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一番困る誤解
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今の話を聞かれた!?
アレイドは、慌てて捨てられていた包みを拾い上げると、直ぐにユニーナの後を追った。しかし、その日どこを探しても、ユニーナの姿を見つけることはできなかった。
もし、本当に今の話を聞かれていたのなら、もし、クラギス達の話をユニーナが信じてしまったなら、自分は大好きなユニーナに嫌われてしまうかもしれない・・・。それどころか、ユニーナがこのことを家族に話して婚約自体が白紙に戻ってしまったら・・・。アレイドの頭には、ユニーナを失うかもしれない恐怖が次々と浮かび、考えれば考える程、目の前が真っ暗になるのだった。
それからのアレイドは、誤解を解く為に必死だった。
次の日、急いでバーナード家に向かうと、ユニーナに四葉のクローバーのブローチを渡した。そして、あれは誤解だと伝えようとしたが、クローバーのブローチを見つめているユニーナの顔から表情が抜け落ちていることに気が付いた。
「ユニ?」
「草・・・」
「えっ?」
「お姉様は薔薇の花で、私は草・・・。そうよね・・・。」
そう呟いたユニーナの瞳が、一瞬、暗く曇ったように見えた。重い沈黙が流れた後、すっと立ち上がったユニーナは、アレイドと目も合わせず、無言のまま部屋を出て行ってしまった。
今まで見たこともないユニーナの冷たい態度に、アレイドは驚きと一緒に大きなショックを受けた。アレイドに優しく微笑みかけてくれたユニーナの姿は、もうどこにもなかったのだ。その日アレイドは、お茶会の誤解を解くことも、ユニーナにクローバーのブローチを贈った理由も、ミズリーの薔薇のブローチに意味なんてないことも、何一つ伝えることはできなかった。アレイドは、ユニーナを失う恐ろしさに体どころか、頭も働かなくなってしまっていた。
それからは一方的にユニーナに避けられる日々だった。毎日のように手紙を書いたが、一度も返事はもらえなかった。会いたいと手紙をかいても、ユニーナがその時間に現れることはなかったし、直接会いに行っても、さまざまな理由をつけて断られ、申し訳なさそうにする夫人やミズリーに相談すれば、自分が出した手紙は、封も切らずにそのまま箱にしまっているということがわかった。
仲たがいをした二人を不憫に思ったユニーナの家族が、さりげなくアレイドの話を持ち掛けると、ユニーナは目に涙を浮かべて婚約解消の話をしてくるので、今は、誰もその話に触れられないと謝ってきた。
なぜここまでユニーナの気持ちが離れてしまったのか、本当はアレイドもユニーナの家族もわかっていたのだ。それは、幼い頃より容姿と頭脳に恵まれた姉のミズリーとあまりにも比べられた結果だった。自分の身内の中から一歩外に出れば、余計な一言や言わなくていい言葉を、わざわざ本人に知らしめる他人がどこにでも存在するものなのだ。純粋なユニーナは心無いそれらの言葉を全て受け止めて、陰で一人、よく泣いていた。アレイドもそんなユニーナの頭を撫でながら、何度も慰めたことがあった。
「でもね、僕はユニが一番好きだよ。」
アレイドは、今でもその時のユニーナの顔が忘れられない。たくさん涙を零しながら目を大きく見開き、
「本当? アレイドはお姉様より私の方がいいの?」
と、何度も聞いてくるのだ。「本当だよ。」と、優しく言うと、それまで涙でぐしゃぐしゃだったユニーナの顔が、照れたような笑みに変わり、嬉しいと、頬を赤くするのだ。
大きくなるにつれ、そのコンプレックスは怒りになったりもした。
「お姉様が、なんでも完璧すぎるから私の評価がこんなに低いのだわ!たまには失敗して恥の三つくらいかいてきてよ!!」
直接ミズリーに理不尽な怒りをぶつけて本人を困らせたこともあったし、
「お父様は、お姉様が美人で頭がいいから、可愛くない私ばかりそうやって怒るんですね!! 酷いです!!私だって好きでこんな顔に生まれたわけではないのに!!お父様なんてもう、嫌いです!!」
などと、自分が石を投げて窓ガラスを割ったことは反省せず、逆に父を怒りつけ、嫌いと暴言を吐き、男爵を悲しませたりもしていた。
子供の作り方が悪いだの、産み方が悪いだの文句は様々言っていたが、たまに、本当に傷つけられて帰ってきた日などは、食事も喉を通らなくなり、部屋に引き籠って出てこなくなってしまうのだ。そんな時は、家族の支えだけではどうにもならなくなり、急遽アレイドも呼ばれて、一緒に慰めたりしていた。
ユニーナの家族と共に支えてきたアレイドが、ずっと自分を一番だと言ってくれていた相手が・・・、本当は姉のミズリーの方が好きだったなんて知ったら、ユニーナはどう思うだろう。
