20 / 25
早朝の来客
しおりを挟む
屋敷に戻ったエリシアはベッドの上で大きな溜息を吐いた。
思い出すのは、先ほどまで一緒だったユーレットのことばかりだ。
(彼はとても立派な男性になったのね・・・)
今日のユーレットの言動を思い返すと、彼がこの二年の間でどれほど努力したのかが分かった。今の彼であればどんな女性とも上手に付き合って行けるだろう。
それほど今の彼は、どこに出しても恥ずかしくない魅力的な貴族男性に変わっていた。
静かに目を閉じたエリシアは、会場で他の令嬢と親しげに会話をしているユーレットを思い返した。
過去に学園でユーレットを庇った女性を見た時はあれほどまでに気持ちが動揺したというのに、今日の自分ときたら、いくらユーレットが他の女性に笑いかけていても動揺するどころか落ち着いた心は静か過ぎるくらいだった。
もう・・・彼の相手が自分である必要はない。
今のユーレットを前にして、当時感じていた心弾むような幸せな気持ちにはどうしても戻れそうにない。それはとても寂しいことに違いないがエリシアはそれを素直に受け止めようと思った。大好きだったユーレットとの思い出は自分の心の中にしっかりと刻み込んでいる。それだけで充分だと思った。その想いがあれば、この先愛情のない相手ともきっと夫婦として頑張って行けると・・・。
(明日、お父様に言って、お相手を選んでいただこう・・・)
すっかりユーレットを気に入ってしまった両親には申し訳ないが、このままユーレットと結婚しても誰一人幸せになどなれないだろう。二年もの間、一度も会うことなく彼の噂話にすら耳を貸さなかった自分は、きっと間違っていなかったのだ。
彼と距離を置いたことで、いつしか会えないのが当たり前になってしまい少しずつ過去の人にすることができたのだから・・・。
未だエリシアの記憶の中には、過去で時を止めたままの愛しいユーレットがいる。
エリシアの目には、変わってしまった現在のユーレットと、他の貴族男性との区別はつきそうもない。
(会場で、あれほどたくさんの女性に囲まれていたんですもの。私が婚約を断ったとしてもそれほど彼を困らせることにはならないでしょう。明日、もう一度お断りの返事をしないといけないわね・・・)
その時、ふと、先ほどの庭園での出来事を思い出した。婚約をはっきりと断るエリシアの瞳に映ったのは、怒ったような口調で眉をひそめる彼の姿だった。それは、ほんの一瞬のことであったが懐かしさに胸が震えるような心臓のざわめきを覚えた。忘れかけていた熱い気持ちが、体の底からぶわっと溢れかえるような感覚だった。
思い出すと未だに胸がドキドキする。エリシアは、胸を押さえて呼吸を整えた。顔が赤く火照ってくるのがわかる。だがしかし、今更それを期待してどうなるというのだ。貴族に生まれたユーレットが立派な紳士に成長したことは何も間違っていない。そう、間違っているのは彼の成長を拒むエリシアの方なのだ。
次の日の早朝。
ベッドの中で熟睡中のエリシアを無理に起こしたのは、慌てて部屋に駆け込んできたメイドであった。
「お嬢様、大変です。お客様がお見えです。起きてください、お嬢様!!」
「え・・・なんで・・・まだ寝てるのに。なに・・・来客の予定なんて、入れてない」
「お嬢様の婚約者様です!先触れなしでお見えになりました。下で待っていただいておりますので、とにかく早く起きてください」
「えっ!?どうして突然・・・」
すっかり大人になった彼が、そのような常識のない真似はしないだろうと思ったエリシアは、なにか大変なことが起こったのだろうかと大慌てで支度を整えた。
思い出すのは、先ほどまで一緒だったユーレットのことばかりだ。
(彼はとても立派な男性になったのね・・・)
今日のユーレットの言動を思い返すと、彼がこの二年の間でどれほど努力したのかが分かった。今の彼であればどんな女性とも上手に付き合って行けるだろう。
それほど今の彼は、どこに出しても恥ずかしくない魅力的な貴族男性に変わっていた。
静かに目を閉じたエリシアは、会場で他の令嬢と親しげに会話をしているユーレットを思い返した。
過去に学園でユーレットを庇った女性を見た時はあれほどまでに気持ちが動揺したというのに、今日の自分ときたら、いくらユーレットが他の女性に笑いかけていても動揺するどころか落ち着いた心は静か過ぎるくらいだった。
もう・・・彼の相手が自分である必要はない。
今のユーレットを前にして、当時感じていた心弾むような幸せな気持ちにはどうしても戻れそうにない。それはとても寂しいことに違いないがエリシアはそれを素直に受け止めようと思った。大好きだったユーレットとの思い出は自分の心の中にしっかりと刻み込んでいる。それだけで充分だと思った。その想いがあれば、この先愛情のない相手ともきっと夫婦として頑張って行けると・・・。
(明日、お父様に言って、お相手を選んでいただこう・・・)
すっかりユーレットを気に入ってしまった両親には申し訳ないが、このままユーレットと結婚しても誰一人幸せになどなれないだろう。二年もの間、一度も会うことなく彼の噂話にすら耳を貸さなかった自分は、きっと間違っていなかったのだ。
彼と距離を置いたことで、いつしか会えないのが当たり前になってしまい少しずつ過去の人にすることができたのだから・・・。
未だエリシアの記憶の中には、過去で時を止めたままの愛しいユーレットがいる。
エリシアの目には、変わってしまった現在のユーレットと、他の貴族男性との区別はつきそうもない。
(会場で、あれほどたくさんの女性に囲まれていたんですもの。私が婚約を断ったとしてもそれほど彼を困らせることにはならないでしょう。明日、もう一度お断りの返事をしないといけないわね・・・)
