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光り輝くシャンデリア。天井や壁に描かれた神話の世界。柱や窓枠、その他細部の細部に至るまでこだわり抜かれ、惜しみなく使用された金の装飾が公爵家の底無しの財力を物語っている。豪華絢爛、何から何まで桁違いだ。
そこへシャーロットと彼女をエスコートするデリクが入場すると会場内が色めき立った。
「まあ、お美しい!!」
「珍しいな」
「ついにお二人も結婚か?」
扇で口元を隠す令嬢や婦人たち。忍び声でいくつもの情報が交わされる。二人に挨拶しようとする招待客たちが続々と集まってきた。シャーロットは相変わらず無愛想で、隣でデリクが一人一人丁寧に対応している。リリアが壁際で待機していると、聞き覚えのある可愛らしい声に呼ばれた。
「リリア様!」
「――ミシェル様! あっ……」
リリアの笑顔はすぐに消えた。でもそれは悪い意味ではない。ミシェルをエスコートしていたのがウィルバートだったからだ。
「お二人とも素敵ですね」
「えへへ、ありがとうございます」
ミシェルとウィルバートは嬉しそうに笑い合う。二人の間に進展があったのだろうか。
「父と母も来ています」
ミシェルの手と視線の先を辿ると、シュレイバー伯爵夫妻がリリアに軽く頭を下げた。リリアも慌てて会釈を返す。
「リリア様のパンツスタイルとってもカッコいいです! 痺れます! 今夜は護衛頑張ってください」
「ありがとうございます」
ミシェルとウィルバートの仲睦まじい後ろ姿を見ていると、こちらまで温かい気持ちになる。呪いが解けた今、ミシェルを手放した令息たちがどんな目で二人を見るのか。彼らは大いに後悔するだろう。
◇◇◇
「今宵は我がクドカロフ家の夜会に――」
クドカロフ公爵の挨拶が始まった。
公爵の両脇に立つ夫人とシャーロットを見ていると、二人が生写しのようにそっくりなことに改めて驚かされる。公爵も金髪碧眼なのだが、シャーロットと似ているのはその色だけ。顔のパーツはまったく似ていなかった。
挨拶の終わった会場に流れるワルツの音色。再び会場が騒めいた。
「ねえ、見て!」
「今夜はどうなさったのかしら」
踊り始めたデリクとシャーロットに皆の視線が注がれ、リリアの耳にも彼らを詮索する囁き声が聞こえてくる。しかしダンスが進むにつれていつの間にか騒めきは静まり、美しい二人に皆が見惚れた。
「――お似合いだと思わない?」
左手側から近づいてきた一人の婦人が、リリアの目の前を通り過ぎることなくピタリと立ち止まった。思った通り……クドカロフ公爵夫人だ。夫人は顔半分を扇で隠し、真正面を向いたまま冷酷な碧眼だけを動かしてリリアを捉えた。
「しっかりと目に焼き付けておきなさい」
小さな笑い声を残して通り過ぎていく。ポーカーフェイスでやり過ごしたが、リリアの心中はもちろん穏やかではなかった。
(暇なのかしら)
分かりきった事をわざわざ言いに来るほど、公爵夫人にとってリリアの存在は目障りこの上ないようだ。婚約者として振る舞うデリクとシャーロットの姿を思い切り見せつけて、さぞかしご満悦のことだろう。
(確かにお二人はお似合いだわ。でも……)
今の二人はちっとも楽しそうではない。冷たい表情で淡々と踊り続けているだけだ。笑顔のないデリクの姿にリリアは悲しくなった。
ダンスを終えたシャーロットはその後しばらく招待客と会話を続けていたが、不意にリリアに目をやった。『ついてきなさい』と言いたげに顔を横に動かす。リリアが僅かに頷くのを確認するとドレスの裾を翻して会場を抜け出した。
◇◇◇
コツコツと廊下にヒールの音を響かせて、シャーロットは足早に夜会会場から遠ざかっていく。自室に戻るなら二階のはずだ。いったいどこに向かっているのだろうか。
ある地点を境に見当たらなくなった公爵家の護衛。シャーロットは誰もいない一階の一番端の部屋の前で足を止めた。
「あなたは扉の前で待ってて。誰か来たらすぐに知らせなさい」
「はい」
シャーロットは扉を軽く叩くと「私よ」と愛らしく優しい声で呼びかける。普段の刺々しい冷たい口調とは雲泥の差だ。扉の鍵を開けて中に入っていく彼女の横顔はまさに女神のようだった。
「カルロ……」
(――っ!?)
一瞬、聞き間違いかと耳を疑う。感情を置き忘れたリリアの目の前でガチャっと扉が閉まった。
――カルロ……カルロ?