あのお茶会での出来事は、アレイドにとって、なによりも困る誤解だったのだ。
アレイドは、慌てて捨てられていた包みを拾い上げると、直ぐにユニーナの後を追った。しかし、その日どこを探しても、ユニーナの姿を見つけることはできなかった。
もし、本当に今の話を聞かれていたのなら、もし、クラギス達の話をユニーナが信じてしまったなら、自分は大好きなユニーナに嫌われてしまうかもしれない・・・。それどころか、ユニーナがこのことを家族に話して婚約自体が白紙に戻ってしまったら・・・。アレイドの頭には、ユニーナを失うかもしれない恐怖が次々と浮かび、考えれば考える程、目の前が真っ暗になるのだった。
それからのアレイドは、誤解を解く為に必死だった。
次の日、急いでバーナード家に向かうと、ユニーナに四葉のクローバーのブローチを渡した。そして、あれは誤解だと伝えようとしたが、クローバーのブローチを見つめているユニーナの顔から表情が抜け落ちていることに気が付いた。
「ユニ?」
「草・・・」
「えっ?」
「お姉様は薔薇の花で、私は草・・・。そうよね・・・。」
そう呟いたユニーナの瞳が、一瞬、暗く曇ったように見えた。重い沈黙が流れた後、すっと立ち上がったユニーナは、アレイドと目も合わせず、無言のまま部屋を出て行ってしまった。
今まで見たこともないユニーナの冷たい態度に、アレイドは驚きと一緒に大きなショックを受けた。アレイドに優しく微笑みかけてくれたユニーナの姿は、もうどこにもなかったのだ。その日アレイドは、お茶会の誤解を解くことも、ユニーナにクローバーのブローチを贈った理由も、ミズリーの薔薇のブローチに意味なんてないことも、何一つ伝えることはできなかった。アレイドは、ユニーナを失う恐ろしさに体どころか、頭も働かなくなってしまっていた。
それからは一方的にユニーナに避けられる日々だった。毎日のように手紙を書いたが、一度も返事はもらえなかった。会いたいと手紙をかいても、ユニーナがその時間に現れることはなかったし、直接会いに行っても、さまざまな理由をつけて断られ、申し訳なさそうにする夫人やミズリーに相談すれば、自分が出した手紙は、封も切らずにそのまま箱にしまっているということがわかった。
仲たがいをした二人を不憫に思ったユニーナの家族が、さりげなくアレイドの話を持ち掛けると、ユニーナは目に涙を浮かべて婚約解消の話をしてくるので、今は、誰もその話に触れられないと謝ってきた。
なぜここまでユニーナの気持ちが離れてしまったのか、本当はアレイドもユニーナの家族もわかっていたのだ。それは、幼い頃より容姿と頭脳に恵まれた姉のミズリーとあまりにも比べられた結果だった。自分の身内の中から一歩外に出れば、余計な一言や言わなくていい言葉を、わざわざ本人に知らしめる他人がどこにでも存在するものなのだ。純粋なユニーナは心無いそれらの言葉を全て受け止めて、陰で一人、よく泣いていた。アレイドもそんなユニーナの頭を撫でながら、何度も慰めたことがあった。
「でもね、僕はユニが一番好きだよ。」
アレイドは、今でもその時のユニーナの顔が忘れられない。たくさん涙を零しながら目を大きく見開き、
「本当? アレイドはお姉様より私の方がいいの?」
と、何度も聞いてくるのだ。「本当だよ。」と、優しく言うと、それまで涙でぐしゃぐしゃだったユニーナの顔が、照れたような笑みに変わり、嬉しいと、頬を赤くするのだ。
大きくなるにつれ、そのコンプレックスは怒りになったりもした。
「お姉様が、なんでも完璧すぎるから私の評価がこんなに低いのだわ!たまには失敗して恥の三つくらいかいてきてよ!!」
直接ミズリーに理不尽な怒りをぶつけて本人を困らせたこともあったし、
「お父様は、お姉様が美人で頭がいいから、可愛くない私ばかりそうやって怒るんですね!! 酷いです!!私だって好きでこんな顔に生まれたわけではないのに!!お父様なんてもう、嫌いです!!」
などと、自分が石を投げて窓ガラスを割ったことは反省せず、逆に父を怒りつけ、嫌いと暴言を吐き、男爵を悲しませたりもしていた。
子供の作り方が悪いだの、産み方が悪いだの文句は様々言っていたが、たまに、本当に傷つけられて帰ってきた日などは、食事も喉を通らなくなり、部屋に引き籠って出てこなくなってしまうのだ。そんな時は、家族の支えだけではどうにもならなくなり、急遽アレイドも呼ばれて、一緒に慰めたりしていた。
ユニーナの家族と共に支えてきたアレイドが、ずっと自分を一番だと言ってくれていた相手が・・・、本当は姉のミズリーの方が好きだったなんて知ったら、ユニーナはどう思うだろう。
あのお茶会での出来事は、アレイドにとって、なによりも困る誤解だったのだ。
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