議と魔王となった日からずっと心の中を渦巻いていた嵐は、吹き止んでいた。
・・・・・
話を聞いてほしいというエイジュンが何を言うのかと思えば、自分より詳しい人がいるからもう少し待てと言われた。服を着たエイジュンが何かの合図をしてしばらくするとシラホシがやってきた。
「えーっとですね。つまりは愛の力ってことです」
ビクビクした様子のシラホシがそんなことを言い出した。意味がわからず眉を顰めるリアムにシラホシはヒッと小さな声を出したが、エイジュンに宥められて咳払いをしてから話を続けた。
「悪魔の支配する世界を求めた下級悪魔の策略のせいであなたは魔王になってしまいました。悪魔は人間の負の感情が養分なので生存本能で人を痛めつけるようになってるんですが、心からそれを願っているわけでないなら、あなたが生きていくために必要なものを変えればいいと考えました。生存に必要でなくなれば、人間を嬲りたい欲求は無くなるかもしれないと」
「リアムが本心から人間を痛めつけたいわけじゃないって、僕は信じてたよ」
エイジュンはニッコリ笑顔でリアムを見る。さっきまでの行為はまるでなかったかのような晴天の笑みだ。ただ、よれたシャツから覗く首筋にはリアムがつけた跡が見えてそのアンバランスさに妙に色気がある。エイジュンへの申し訳なさと気恥ずかしさでリアムは目を逸らしてシラホシを見る。
「えー、白魔法でですね。真に思い合う二人を繋げるというものがありまして、それの応用ですね。お二人とも悪魔だからできることですが、いまの二人はお互いがお互いの養分状態です。ヤルことヤッタんですよね。それが儀式の代わりです。今のリアムさんの状態から見て、成功したみたいですね」
リアムの様子を伺っていたシラホシは何かに安心したかのようで先ほどまでの怯えが少し引いたようだ。
「だが、いいのか?俺は人間を悪魔にする能力は持ったままだし、悪魔化した奴らは戻せないだろ」
「そのことに罪悪感があるんですか。わー、『ほんとはいい人』って本当だったんですね」
いい人の基準はそれでいいのか?とリアムは思ったが、エイジュンはシラホシの言葉に満足げに頷いている。
「うーん、悪魔になっているのは、あの街の人間と国の上層部だけですから最小限かと。現状人間が悪魔に勝てる見込みがないんで、国中の人間を虐殺させようとか思われたら話は別ですけど、そうじゃないならもう二人の世界にいてください。だいたい、悪魔と人間って別種族ですからね。人間の理論で悪魔を裁くのもどうかと思うんですよ。おれだって牛さん豚さんを家畜にして殺して命を食べてるんですけど、牛さん豚さんに怒られたら困るんで。お互い様です」
面倒ごとを隠すかのようにシラホシは捲し立てた。リアムにとって都合がいい内容だし、聖職者が言うならそれでいいのだろうとその言葉を受け入れることにした。
「それより、もっと喜んでくださいよ。あなたが心から求めてるのがエイジュンさんだけで、エイジュンさんもまたあなたを心から愛してることがこれで証明されたわけです。おめでとうございます!結婚式でもします?おれ一応司祭の資格持ってますよ!!」
シラホシは「おめでとう!ハッピーエンド!!ばんざーい」と一人で手を挙げて喜びはじめた。当初ビクビクしていたのはどうしたのか、急にハイテンションになっている。色々と気になっていることはまだあるのだが、聞ける雰囲気ではない。
エイジュンもシラホシのテンションについていけてないようだ。戸惑った顔のエイジュンと目が合うと、同じように困惑したリアムの顔を見て吹き出した。
細かいことは、どうでもいいか。
リアムは、エイジュンが笑っていればそれでいい。
エイジュンに釣られてリアムも笑ってしまった。魔王の根城に二人の笑い声が響く。
悪魔の養分は人間の負の感情だ。リアムは悪魔になってから、以前はエイジュンがどう思うかと歯止めが効いていた嗜虐心が抑えきれなくなっている。これは生きるための本能だろう。悪魔の王として生きていくのだから、抑える必要はない。悪魔たちは命じたわけでもないのに自然とリアムのことを「魔王様」と呼ぶ。リアムはとりあえず国の中枢を支配することにした。国王含め宰相や主要大臣たちを悪魔にして、国民を生かぬように殺さぬように痛めつける方法を考えさせて全て実行させた。
リアムはエイジュンを探すことはしなかった。エイジュンがどうでも良くなったわけではない。逆だった。探して目の前に連れて来させたとして、それはリアムが愛したエイジュンではなく、リアムを捨てたエイジュンだ。それを目の当たりにして、自分がどうなってしまうか想像がつかないのが恐ろしかった。発狂してなにかもを壊しつくして、エイジュンを永遠に失って……、そうなった時自分は魔王を超える悍ましいナニカになっている予感がした。
捜さなければ会うこともない。エイジュンを求める欲求を忘れる努力をした。
ある日、リアムが根城にしている王家の別荘に下級悪魔が侵入したという報告を受けた。生命の宿るものは何もかも悪魔化させて思い通りに動かせる力を持ったリアムだったが、リアムが悪魔化させたわけではない野良の悪魔がごく少数いるらしいとは知っていた。神話の時代の悪魔の生き残りらしいが、全て大して力もない下級悪魔だからと歯牙にもかけていなかった。
しかし魔王になって一ヶ月弱、早々にリアムは飽きていた。人間は家畜的な感覚で、自分で悪魔にしたものは思い通りに動くのでつまらない。向こうから飛び込んできた自分の管理化にない下級悪魔はいいおもちゃになるだろう。どうやってで遊ぼうか考えながら謁見室に引き出すように命じた。その時のリアムは、その下級悪魔が自分の知っている人物かもしれないなどとは微塵も思っていなかった。
国王の別荘であるこの屋敷の閲覧室は悪趣味に豪華でだだっ広い。その中心に跪いていたのは、リアムが一番会いたくて、絶対に会いたくないエイジュンだった。
「リアム、久しぶり」
少し緊張したふうなエイジュンは、一見全く変わっていないように見えた。だが、いまのリアムには視覚とは違う感覚で分かってしまう。エイジュンは人間ではない。淫魔になっていた。
よりにもよって、自分でない悪魔の手によってその身を堕としていた。悪魔崇拝の女と駆け落ちしたとは聞いたが、まさかあのエイジュンが人間を止めるほどの思いだったとは。
リアムは配下の悪魔によって跪かされていたエイジュンに近づき見下ろす。怒りというには冷たく、失望と言うには熱い感情が全身を支配していた。
エイジュンの小さな顎を乱暴に掴み引き寄せる。
「淫魔になりたくて俺のこと捨てたんだ?言ってくれたらそんなエッチな望み、俺が叶えてあげたのに」
リアムは自分の頬が引き攣っているのを感じた。自身の邪悪な笑みがエイジュンの瞳に映り込んでいる。エイジュンが何かを言おうとしたが、顎を掴んでいた手に力を込めて止める。
開けたままの状態になった口の端から溢れたエイジュンの唾液がリアムの手を濡らす。ずっと自分なんかが欲を持って触れちゃいけない人だと思ってた。それが淫魔に堕ちて自分の前で物欲しげに涎を垂らしている。
倒錯した欲求が電流のように背筋を走る。
配下の悪魔を排除して、だだっ広い謁見室には二人きりだ。配下たちは人間のように余計なお喋りもせず黙々と命じたことをやるので外からの音もない。
世界に二人きりになったような気分だ。
「リアム、話をっ」
顎から手を離した隙にエイジュンが話し始めるが、自身のベルトを引き抜いて猿轡代わりに噛ませて言葉を封じる。
エイジュンが言うことなんて何も聞きたくなかった。今だけは一緒に暮らしていた頃の『リアムだけのエイジュン』を自分のものにしているという錯覚をしたいのだ。
仰向けに押し倒して服をはだけさせる。配下の悪魔が両手を後ろ手に縛っていたせいで腕に全体重がかかって痛そうだと思ったが、そのままシャツはボタンを全て外して下半身からは全て衣を剥ぎ取る。
エイジュンが淫魔となってどれくらいなのだろうか。身体は一見、未通なように綺麗だった。悪魔の回復力によるかもしれないが、今は考えない。リアムの前にいるのは、昔と変わらない純真で善良なエイジュンだ。そう思い込むことにした。
「ぅん……ぁ」
胸の飾りを弄ると噛ませたベルトの隙間から小さく声が漏れる。先ほどまでの抗議を示すような呻きと違って色を感じる吐息だ。指はそのまま敏感な部分を嬲りながら、エイジュンの首筋に顔を埋める。パンケーキの匂いがした気がして、腹の奥がギュッと締め付けられた。一瞬、何かモヤが晴れたような気がして顔を上げた。
だが、その時エイジュンの下半身が反応しているのが目に入り、すぐにまたリアムは苛立ちに支配された。エイジュンがこれくらいの刺激で感じる身体であることが、リアムにとってとても不快な事実を暗示している。それから、濡れた穴に指を差し込んだ時には、一瞬思い出したエイジュンへの優しい気持ちは無くなっていた。
このまま壊してしまいたい。
いや、まだまだ、リアムの心と同じだけ傷付けたい。
そんな気持ちがグルグルと渦巻いていた。雑に馴らして自身を突っ込んでからはただ衝動に身を任せた。
何度目か果てたとき、リアムはスッと悪夢から目が覚めたように激情が収まっていた。搔き抱いていたエイジュンのかすかな吐息を首筋に感じる。
いま、エイジュンはどんな表情をしているだろうか。泣いているのか、淫魔らしく快感を悦んでいるのか。
