ヴィーナスは微笑む~Another story~

蒼井 結花理

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第一章

第3話

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今日は元々顔合わせが目的で、特に勉強を教える予定はなかったため、明美と果穂・瑞穂の三人と一緒にしばらくリビングでの談笑が続いた。


果穂はよく笑い、よく喋る女の子らしい。


紅茶を飲みながら、千尋のことを色々聞いてきた。


年は?学校は?趣味は?好きな食べ物は?彼氏はいるの?などなど。


千尋は果穂の人懐っこさに微笑ましい気持ちになりながら、一つ一つ受け答えしていった。


果穂の目はきらきらと興味の光を放ちながら、千尋の話を聞いていた。


一方瑞穂の方は大人しく、舞と果穂の話を微笑みながら聞いている。


果歩とは違い、おしとやかな子なのだな、という印象を受けた。



これは今になって気づいたのだが、瑞穂は何事も姉の果穂を優先した。


挨拶する時も、座る時も、紅茶を飲む時でさえ、果穂が先だった。


それほどまでに姉のことを慕っているという証拠だ。瑞穂にとって姉の果穂は憧れの存在なのだろう。


姉の果穂はそれほどまでに"女王様"の雰囲気を醸し出していた。


元々備わっている、カリスマ性というものだろうか。



当然果穂も妹の瑞穂のことはとても可愛がっており、瑞穂に話しかける時はとても愛おしそうに微笑んでいた。


そんな二人を、母親の明美もどこか誇らしげな表情で見つめている。


これほどの美貌を兼ね備えてる娘を二人も授かっていて、明美もさぞかし幸せなのだろうなと千尋は思った。


そして、そんなとてつもなく高貴な雰囲気に包まれた家での家庭教師をこれから務めるということに、千尋も高揚した気分になっていた。



そんなこんなで千尋が西園寺家をお暇することになったのは、千尋が家に来てから三時間後のこと。


かれこれそんな時間談笑していたのか、と千尋は心の中で苦笑する。


でもこんなに可愛らしい女の子二人に会えて、千尋の心は弾んでいた。



「それでは、お邪魔いたしました。」


「いいえ、何のおかまいもできせんで。」


「とんでもないです。ケーキまでいただいてしまって…なんだか気を使わせてしまってこちらこそ申し訳ありません。」


「あら、本当に我が家では食べないから気にしなくていいのよ。」


明美がそう言って口元に手を当てながら微笑む。


それが、明美の癖のようだった。


けれどその仕草はとても上品で美しい。


「次は、いつお伺いすればよろしいでしょうか。」



千尋が問うと、そうね…、と明美が人差し指を顎に当てて首を傾げる。


「千尋さんがご迷惑でなければ今後の土曜日の十四時あたりはいかがかしら?その時は主人もいるかと思いますので、あなたにご紹介できると思うわ。」


「次の土曜日でしたら大丈夫です!」


「良かった。それではお願いしますね。」


明美は膝に両手を付き、深々と丁寧にお辞儀をする。


果穂と瑞穂もそれに倣った。


千尋はどこかほくほくした気分のまま、家路に着いたのだった。
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