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第1章 電車で
それは、黒い蝶のような
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ギギ、ギギギ……ギ、ギ
鈍い金属音を響かせながら、銀色で長いながーい、四角いおっきい箱のようなものが何個も連なって――電車がやって来た。
遠目にはおもちゃのよう。だけど、目の前まで来ると迫る壁のよう。
パシュッ
空気の漏れる音と共に、壁のような体に『さあ、お入り』と言わんばかりの大きな口がぽっかりと開く。
もちろん、これに乗るために来たんだけど。でも、大きな機械に飲み込まれちゃう……。
蛇に丸呑みにされるような……されたことないけど……おなかの中がふわふわ浮き上がるような、みづきの足が勝手に曲がれ右して逃げ出すちゃうような……。
たよりない私の足に、逃げちゃダメだよ、って言うことを聞かせて、軽く目をつぶって、ぴょん、と乗り込んで。
手すりにつかまって、ホームでぴかぴか光ってる電光掲示板を、ちらり。
うん、大丈夫。目的地は合ってる。よね?
頭の中に、おっけーぐっじょぶ。落ち着いて! という声と、反対方向に走り出したらどうしよう、という声がわいわいと騒ぎ立てていて、目がぐるぐると回りそう。
そこに『いいかげん覚悟を決めなさい』とばかりに、ピロリロロリローと電車の発車音がホームに鳴り響いて――
その時。ホームの階段から、影のように黒い蝶が、ひらりと舞い降りた。
それは蝶ではなく、少女。
背が高く、黒いワンピースを身につけた女性が、ふわりとスカートをなびかせながら、長い黒髪をひるがえして階段から降りてきた。
ホームに着地して、少しフラつきながらも体制を整えて、辺りを見回し、発車寸前の電車の乗車口――私に向かって駆けてくる。
その目は蒼く、見開かれて、腕を伸ばしてこちらへ向けている。
それは、待って、行かないで! という叫び声を発したかのような。
無意識に、体をホームに向けて投げ出す。
片手は電車の手すりに。身を乗りだして、反対の手をその子に差し出して。
黒髪の少女の手を掴み、一気に、電車の中へと引っ張り込む。
天からの陽光の元、二つの影が一つに合わさり、電車の中へと消える。
ベルの音が終わり、プシュッと扉が閉まり――電子音を上げながら電車が走り出した。
「わっ……ぷ!」
電車の中、その子と絡まったまま後ろ向きに床へと倒れ込む。
背中にはボフッと鈍い衝撃。ショルダーバッグがクッションになってくれた、らしい……けど!
正面から、黒髪の子が倒れ込んできた。
細くて軽いけれども、むにゅっと柔らかくてほんのり温かい、はっきりと重みのあるこの、なんていうか、はさまれて呼吸が……できないので……はやく、起き上がってくださぁい……
って……あれ?
いくらモゾモゾと動いても反応がない。
なんとか体をよじらせてその子の下から脱出して、あのぉ……、って声をかけながらお顔を覗き込んでみると……目を閉じて、ぐったりとしていた。
「あぁぁ、大丈夫ですかぁ⁉」
あわててその子の上半身だけでも抱き起こし、とりあえず集まっている視線の事は考えないようにして、かかえながら椅子の方へとじりじりとにじり寄った。
鈍い金属音を響かせながら、銀色で長いながーい、四角いおっきい箱のようなものが何個も連なって――電車がやって来た。
遠目にはおもちゃのよう。だけど、目の前まで来ると迫る壁のよう。
パシュッ
空気の漏れる音と共に、壁のような体に『さあ、お入り』と言わんばかりの大きな口がぽっかりと開く。
もちろん、これに乗るために来たんだけど。でも、大きな機械に飲み込まれちゃう……。
蛇に丸呑みにされるような……されたことないけど……おなかの中がふわふわ浮き上がるような、みづきの足が勝手に曲がれ右して逃げ出すちゃうような……。
たよりない私の足に、逃げちゃダメだよ、って言うことを聞かせて、軽く目をつぶって、ぴょん、と乗り込んで。
手すりにつかまって、ホームでぴかぴか光ってる電光掲示板を、ちらり。
うん、大丈夫。目的地は合ってる。よね?
頭の中に、おっけーぐっじょぶ。落ち着いて! という声と、反対方向に走り出したらどうしよう、という声がわいわいと騒ぎ立てていて、目がぐるぐると回りそう。
そこに『いいかげん覚悟を決めなさい』とばかりに、ピロリロロリローと電車の発車音がホームに鳴り響いて――
その時。ホームの階段から、影のように黒い蝶が、ひらりと舞い降りた。
それは蝶ではなく、少女。
背が高く、黒いワンピースを身につけた女性が、ふわりとスカートをなびかせながら、長い黒髪をひるがえして階段から降りてきた。
ホームに着地して、少しフラつきながらも体制を整えて、辺りを見回し、発車寸前の電車の乗車口――私に向かって駆けてくる。
その目は蒼く、見開かれて、腕を伸ばしてこちらへ向けている。
それは、待って、行かないで! という叫び声を発したかのような。
無意識に、体をホームに向けて投げ出す。
片手は電車の手すりに。身を乗りだして、反対の手をその子に差し出して。
黒髪の少女の手を掴み、一気に、電車の中へと引っ張り込む。
天からの陽光の元、二つの影が一つに合わさり、電車の中へと消える。
ベルの音が終わり、プシュッと扉が閉まり――電子音を上げながら電車が走り出した。
「わっ……ぷ!」
電車の中、その子と絡まったまま後ろ向きに床へと倒れ込む。
背中にはボフッと鈍い衝撃。ショルダーバッグがクッションになってくれた、らしい……けど!
正面から、黒髪の子が倒れ込んできた。
細くて軽いけれども、むにゅっと柔らかくてほんのり温かい、はっきりと重みのあるこの、なんていうか、はさまれて呼吸が……できないので……はやく、起き上がってくださぁい……
って……あれ?
いくらモゾモゾと動いても反応がない。
なんとか体をよじらせてその子の下から脱出して、あのぉ……、って声をかけながらお顔を覗き込んでみると……目を閉じて、ぐったりとしていた。
「あぁぁ、大丈夫ですかぁ⁉」
あわててその子の上半身だけでも抱き起こし、とりあえず集まっている視線の事は考えないようにして、かかえながら椅子の方へとじりじりとにじり寄った。
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イラスト:tojo様(@tojonatori)
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