その時、ふと、先ほどの庭園での出来事を思い出した。婚約をはっきりと断るエリシアの瞳に映ったのは、怒ったような口調で眉をひそめる彼の姿だった。それは、ほんの一瞬のことであったが懐かしさに胸が震えるような心臓のざわめきを覚えた。忘れかけていた熱い気持ちが、体の底からぶわっと溢れかえるような感覚だった。
思い出すと未だに胸がドキドキする。エリシアは、胸を押さえて呼吸を整えた。顔が赤く火照ってくるのがわかる。だがしかし、今更それを期待してどうなるというのだ。貴族に生まれたユーレットが立派な紳士に成長したことは何も間違っていない。そう、間違っているのは彼の成長を拒むエリシアの方なのだ。
次の日の早朝。
ベッドの中で熟睡中のエリシアを無理に起こしたのは、慌てて部屋に駆け込んできたメイドであった。
「お嬢様、大変です。お客様がお見えです。起きてください、お嬢様!!」
「え・・・なんで・・・まだ寝てるのに。なに・・・来客の予定なんて、入れてない」
「お嬢様の婚約者様です!先触れなしでお見えになりました。下で待っていただいておりますので、とにかく早く起きてください」
「えっ!?どうして突然・・・」
すっかり大人になった彼が、そのような常識のない真似はしないだろうと思ったエリシアは、なにか大変なことが起こったのだろうかと大慌てで支度を整えた。
111
あなたにおすすめの小説
聖女召喚に玉藻の前みたいなのが来たんだが
拓海のり
恋愛
未曽有の大厄災が起きると神託が下り、国は聖女召喚をする。現れた聖女は長い黒髪の美しい女性であった。だが彼女は気位が高く、気まぐれで我が儘で、誰の言うことも聞かない。7000字くらいの掌編です。
デブスの伯爵令嬢と冷酷将軍が両思いになるまで~痩せたら死ぬと刷り込まれてました~
バナナマヨネーズ
恋愛
伯爵令嬢のアンリエットは、死なないために必死だった。
幼い頃、姉のジェシカに言われたのだ。
「アンリエット、よく聞いて。あなたは、普通の人よりも体の中のマナが少ないの。このままでは、すぐマナが枯渇して……。死んでしまうわ」
その言葉を信じたアンリエットは、日々死なないために努力を重ねた。
そんなある日のことだった。アンリエットは、とあるパーティーで国の英雄である将軍の気を引く行動を取ったのだ。
これは、デブスの伯爵令嬢と冷酷将軍が両思いになるまでの物語。
全14話
※小説家になろう様にも掲載しています。
王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!
ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」
卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。
なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。
拾われた孤児は助けてくれた令嬢に執着する
あおくん
恋愛
ある日漠然と前世の記憶が蘇ったミレーナ・レリスロートは、その後特に何を成すわけでもなく普通に過ごした。
だが、前世の自分か、または今世のミレーナの意思か、倒れている子供を見て見ぬふりは出来ず必死で両親を説得し、拾った子どもにアレンという名を与え弟のように育てた。
それから七年。
ヒロインと名乗る少女が二人の前に現れる。
アレン(攻略対象)を奪うなと騒ぐヒロイン(仮)にミレーナとアレンが………
という感じのヤンデレ執着目指したお話しです。
アレンがヤンデレになれてなくても、アレンとミレーナが幸せになって終われるよう目指します。
楽しんでいただけると嬉しいです。
婚約破棄計画から始まる関係〜引きこもり女伯爵は王子の付き人に溺愛される〜
香木陽灯
恋愛
「僕と婚約して、《婚約破棄されて》くれませんか?」
「へ?」
クリスティーナはとある事情からひっそりと引きこもる女伯爵だ。
その彼女のもとに来たのは、『婚約破棄されてくれ』という不思議な依頼だった。
依頼主のヘンリー・カスティルは、皆から親しまれる完璧な伯爵子息。でもクリスティーナの前では色んな面を見せ……。
「なるべく僕から離れないで、僕だけを見ていてくれますか?」
「貴女を離したくない」
「もう逃げないでください」
偽物の関係なのに、なぜか溺愛されることに……。
(優しくしないで……余計に好きになってしまう)
クリスティーナはいつしかヘンリーが好きになってしまう。でも相手は偽の婚約者。幸せになれないと気持ちに蓋をする。
それなのに……
「もう遠慮はしませんからね」
グイグイと距離を詰めてくるヘンリー。
婚約破棄計画の結末は……?
乙女ゲームは始まらない
みかん桜
恋愛
異世界転生した公爵令嬢のオリヴィア。
婚約者である王太子殿下の周囲に、乙女ゲームのヒロインを自称する女が現れた。
だが現実的なオリヴィアは慌てない。
現実の貴族社会は、物語のように優しくはないのだから。
これは、乙女ゲームが始まらなかった世界の話。
※恋愛要素は背景程度です。
婚約者は無神経な転生悪役令嬢に夢中のようです
宝月 蓮
恋愛
乙女ゲームのモブに転生したマーヤ。目の前にいる婚約者はそのゲームの攻略対象だった。しかし婚約者は悪役令嬢に救われたようで、マーヤそっちのけで悪役令嬢に夢中。おまけに攻略対象達に囲まれている悪役令嬢も転生者で、何だか無神経発言ばかりで少しモヤモヤしていしまうマーヤ。そんな中、マーヤはゲームには関係ない隣国の公爵令息と仲良くなり……!?
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる