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窓から槍-1
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「——以上が、来季からの生徒会役員になります。改めて案内がありますが、次期生徒会役員は来週火曜日の放課後、西館五階にある生徒会室に集まってください」
生徒会長幸田征之の落ち着いた声が、マイクを通して小ホール全体に響く。
現生徒会が任期を終え、選挙で選ばれた新生徒会がその仕事を引き継ぐ。そのメンバーの名前を、幸田は発表していた。
だからきっと、あれは聞き間違いだ。先ほど彼の口から『真柴理仁』と聞こえた気がしたのは。だって、自分が生徒会役員に選ばれるわけがない。生徒会は、この学校の代表。学校の顔だ。オレみたいな特別人望のない、頭だって大して良くない人間が選ばれるはずがないのだ。そもそもこれは投票で決まるもので——
くい、と袖を引かれて振り返ると、友人の結城湊と虎岩辰巳が心配そうに顔を覗き込んでいた。
それに気がついたのと同時に、無意識に遮断していた聴覚が戻ってくる。ざわつく周囲の雰囲気についていけず二人の顔を見れば、湊が「ごめん」と呟くように言った。辰巳はそんな湊の肩に手を置いて、困ったように眉を下げている。袖を握りしめる湊の手は、白くなるほど力が込められていた。
そうしてようやく、同級生たちのどこか興奮したような熱気の中心が自分であることに気がつく。
生徒会長は確かに、ステージの上でマイクを通し次期生徒会役員として、オレの名前を読み上げたのだ。
「俺っ、まさか本当に選ばれると思ってなくて……っ」
今にも破裂するんじゃないかと思うほど体中に力が入っている湊の肩をゆっくり撫でる。内心では動揺しきりだが、人間というのは自分以上に取り乱している人が目の前にいると冷静になれるものらしい。
「落ち着けって。大丈夫だよ」
「でも、理仁……、理仁ならって思ったけど、でも……っ」
「何をそんなに慌ててんだよ。その感じだと、オレに投票したんだろ?」
こくこくと何度も頷く湊にふっと小さく笑う。
「それはすげー嬉しいよ。なんつーか、結構信頼? されてんのかなって」
「それは、そう……だけど……。理仁はいいの? 今知らされた、よね? 多分……」
「んー、それはそうだけど。でもま、なんとかなるって」
湊に、というよりも自分自身に言い聞かせるように努めて明るく笑っていると、湊の手からゆっくりと力が抜けていくのを感じてホッと息をつく。
「それに、湊だけのせいじゃないよ」
黙ってオレたちを見ていた辰巳が言う。
「俺も理仁に入れたしね」
「え、マジで?」
「マジで」
仲のいい友人二人から意外な形で信頼を示されて、嬉しいやら気恥ずかしいやら、むず痒い気持ちになりながら頬をかく。
オレに生徒会役員が務まるのかと言われるとあまり自信はないが、既に決まったものは仕方がない。ただできることをやるまでだ。
生徒会役員選挙について知った時は、こんなことになるなんて夢にも思わなかった。もしも時間を遡れるなら、あの時の自分に『心の準備はしておけ』と言っておきたい。
とりあえず、これからのことは明日以降の自分に任せることにして。せめて今だけはこの先あるかもしれない苦労について、考えることを後回しにしてもいいだろうか。
生徒会長幸田征之の落ち着いた声が、マイクを通して小ホール全体に響く。
現生徒会が任期を終え、選挙で選ばれた新生徒会がその仕事を引き継ぐ。そのメンバーの名前を、幸田は発表していた。
だからきっと、あれは聞き間違いだ。先ほど彼の口から『真柴理仁』と聞こえた気がしたのは。だって、自分が生徒会役員に選ばれるわけがない。生徒会は、この学校の代表。学校の顔だ。オレみたいな特別人望のない、頭だって大して良くない人間が選ばれるはずがないのだ。そもそもこれは投票で決まるもので——
くい、と袖を引かれて振り返ると、友人の結城湊と虎岩辰巳が心配そうに顔を覗き込んでいた。
それに気がついたのと同時に、無意識に遮断していた聴覚が戻ってくる。ざわつく周囲の雰囲気についていけず二人の顔を見れば、湊が「ごめん」と呟くように言った。辰巳はそんな湊の肩に手を置いて、困ったように眉を下げている。袖を握りしめる湊の手は、白くなるほど力が込められていた。
そうしてようやく、同級生たちのどこか興奮したような熱気の中心が自分であることに気がつく。
生徒会長は確かに、ステージの上でマイクを通し次期生徒会役員として、オレの名前を読み上げたのだ。
「俺っ、まさか本当に選ばれると思ってなくて……っ」
今にも破裂するんじゃないかと思うほど体中に力が入っている湊の肩をゆっくり撫でる。内心では動揺しきりだが、人間というのは自分以上に取り乱している人が目の前にいると冷静になれるものらしい。
「落ち着けって。大丈夫だよ」
「でも、理仁……、理仁ならって思ったけど、でも……っ」
「何をそんなに慌ててんだよ。その感じだと、オレに投票したんだろ?」
こくこくと何度も頷く湊にふっと小さく笑う。
「それはすげー嬉しいよ。なんつーか、結構信頼? されてんのかなって」
「それは、そう……だけど……。理仁はいいの? 今知らされた、よね? 多分……」
「んー、それはそうだけど。でもま、なんとかなるって」
湊に、というよりも自分自身に言い聞かせるように努めて明るく笑っていると、湊の手からゆっくりと力が抜けていくのを感じてホッと息をつく。
「それに、湊だけのせいじゃないよ」
黙ってオレたちを見ていた辰巳が言う。
「俺も理仁に入れたしね」
「え、マジで?」
「マジで」
仲のいい友人二人から意外な形で信頼を示されて、嬉しいやら気恥ずかしいやら、むず痒い気持ちになりながら頬をかく。
オレに生徒会役員が務まるのかと言われるとあまり自信はないが、既に決まったものは仕方がない。ただできることをやるまでだ。
生徒会役員選挙について知った時は、こんなことになるなんて夢にも思わなかった。もしも時間を遡れるなら、あの時の自分に『心の準備はしておけ』と言っておきたい。
とりあえず、これからのことは明日以降の自分に任せることにして。せめて今だけはこの先あるかもしれない苦労について、考えることを後回しにしてもいいだろうか。
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