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第1章 赤の獣を養いたい!

蛮勇者は、寝床を用意したい!【1】

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フレイヤさんが家に来てからしばらくたった頃、ある問題が浮上していた。

「フレイヤさんの寝床は、どんな感じがいいですか?」

それは、フレイヤさん専用の家を造るかどうかという問題である。現在、フレイヤさんはリビングのソファーで寝ている。もともと人が来る予定のない家だったので、客室が一室しかない。それも、ユーカが使用しているので空き部屋がないのだ。このままずっと、ソファーがベットでは格好がつかないので、家とまでいかなくとも寝何処は作るべきだと思う。なので、思い切って本人に好みの寝床を聞いてみた。

「そうだな・・・・・できるなら神殿のような構造をしていると好ましいな。」

とカラカラと笑いながら、なんとも難しい寝床を要求してきた。予想の外も外な答えであった。フレイヤさんは神獣のハーフで、元の世界では神殿で暮らしていたらしい。そんなたいそうなものは作れないと思うけど、できる限りは要望に沿えるように頑張ろう。

「大きさはどのくらいですか?」

「んー・・・・・俺一人が寝れれば、問題はないが、欲を言えば、それよりも二回りくらい大きいと快適だな。」

思ったよりも小さめで良かった。そのくらいのサイズなら必要な土地は15メートル四方くらいでよさそうだ。庭を造ることを鑑みて、25メートル四方の土地をが必要だな。建てる場所は、・・・・・・・・俺の家のすぐ北の辺りでいいだろう。となると、作業の分担について考えるとしよう。フレイヤさんは、あまり繊細な作業が得意そうではないので、土地を均してもらおう。俺は神殿を立てるための石材を調達しに行こう。となると、ユーカには神殿の設計図をかいてもらいたい。取りあえず、フレイヤさんには土地の開拓をしてもらおう。
ということで、フレイヤさんを家の裏手につれて行き、家からある程度離れた所に一本のせんを足で引く。

「フレイヤさんには、この線から北に25メートル四方の土地を開拓してもらいます。」

「おお!了解した。この土地を均すのに炎を使っていいか?」

「・・・・・それは・・・やめてください。あなたが炎を使うと山火事が起きますから。」

「む・・・・まあそうだな。地道に木々を取り除くとしよう。」

と言って、フレイヤさんは、近くに生えている木に手を当てる。すると、木はぷしゅーという音を立て、みるみるとしぼんでいく。

「フレイヤさん。・・・・・今、何をしたんですか?」

「ん、今のは木の中の温度を上昇させて、水分をすべて蒸発させただけだが?この方が片付けが楽だろ。まあ、燃やしたほうがらくだがな。」

と笑う。まあなんとも馬鹿げた力の使い方だが、ここはお願いして、ユーカに神殿の図面を引くのを頼みに行こう。







「・・・・・・・なるほど、それで私を頼りに来たということですか。」

「お願いできるか?」

「いいですよ。フレイヤさんには、素材集めでお世話になっている訳ですし。・・・・・といってもそんなに綺麗には引けませので、期待はしないでくださいね。」

と自嘲気味に笑う。俺は、今回の神殿づくりは、俺のスキルである「構築」を使おうと思っている。
スキル「構築」は対価として材料と魔力を使って思い描くものをつくりだす能力だ。作るもので消費魔力が変わり、作るもののイメージが明確であればあるだけ、精巧にものを作ることができる。なので、ユーカに神殿の図面を作って貰おうというわけだ。ただし、今回は剣とか弓とか、細かな違いが出来栄えを左右するものを作る負けではないので、そこまで綺麗な図面でなくてもよいのだ。

「俺は、材料となる白青岩を取りに行ってくるよ。」

「どこに取りに行くんですか?」

「死の森の北に台地があるんだけど、そこの台地が白青岩で出来てるから、そこに行ってくるよ。」

「はい、帰ってくる前には、図面を完成させておきますね。」

お願いするよと一言いって、家をでる。今から向かうのは死の森の北端の場所なので時間がかかる。なので、今回は歩きではなく飛んで行くとしよう。飛行魔法を唱えると、体が浮く、周りの木々よりも数メートル高く浮上したら、北を目指して前進する。久しく飛んでいなかったが、たまに風を切って飛ぶのは楽しいな。なんかこう自由って感じがするな・・・・
3時間ほど北に向かって飛行していると、ほかの土地より一段高い土地が見えてきた。目的地の白青岩で出来た台地である。飛行魔法をやめて台地の手前に、降りる。
目の前には青色がかった白色の壁が、広がっている。この壁から20メートル四方のブロックを切り出して持ち帰るとしよう。白青岩は、高度がとてつもなく高いので、本来切り出すことができない。しかし、俺には裏技があるのだ。それは、ユーカに教えてもらった異世界の知識である。ユーカ曰く、水は高圧力で噴射すると石を切り裂くほど鋭い刃となるらしい。俺はその教え通り手のひらに水を作り圧縮していく。圧縮、圧縮、圧縮、圧縮ぅう!極限まで圧縮した水を一点を意識して解き放つ!
すると、勢いよく水かビームのように飛び出す。研ぎ澄まされた水の刃は白青岩を豆腐のように切り裂く。予想外の威力に驚きつつ、一辺一辺、丁寧に切っていく。切り終えた白青岩を魔法袋にしまう。これだけ大きいものを入れても容量がいっぱいにならないなんて、凄く貴重なものなんだろう。改めて皇帝の誠意を感じるなぁ。
もう、あの国には行くことはできないけれど、どうか帝国の行く末が幸せなものでありますように。
と心内で願った。
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