何度もその名を繰り返す。リリアの脳内がその名で埋め尽くされた時、ようやくシャーロットが夜会を抜け出してあの子爵令息に会いに来たのだと理解した。
今夜カルロの姿が見当たらなかったため、彼は夜会に招待されていないと安心していた。まさかこっそりと公爵邸に連れ込んでいたとは……。
「やってくれるじゃない……」
静かに怒りが込み上げる。
シャーロットが媚薬効果のある魔法陣を使おうとしたことから、カルロとは縁を切ってデリク一筋に心を入れ替えたと思っていたのに。裏切りも甚だしい。
(あんなに素敵な婚約者にエスコートされて、皆の前でダンスを踊って祝福されたのに……よくもまあ、ぬけぬけと相引きができたものね。デリク様というお方がいながら……シャーロット……)
「絶対に許さない」
そこへシャーロットと彼女をエスコートするデリクが入場すると会場内が色めき立った。
「まあ、お美しい!!」
「珍しいな」
「ついにお二人も結婚か?」
扇で口元を隠す令嬢や婦人たち。忍び声でいくつもの情報が交わされる。二人に挨拶しようとする招待客たちが続々と集まってきた。シャーロットは相変わらず無愛想で、隣でデリクが一人一人丁寧に対応している。リリアが壁際で待機していると、聞き覚えのある可愛らしい声に呼ばれた。
「リリア様!」
「――ミシェル様! あっ……」
リリアの笑顔はすぐに消えた。でもそれは悪い意味ではない。ミシェルをエスコートしていたのがウィルバートだったからだ。
「お二人とも素敵ですね」
「えへへ、ありがとうございます」
ミシェルとウィルバートは嬉しそうに笑い合う。二人の間に進展があったのだろうか。
「父と母も来ています」
ミシェルの手と視線の先を辿ると、シュレイバー伯爵夫妻がリリアに軽く頭を下げた。リリアも慌てて会釈を返す。
「リリア様のパンツスタイルとってもカッコいいです! 痺れます! 今夜は護衛頑張ってください」
「ありがとうございます」
ミシェルとウィルバートの仲睦まじい後ろ姿を見ていると、こちらまで温かい気持ちになる。呪いが解けた今、ミシェルを手放した令息たちがどんな目で二人を見るのか。彼らは大いに後悔するだろう。
◇◇◇
「今宵は我がクドカロフ家の夜会に――」
クドカロフ公爵の挨拶が始まった。
公爵の両脇に立つ夫人とシャーロットを見ていると、二人が生写しのようにそっくりなことに改めて驚かされる。公爵も金髪碧眼なのだが、シャーロットと似ているのはその色だけ。顔のパーツはまったく似ていなかった。
挨拶の終わった会場に流れるワルツの音色。再び会場が騒めいた。
「ねえ、見て!」
「今夜はどうなさったのかしら」
踊り始めたデリクとシャーロットに皆の視線が注がれ、リリアの耳にも彼らを詮索する囁き声が聞こえてくる。しかしダンスが進むにつれていつの間にか騒めきは静まり、美しい二人に皆が見惚れた。
「――お似合いだと思わない?」
左手側から近づいてきた一人の婦人が、リリアの目の前を通り過ぎることなくピタリと立ち止まった。思った通り……クドカロフ公爵夫人だ。夫人は顔半分を扇で隠し、真正面を向いたまま冷酷な碧眼だけを動かしてリリアを捉えた。
「しっかりと目に焼き付けておきなさい」
小さな笑い声を残して通り過ぎていく。ポーカーフェイスでやり過ごしたが、リリアの心中はもちろん穏やかではなかった。
(暇なのかしら)
分かりきった事をわざわざ言いに来るほど、公爵夫人にとってリリアの存在は目障りこの上ないようだ。婚約者として振る舞うデリクとシャーロットの姿を思い切り見せつけて、さぞかしご満悦のことだろう。
(確かにお二人はお似合いだわ。でも……)
今の二人はちっとも楽しそうではない。冷たい表情で淡々と踊り続けているだけだ。笑顔のないデリクの姿にリリアは悲しくなった。
ダンスを終えたシャーロットはその後しばらく招待客と会話を続けていたが、不意にリリアに目をやった。『ついてきなさい』と言いたげに顔を横に動かす。リリアが僅かに頷くのを確認するとドレスの裾を翻して会場を抜け出した。
◇◇◇
コツコツと廊下にヒールの音を響かせて、シャーロットは足早に夜会会場から遠ざかっていく。自室に戻るなら二階のはずだ。いったいどこに向かっているのだろうか。
ある地点を境に見当たらなくなった公爵家の護衛。シャーロットは誰もいない一階の一番端の部屋の前で足を止めた。
「あなたは扉の前で待ってて。誰か来たらすぐに知らせなさい」
「はい」
シャーロットは扉を軽く叩くと「私よ」と愛らしく優しい声で呼びかける。普段の刺々しい冷たい口調とは雲泥の差だ。扉の鍵を開けて中に入っていく彼女の横顔はまさに女神のようだった。
「カルロ……」
(――っ!?)
一瞬、聞き間違いかと耳を疑う。感情を置き忘れたリリアの目の前でガチャっと扉が閉まった。
――カルロ……カルロ?
何度もその名を繰り返す。リリアの脳内がその名で埋め尽くされた時、ようやくシャーロットが夜会を抜け出してあの子爵令息に会いに来たのだと理解した。
今夜カルロの姿が見当たらなかったため、彼は夜会に招待されていないと安心していた。まさかこっそりと公爵邸に連れ込んでいたとは……。
「やってくれるじゃない……」
静かに怒りが込み上げる。
シャーロットが媚薬効果のある魔法陣を使おうとしたことから、カルロとは縁を切ってデリク一筋に心を入れ替えたと思っていたのに。裏切りも甚だしい。
(あんなに素敵な婚約者にエスコートされて、皆の前でダンスを踊って祝福されたのに……よくもまあ、ぬけぬけと相引きができたものね。デリク様というお方がいながら……シャーロット……)
「絶対に許さない」
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