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同じて和せず-7
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『まず、会長。皇礼斗』
ちらと視線をやると、皇は頬杖をついてぼんやり窓の外を見ていた。
『副会長、水無月累。書記、汐見大河。会計、真柴理仁。庶務、園部蘭、園部蓮』
呼ばれた人物と役職を思い浮かべて隣に並べてみる。なるほど確かに、会計以外はイメージとぴったりかもしれない。
以上、と締めくくられてざわめき出した電話の向こうから、永瀬の声がする。
『役職はこんな感じ。ちゃんと聞こえた?』
「大丈夫っす。ありがとうございます」
『しばらくは引き継ぎとかで放課後集まることになるけど、なにか予定があったりしたら遠慮なく言ってくれて構わないからな』
「わかりました」
『じゃあ、また明日』
「はい」
最後にふっと微笑むような吐息が聞こえて、電話はぷつりと切れた。
「ありがとうございました」
借りていたスマホを差し出すと、皇はああ、だかおう、だか曖昧な返事をして受け取った。それをポケットにしまうのを見届けてから、あの、と声をかける。
「生徒会とか中学の時も経験ないんで、上手くできるかわからないですけど、よろしくお願いします」
言いながら軽く頭を下げると、皇は目を細めて視線を滑らせる。それこそ、頭のてっぺんから足の先まで観察するように。先ほどまでは他に意識がいっていたのでほとんど感じていなかったのだが、イケメンの無表情というのはなかなかに圧が強い。はっきりした目鼻立ちだからか、それが余計に際立って少したじろぐ。
「お前、外部生なんだってな」
「は、はい」
誰が見たって緊張しているとわかるだろうオレの様子を見て、ふうんと軽い相槌を打つ。
「仕事に関しては別に期待しちゃいない。やれることをやればいい。できなきゃ誰かがやる。それだけだ」
「いやでも、それだと迷惑がかかるじゃないすか」
「そう思うなら頑張ればいいんじゃないか?」
「……それはそう、ですけど」
随分簡単に言うな、と思う。その能力を持っているからこその言葉なのか、単純にどうでもいいことだと思っているのか。彼のことを全く知らない自分には、判断がつかない。
いまいち釈然としないまま、でも返せる言葉もなく立ち尽くしているオレを尻目に、皇はあくびをしながら席を立った。緩慢な動作で傍らの鞄を肩にかけると、そのまま歩き出す。
「ま、頑張れ」
すれ違いざま、温度のない言葉を残してひらりと手を振る後ろ姿は、それきりなにも言うことなく教室を出て行った。
「はー…………」
皇の足音が聞こえなくなってから、深いため息をつく。白鷺の話を聞いてからそれなりに覚悟はしていたつもりだったけれど、想定以上……というよりも実際に接してみて初めて理解ができたというべきか。
とりあえず、会計の先輩にあたる永瀬は面倒見がいい優しそうな人だし、水無月を始めとした新メンバーは付き合いやすそうで全体の雰囲気は悪くないと思う。会長を除けば。
新旧生徒会長はベクトルの違う掴みにくさのある二人だ。考えていることが分かりにくい上に、それをよしとする我が道を行くタイプ。どちらも独特の雰囲気を持っているので、少し踏み込みづらいというところも同じだ。
今まで身近にいなかったタイプだから、距離の取り方が難しくて余計にそう感じるのかもしれない。
それならどうすべきか、なんて答えは簡単だ。幸田はともかく、皇はこれから一緒に活動をしていくことになるのだから。
心の中で気合を入れて、教室を後にする。時間を確認すれば最終下校時刻までは随分余裕があったので、部活には問題なく参加できそうだ。どんな様子だろうかとバンドメンバーのグループチャットに連絡しようとしたところで、鞄を生徒会室に置いてきたことを思い出してため息をついた。せめて汐見とは連絡先を交換しておくんだった。
なんだか今日はため息ばかりついているな、とぼんやり思いながら急ぎ足で西館へと向かうのだった。
ちらと視線をやると、皇は頬杖をついてぼんやり窓の外を見ていた。
『副会長、水無月累。書記、汐見大河。会計、真柴理仁。庶務、園部蘭、園部蓮』
呼ばれた人物と役職を思い浮かべて隣に並べてみる。なるほど確かに、会計以外はイメージとぴったりかもしれない。
以上、と締めくくられてざわめき出した電話の向こうから、永瀬の声がする。
『役職はこんな感じ。ちゃんと聞こえた?』
「大丈夫っす。ありがとうございます」
『しばらくは引き継ぎとかで放課後集まることになるけど、なにか予定があったりしたら遠慮なく言ってくれて構わないからな』
「わかりました」
『じゃあ、また明日』
「はい」
最後にふっと微笑むような吐息が聞こえて、電話はぷつりと切れた。
「ありがとうございました」
借りていたスマホを差し出すと、皇はああ、だかおう、だか曖昧な返事をして受け取った。それをポケットにしまうのを見届けてから、あの、と声をかける。
「生徒会とか中学の時も経験ないんで、上手くできるかわからないですけど、よろしくお願いします」
言いながら軽く頭を下げると、皇は目を細めて視線を滑らせる。それこそ、頭のてっぺんから足の先まで観察するように。先ほどまでは他に意識がいっていたのでほとんど感じていなかったのだが、イケメンの無表情というのはなかなかに圧が強い。はっきりした目鼻立ちだからか、それが余計に際立って少したじろぐ。
「お前、外部生なんだってな」
「は、はい」
誰が見たって緊張しているとわかるだろうオレの様子を見て、ふうんと軽い相槌を打つ。
「仕事に関しては別に期待しちゃいない。やれることをやればいい。できなきゃ誰かがやる。それだけだ」
「いやでも、それだと迷惑がかかるじゃないすか」
「そう思うなら頑張ればいいんじゃないか?」
「……それはそう、ですけど」
随分簡単に言うな、と思う。その能力を持っているからこその言葉なのか、単純にどうでもいいことだと思っているのか。彼のことを全く知らない自分には、判断がつかない。
いまいち釈然としないまま、でも返せる言葉もなく立ち尽くしているオレを尻目に、皇はあくびをしながら席を立った。緩慢な動作で傍らの鞄を肩にかけると、そのまま歩き出す。
「ま、頑張れ」
すれ違いざま、温度のない言葉を残してひらりと手を振る後ろ姿は、それきりなにも言うことなく教室を出て行った。
「はー…………」
皇の足音が聞こえなくなってから、深いため息をつく。白鷺の話を聞いてからそれなりに覚悟はしていたつもりだったけれど、想定以上……というよりも実際に接してみて初めて理解ができたというべきか。
とりあえず、会計の先輩にあたる永瀬は面倒見がいい優しそうな人だし、水無月を始めとした新メンバーは付き合いやすそうで全体の雰囲気は悪くないと思う。会長を除けば。
新旧生徒会長はベクトルの違う掴みにくさのある二人だ。考えていることが分かりにくい上に、それをよしとする我が道を行くタイプ。どちらも独特の雰囲気を持っているので、少し踏み込みづらいというところも同じだ。
今まで身近にいなかったタイプだから、距離の取り方が難しくて余計にそう感じるのかもしれない。
それならどうすべきか、なんて答えは簡単だ。幸田はともかく、皇はこれから一緒に活動をしていくことになるのだから。
心の中で気合を入れて、教室を後にする。時間を確認すれば最終下校時刻までは随分余裕があったので、部活には問題なく参加できそうだ。どんな様子だろうかとバンドメンバーのグループチャットに連絡しようとしたところで、鞄を生徒会室に置いてきたことを思い出してため息をついた。せめて汐見とは連絡先を交換しておくんだった。
なんだか今日はため息ばかりついているな、とぼんやり思いながら急ぎ足で西館へと向かうのだった。
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