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この人は誰なのだろう
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はたして、現在エリシアの目の前で礼儀正しく両親に挨拶をしているこの男性は、一体誰なのだろう・・・。
妙にかしこまった服装で現れた若き紳士は、瞬きもせずに相手としっかり視線を合わせ、常に口角の上がっているその表情はいかにも自信ありげに見える。
綺麗に整えられた髪形は清潔感を感じさせ、そのよく動く口から次々と出る言葉は、誠実で耳障りの良いものばかりだった。
実際の年齢よりも随分と大人っぽい雰囲気を感じさせる青年は、両親への挨拶が終わるとエリシアに向かい美しく微笑んだ。
目を丸くして固まっているエリシアの手を取り、手の甲に恭しく口づけを落とすと、彼はエリシアを熱っぽく見つめた。
目の前のスラっとした長身の男性を見上げれば、その顔がなぜかユーレットに見える。
これはやはり気のせいなのだろうか・・・。
(・・・この人は、ダレだ?)
会話の最中、青年はエリシアから目を離さなかった。終始食い入るように見つめられ、その目力の強さに圧倒されたエリシアは、会話に集中するどころか相手の顔も満足に見ることができないでいた。
耳に入ってくる内容から推測するに、どうやら彼に婚約の申し込みをされているようであったが、未だ現状を理解できないエリシアは返事をすることもできないでいた。
(なんか・・・違う・・・)
学園の卒業式当日に手紙を出して来たこの青年は、自身をユーレットと名乗り、スラリとした細身の体になぜかユーレットの顔をのせて目の前に現れた。
そしてエリシアの手を取り、なにやら気味の悪いことを言っている。
「この日をどれほど待ちわびたことでしょう。ああ、愛しいエリシア様。長い間待たせてしまったことをお許しください。そしてどうかこの先、私の一生をかけて償わせてください」
作り込まれた演劇のセリフだろうか・・・。 もしくは、一昔前の媚び売り文句? エリシアは、腕にできた鳥肌を押さえるようにこっそりと手を当てた。
(うん、やっぱり違う。きっとこの人は偽者・・・。そしてちょっと怖い人だわ)
紳士的な態度に気を良くしている両親は、もちろんエリシアの初恋を知っている。そのせいもあってか、彼ならば大丈夫だと夫婦で密かに頷き合っているのが先ほどから視界の隅にチラチラと入ってきて嫌な気分になる。
エリシアはそんな両親に促されるまま、自宅の庭園を案内することになってしまった。
二人きりになっても彼の態度に変化はない。どこかの夜会で嗅いだことのある高価な香水の匂いが鼻についた。
聞き慣れない甘い声もそうだが、繋がれた大きな手にやたらと力が入っていることにも疑問を感じてしまう。
「あの・・・会わない間に、とても立派になられましたね・・・」
何も話さないのも失礼かと思い、言葉を選びながらなんとか話しかけてみると、青年は微かに頬を染めて嬉しそうに微笑んだ。
「エリシア様が卒業されてから急に身長が伸び始めました。ほら、今ではこうしてあなたと並んでも違和感などないはずです」
(その笑顔に・・・違和感・・・あり、ですけどね)
会話にならなかった。
なにやら彼の中では、エリシアとの婚約は既に決定事項のようであった。そして彼の話は、婚約期間から始まり結婚式の具体的な内容へ勝手に移って行く。
結婚後の話に行きつけば、領主である妻(エリシア)と、いかに協力してコットワール侯爵領を盛り上げていくかを延々と一人でしゃべり倒した。
そして最後は愛想笑いに疲れたエリシアに、三日後の夜会の約束を強引に取り付けると、爽やかな笑顔を振りまいて颯爽と帰って行ったのだった。
妙にかしこまった服装で現れた若き紳士は、瞬きもせずに相手としっかり視線を合わせ、常に口角の上がっているその表情はいかにも自信ありげに見える。
綺麗に整えられた髪形は清潔感を感じさせ、そのよく動く口から次々と出る言葉は、誠実で耳障りの良いものばかりだった。
実際の年齢よりも随分と大人っぽい雰囲気を感じさせる青年は、両親への挨拶が終わるとエリシアに向かい美しく微笑んだ。
目を丸くして固まっているエリシアの手を取り、手の甲に恭しく口づけを落とすと、彼はエリシアを熱っぽく見つめた。
目の前のスラっとした長身の男性を見上げれば、その顔がなぜかユーレットに見える。
これはやはり気のせいなのだろうか・・・。
(・・・この人は、ダレだ?)
会話の最中、青年はエリシアから目を離さなかった。終始食い入るように見つめられ、その目力の強さに圧倒されたエリシアは、会話に集中するどころか相手の顔も満足に見ることができないでいた。
耳に入ってくる内容から推測するに、どうやら彼に婚約の申し込みをされているようであったが、未だ現状を理解できないエリシアは返事をすることもできないでいた。
(なんか・・・違う・・・)
学園の卒業式当日に手紙を出して来たこの青年は、自身をユーレットと名乗り、スラリとした細身の体になぜかユーレットの顔をのせて目の前に現れた。
そしてエリシアの手を取り、なにやら気味の悪いことを言っている。
「この日をどれほど待ちわびたことでしょう。ああ、愛しいエリシア様。長い間待たせてしまったことをお許しください。そしてどうかこの先、私の一生をかけて償わせてください」
作り込まれた演劇のセリフだろうか・・・。 もしくは、一昔前の媚び売り文句? エリシアは、腕にできた鳥肌を押さえるようにこっそりと手を当てた。
(うん、やっぱり違う。きっとこの人は偽者・・・。そしてちょっと怖い人だわ)
紳士的な態度に気を良くしている両親は、もちろんエリシアの初恋を知っている。そのせいもあってか、彼ならば大丈夫だと夫婦で密かに頷き合っているのが先ほどから視界の隅にチラチラと入ってきて嫌な気分になる。
エリシアはそんな両親に促されるまま、自宅の庭園を案内することになってしまった。
二人きりになっても彼の態度に変化はない。どこかの夜会で嗅いだことのある高価な香水の匂いが鼻についた。
聞き慣れない甘い声もそうだが、繋がれた大きな手にやたらと力が入っていることにも疑問を感じてしまう。
「あの・・・会わない間に、とても立派になられましたね・・・」
何も話さないのも失礼かと思い、言葉を選びながらなんとか話しかけてみると、青年は微かに頬を染めて嬉しそうに微笑んだ。
「エリシア様が卒業されてから急に身長が伸び始めました。ほら、今ではこうしてあなたと並んでも違和感などないはずです」
(その笑顔に・・・違和感・・・あり、ですけどね)
会話にならなかった。
なにやら彼の中では、エリシアとの婚約は既に決定事項のようであった。そして彼の話は、婚約期間から始まり結婚式の具体的な内容へ勝手に移って行く。
結婚後の話に行きつけば、領主である妻(エリシア)と、いかに協力してコットワール侯爵領を盛り上げていくかを延々と一人でしゃべり倒した。
そして最後は愛想笑いに疲れたエリシアに、三日後の夜会の約束を強引に取り付けると、爽やかな笑顔を振りまいて颯爽と帰って行ったのだった。
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