百花繚乱 〜国の姫から極秘任務を受けた俺のスキルの行くところ〜

幻月日

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第197話 牢獄から出ずる者たち

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ジバルドとの一戦が終わってから、俺たちは再びプリズンタウンに向けて歩みを進めていた。
牢獄の街、言葉だけ聞けばさしずめ囚人たちがいる街ということだろうか。

「テール、俺たちが今向かっているプリズンタウンのこと何か知っているか?」

「いいや、何にも」

そう言ってテールは首を横に振る。

「セシルはどうだ?」

「んーと、ずっと昔、聞いたことあるような……ないような……やっぱり知らない!」

頭を左右に一度ずつ傾けて、きっぱりとそう言った。

「あの……私、少しですけど知っています」

ラピスがそーっと右手を上げて言う。

「本当か? どういう街なんだ?」

「私が聞いた話ではプリズンタウンは人々がひっそりと暮らしている街らしいです。なんでも其処には兵士さんや勇者の方々もいるみたいです」

「……ラピス、そういう重要なことはだな、もう少し早めに言ってくれたら助かる」

「だ、だって! 私、てっきりシンさんなら知っていると思って……御免なさい」

エルピスの街でラピスに出会ってからもう半年以上経つが、俺が彼女のことを知っていることと言えばレドックとの一件と精霊獣アルンを連れていることくらい。
あまり話す機会がないからか、ラピスもラピスで知っていることを話しにくかったからなのかもしれない。

「別に謝らなくてもいい。それで、他に何か知っていることは?」

今度、時間が出来た時にでもゆっくりとラピスと話し合う機会を設けよう。グレイロットにいた時、俺たちがヴィンスとの鍛錬を行っていたおよそ半年もの間、ラピスも少し心を開けて来たと思っていたが、やはり元は別の勇者の仲間だった為か、時間がかかるということか。

「他には……プリズンタウンになる前の話なら知っています」

プリズンタウンになる前?

「話してくれ」

今は兵士や勇者らがいる街だそうで、その上、牢獄なんて言葉が付いている街。これは何かありそうだな。





今から随分前の話、トリトン大陸は他の大陸と同じように街や村には兵団が防衛の為に滞在しており栄えていた。
幾つかの国も存在し、魔物の数も他の大陸に比べて少なかったとされる。それは他の大陸に比べて元々数が少なかったというのもあるが、国の兵団や勇者たちが積極的に活動した結果だったとも言われている。
というのもこの時というのは、先代魔王が過去の勇者一行によって倒された頃。トリトン大陸にあった国々と勇者らは弱体化した魔物たちの減少に力を入れていた。
もちろん、こうしたことはシーラ王国があるウヌア大陸でも優先的に行われ、世界は平和になりつつあった。
このあたりのことは俺も知っていることだった。

そしてこのトリトン大陸では、犯罪を犯した者たちをまとめて収容する場所が随分昔から設けられていたとラピスは言う。それが大牢獄、プリズンロック。
プリズンロックは何処にあるかは未公開情報で、其処には何らかの罪を犯した犯罪者が収容されていたそうだ。
俺もそういうものがこの世界の何処かにあるとは噂程度に聞いていたが、まさかこのトリトン大陸にあったとは。しかも、今、俺たちが向かっているプリズンタウンの前の姿だったとは驚きだ。

大牢獄、プリズンロック。
此処では犯罪者のランクに合わせた罰が与えられていたのだという。
特にCランクから上の犯罪者にはトリトン大陸中の人々が観戦しに来るほどの一種の競技のようなものがあったらしい。
それが犯罪者と魔物を戦わせるというもの。それを取りまとめていたのがホックファー王国で、犯罪者たちの罪を償わせさせるという目的の元に行われていたのだそうだ。
そのことを当時トリトン大陸で栄えていたモルガー王国が禁止にしたのは、競技が始まってから3年後のことだった。
法の国と呼ばれるホックファー王国を相手にモルガー王国は他国との協力もあって、ようやく競技禁止の裁定が下されたそうだ。
ただ、そのおよそ3年もの間に多くの犯罪者たちが死んでしまい、残った犯罪者たちが国を見る目はさらに変わっていったという。
中には未だにホックファー王国を恨んでいる犯罪者もいるそうで、プリズンロックを脱走した一部の者たちが三大陸の何処かに潜んでいるらしい。
当時、トリトン大陸が他の大陸に比べて魔物の数が少なかったのはこういう背景も絡んでいたということだ。

そして同時期、世界を揺るがすほどの大事件が起きた。それが新たなる魔王の出現。つまり、現魔王だ。

プリズンロックに収容されていた残りの囚人たちが第二の大陸と呼ばれるセクゥンド大陸へ移動させられ、それは秘密裏に行われたそうだ。
そんなの、セクゥンド大陸の人々からすると迷惑この上ない話だ。

その後、囚人たちの居なくなったプリズンロックには多くの人々が其処を住まいとするようになっていった。その大きな理由がプリズンロック自体の構造。
ソフィア王国の技術によって作られたプリズンロックは魔防壁にも類似する機能を持っているのだという。
そうしてトリトン大陸にある街の一つとなったのがプリズンタウン。