エイジュンの顔を見たくなくて抱きしめたままのリアムの頭に暖かい手が触れた。ハッとしてエイジュンを見る。エイジュンの腕を縛っていた紐が解けたようでワシャワシャとリアムの頭を撫でていた。
気付くと、リアムの左目から涙が流れていた。
人生で初めて流した涙だ。
リアムは覚悟を決めて、エイジュンから身を離し、口を縛っていたベルトを外す。何を言われても真摯に受け止めようとエイジュンを見つめる。しばらく咳き込んでいたエイジュンが口元を拭って口を開く。
「った、……た、高そうなベルトがべちゃべちゃになっちゃったね」
「……は?」
口汚く詰られるものと思っていたのが、子供の頃一緒に泥遊びをして服を汚した時と同じような口調のエイジュンにリアムは思わず間抜けな声が出た。
「あはは、そんな顔しないでよ。とりあえず、僕の話聞いてくれる気になった?」
不思議と魔王となった日からずっと心の中を渦巻いていた嵐は、吹き止んでいた。
・・・・・
話を聞いてほしいというエイジュンが何を言うのかと思えば、自分より詳しい人がいるからもう少し待てと言われた。服を着たエイジュンが何かの合図をしてしばらくするとシラホシがやってきた。
「えーっとですね。つまりは愛の力ってことです」
ビクビクした様子のシラホシがそんなことを言い出した。意味がわからず眉を顰めるリアムにシラホシはヒッと小さな声を出したが、エイジュンに宥められて咳払いをしてから話を続けた。
「悪魔の支配する世界を求めた下級悪魔の策略のせいであなたは魔王になってしまいました。悪魔は人間の負の感情が養分なので生存本能で人を痛めつけるようになってるんですが、心からそれを願っているわけでないなら、あなたが生きていくために必要なものを変えればいいと考えました。生存に必要でなくなれば、人間を嬲りたい欲求は無くなるかもしれないと」
「リアムが本心から人間を痛めつけたいわけじゃないって、僕は信じてたよ」
エイジュンはニッコリ笑顔でリアムを見る。さっきまでの行為はまるでなかったかのような晴天の笑みだ。ただ、よれたシャツから覗く首筋にはリアムがつけた跡が見えてそのアンバランスさに妙に色気がある。エイジュンへの申し訳なさと気恥ずかしさでリアムは目を逸らしてシラホシを見る。
「えー、白魔法でですね。真に思い合う二人を繋げるというものがありまして、それの応用ですね。お二人とも悪魔だからできることですが、いまの二人はお互いがお互いの養分状態です。ヤルことヤッタんですよね。それが儀式の代わりです。今のリアムさんの状態から見て、成功したみたいですね」
リアムの様子を伺っていたシラホシは何かに安心したかのようで先ほどまでの怯えが少し引いたようだ。
「だが、いいのか?俺は人間を悪魔にする能力は持ったままだし、悪魔化した奴らは戻せないだろ」
「そのことに罪悪感があるんですか。わー、『ほんとはいい人』って本当だったんですね」
いい人の基準はそれでいいのか?とリアムは思ったが、エイジュンはシラホシの言葉に満足げに頷いている。
「うーん、悪魔になっているのは、あの街の人間と国の上層部だけですから最小限かと。現状人間が悪魔に勝てる見込みがないんで、国中の人間を虐殺させようとか思われたら話は別ですけど、そうじゃないならもう二人の世界にいてください。だいたい、悪魔と人間って別種族ですからね。人間の理論で悪魔を裁くのもどうかと思うんですよ。おれだって牛さん豚さんを家畜にして殺して命を食べてるんですけど、牛さん豚さんに怒られたら困るんで。お互い様です」
面倒ごとを隠すかのようにシラホシは捲し立てた。リアムにとって都合がいい内容だし、聖職者が言うならそれでいいのだろうとその言葉を受け入れることにした。
「それより、もっと喜んでくださいよ。あなたが心から求めてるのがエイジュンさんだけで、エイジュンさんもまたあなたを心から愛してることがこれで証明されたわけです。おめでとうございます!結婚式でもします?おれ一応司祭の資格持ってますよ!!」
シラホシは「おめでとう!ハッピーエンド!!ばんざーい」と一人で手を挙げて喜びはじめた。当初ビクビクしていたのはどうしたのか、急にハイテンションになっている。色々と気になっていることはまだあるのだが、聞ける雰囲気ではない。
エイジュンもシラホシのテンションについていけてないようだ。戸惑った顔のエイジュンと目が合うと、同じように困惑したリアムの顔を見て吹き出した。
細かいことは、どうでもいいか。
リアムは、エイジュンが笑っていればそれでいい。
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