「ーーそういうことがあったんだな。というか、ラピスは何でそんなことを知ってたんだ?」

「彼……レドックから聞きました。レドックの祖父が昔プリズンロックにいたそうで」

「なるほどな。それでか」

ダークリーパーの手を借りてメアを誘拐するような奴はそういう血を引き継いでしまっているということか。

「みんな! 何か大きい音がする!」

セシルが両耳をしきりに動かしてそう言った。
俺には全くそんな音は聞こえないのだが、人間の数倍の聴覚を持つ獣人のセシルには聞こえているようだ。
それはアルンも同じようで、セシルと同じように両耳が動く。

「また敵か?」

「違う、なんだろう……水みたいな音」

水みたい?
そう意識して耳を澄ませてみるが俺には聞こえない。

「水ってこの森に入る前に見た川のことじゃないかい?」

「そんな流れるような音じゃない。弾けるような、そんな音」

改めて耳を澄ませてみるが、やっぱり聞こえない。

「分かった。とにかくだ、早いとここの森を抜けよう」

森の先にある橋を渡って、プリズンタウンへ。トリトン大陸の魔物のレベル、生態、そして地形を俺は多くを知らない。
それは今までの生涯をほぼウヌア大陸で過ごして来たからという経験と、他大陸の情報は代表国が一年に2度ほど開く大衆への演説でしか語られない為というのもある。
他には他大陸に行った勇者がギルドで話しているのを聞いたり、情報屋から情報を買うことくらい。
俺も国が開く演説を全て聞きに行っているわけではなく、耳に入って来る他大陸の情報を聞き流して来た程度。
それでも、こうして魔王の城があるとされるトリトン大陸まで来たのは実力ではなく、流れだろう。

その時だった。
セシルが言ったような何かが弾けるような音が俺にも聞こえた。
瞬間、俺たちがいる場所より遠い場所で赤く光る玉が空へ向かって猛スピードで上がっていく。それは弾け、空の色に溶けるように消えていった。

「セシルが聞いたのはあの音か?」

「うん。ああっ! また!」

すると、またしても同じようなものが空へ上がっていき弾けては消える。
その後、しばらくは見えなくなったのだが、同じようなものが何度か空へ上がっていったのを見た。
方向はばらばらだったが、この先で何かが起きているのは間違いないだろう。

そうして森の中を進んで行った先には、俺たちの他にも魔物と戦う者たちがいた。

「コイツ! 何てすばしっこいの!? レオン! そっち行ったわよ!」

女は武器を両手持ちにして、蜘蛛の魔物であるメテオスパイダーを相手に戦っていた。

「任せ……ろ!! ーーはへ?」

レオン、そう女に呼ばれた男は向かって来たメテオスパイダーに対して斬撃を放ったのだが、当たったはずのメテオスパイダーは平気のようだ。


メテオスパイダー
LV.99
ATK.109
DEF.136


この2人がそもそも誰かは知らないが、少なくともジバルドのようなニオイはしない。

「こんなところに人!? 貴方達危ないから早く逃げて!」

俺たちに気付いた女が叫ぶように言う。

「ギュアアアアアアアア!!」

どうやら、メテオスパイダーが俺たちに標的を変えたようだ。
魔虫は気性が荒いというが、蜘蛛系が面倒だと言われるのはそのしつこさにある。その上、レベルの高い魔虫の多くが鉄以上の身体を持っているのがほとんどで、勇者の斬撃を防ぐ防御力はステータス以外にも持っているということになる。

「ギュアア!? ……ア」

最も、俺の相手にはならなかった。
攻斬波で一撃とは、魔物特攻特性はやはり強い。ただ、バックアップでラピスが上昇を使ってくれていたようだ。それに加え、俺が狙ったのはメテオスパイダーの急所。身体は硬いが目印の背の星を狙えばいい。小さい的だが、当たれば大ダメージは確実だ。
連携プレイ、仲間とは素晴らしい。

「大丈夫ですか~!」

ターザンの要領で女が俺たちの元に降り立ち、攻斬波で斬れたメテオスパイダーを見ては頭だけ俺に向ける。
再度、メテオスパイダーの息が止まっているのを確認したそうで、頷いて男の方に手を振って合図を送った。
だが、男は腕を組んでふんっとそっぽを向いた。

すると、女が俺たちの方に振り向き微笑したかと思うと、また男の方へ向いてーー。

「危っねえだろ!! 馬鹿!! はっ!?」

男は自分の言動に口を抑えるが、女は赤く光る玉を連射する。

「……な、なあ? 俺たちもう行かない?」

テールが気まずそうにそう言う。

「そうもいかないだろ。見ろ」

ジバルドとはまた違った意味でやばそうな連中。赤い光の玉がどういうものかも見てだいたい見て取れる。
男が避けて当たった樹には何ともないのだが、男の真上に現れたポイズンサーペントが一方的にやられている。
男も直ぐにそれに気付いて、ポイズンサーペントの頭を斬り落とした。その後、一匹のポイズンサーペントを機に樹々の上から垂れて来るポイズンサーペントの群れ。ざっとレベル70代が2、30。
ポイズンサーペントは毒だけでなく、その巨体も注意が必要な魔物。およそ13メートル強ほどで胴回りは人の胴体ほどもある魔物。

そうして、俺たちも参戦してポイズンサーペントの掃討にかかった。
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