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第一章
第18話
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この日千尋は、水ノ森中学校へ足を運んでいた。
自分が首を突っ込むことではないとは分かっていた。
関わってもあまり良くないだろうということも。
だけどどうしても、"あの出来事"が気になって頭からずっと離れずにいたのだ。
そう、女子生徒が階段から突き落とされたという出来事。
あれからもう一か月が経っている。
果穂から聞いた話だと軽い捻挫だったというから、もう普通に登校はしているだろう。
迷ったあげく、千尋はその時のことをその女子生徒から聞いてみようと思い立った。
千尋は大きくなっていく鼓動を、深呼吸で落ち着かせる。
下校時刻を見計らってきたので、今は沢山の生徒が友達と楽しそうにお喋りをしながら門から出てきていた。
その女子生徒の名前は知らないが、衝撃的な出来事だったから顔はしっかり覚えている。
千尋は目立たないように小説を読むふりをしながら、出てくる生徒の顔を観察し続けた。
その時。
「あ!」
思わず小さく声を上げていた。
他の生徒が友達と楽しく談笑しながら下校している中、一人だけぽつんと歩いてくる生徒がいた。
下を向いて、とぼとぼとこちらに向かってくる。
間違いない、あの子だ!
千尋は持っていた小説をカバンにしまい、女子生徒に駆け寄った。
「ねぇ」
声をかけられて、その女子生徒はびくりと肩を震わせて顔を上げた。
自分が声をかけられるとは思わなかったのだろう。
その目は小動物のように怯えていた。
何かに警戒しているような、そんな表情にも見える。
「あなたは…?」
「あ、急にごめんね。私、栗原千尋っていいます。西園寺さんの家庭教師をしているの。」
「西園寺さん、の?」
その苗字を聞いたとたん、彼女の怯えの色がさらに深まった。
小さくぷるぷると手を震わせている。
あの時のことを、思い出させてしまったのだろうか。
千尋は若干の罪悪感を抱きながらも、彼女に優しく話しかけていく。
「急に声をかけて、驚かせちゃってごめんね。西園寺さんからその……色々と話を聞いたの。西園寺さんの学校でそんなことがあったって知って、びっくりしちゃって。」
「………」
「ごめんなさい。実は私あの時、見ちゃってたんだ。あなた、西園寺さんにキーホルダーを届けてあげてたでしょう。だから、優しい子だなぁって思ってあなたの顔だけは覚えてたんだ。」
「………」
「良かったら、あなたに何があったのか聞かせてくれないかな?お姉さん、力になりたいから。」
女子生徒は、困惑した目で千尋を見てくる。
当然だ。突然知らない人から声をかけられて、こんなことを言われたのだ。
彼女はまだ、千尋を信用してもいいのかどうか迷っている様子だった。
もちろん、千尋にとってはこれも想定内。
どうやって彼女の警戒心を解こうか。
頭の中でぐるぐると考えを巡らせていた、その時。
ぐぅぅぅぅ、とこの場にそぐわない音が聞こえた。
音を発した本人は、それまでの若干の警戒心とは打って変わって恥ずかしそうに顔を背ける。
思わず千尋はくすりと笑ってしまった。
「それでは私はここで…!」
彼女が恥ずかし気に千尋の隣を通り過ぎようとする。
「ねぇ」
「……?」
思わず声をかけると、彼女はゆっくりと上げた。
千尋の顔を見て、彼女はさらに顔を真っ赤にさせる。
「良かったら、一緒に何か食べて行かない?もちろん驕るよ。」
自分が首を突っ込むことではないとは分かっていた。
関わってもあまり良くないだろうということも。
だけどどうしても、"あの出来事"が気になって頭からずっと離れずにいたのだ。
そう、女子生徒が階段から突き落とされたという出来事。
あれからもう一か月が経っている。
果穂から聞いた話だと軽い捻挫だったというから、もう普通に登校はしているだろう。
迷ったあげく、千尋はその時のことをその女子生徒から聞いてみようと思い立った。
千尋は大きくなっていく鼓動を、深呼吸で落ち着かせる。
下校時刻を見計らってきたので、今は沢山の生徒が友達と楽しそうにお喋りをしながら門から出てきていた。
その女子生徒の名前は知らないが、衝撃的な出来事だったから顔はしっかり覚えている。
千尋は目立たないように小説を読むふりをしながら、出てくる生徒の顔を観察し続けた。
その時。
「あ!」
思わず小さく声を上げていた。
他の生徒が友達と楽しく談笑しながら下校している中、一人だけぽつんと歩いてくる生徒がいた。
下を向いて、とぼとぼとこちらに向かってくる。
間違いない、あの子だ!
千尋は持っていた小説をカバンにしまい、女子生徒に駆け寄った。
「ねぇ」
声をかけられて、その女子生徒はびくりと肩を震わせて顔を上げた。
自分が声をかけられるとは思わなかったのだろう。
その目は小動物のように怯えていた。
何かに警戒しているような、そんな表情にも見える。
「あなたは…?」
「あ、急にごめんね。私、栗原千尋っていいます。西園寺さんの家庭教師をしているの。」
「西園寺さん、の?」
その苗字を聞いたとたん、彼女の怯えの色がさらに深まった。
小さくぷるぷると手を震わせている。
あの時のことを、思い出させてしまったのだろうか。
千尋は若干の罪悪感を抱きながらも、彼女に優しく話しかけていく。
「急に声をかけて、驚かせちゃってごめんね。西園寺さんからその……色々と話を聞いたの。西園寺さんの学校でそんなことがあったって知って、びっくりしちゃって。」
「………」
「ごめんなさい。実は私あの時、見ちゃってたんだ。あなた、西園寺さんにキーホルダーを届けてあげてたでしょう。だから、優しい子だなぁって思ってあなたの顔だけは覚えてたんだ。」
「………」
「良かったら、あなたに何があったのか聞かせてくれないかな?お姉さん、力になりたいから。」
女子生徒は、困惑した目で千尋を見てくる。
当然だ。突然知らない人から声をかけられて、こんなことを言われたのだ。
彼女はまだ、千尋を信用してもいいのかどうか迷っている様子だった。
もちろん、千尋にとってはこれも想定内。
どうやって彼女の警戒心を解こうか。
頭の中でぐるぐると考えを巡らせていた、その時。
ぐぅぅぅぅ、とこの場にそぐわない音が聞こえた。
音を発した本人は、それまでの若干の警戒心とは打って変わって恥ずかしそうに顔を背ける。
思わず千尋はくすりと笑ってしまった。
「それでは私はここで…!」
彼女が恥ずかし気に千尋の隣を通り過ぎようとする。
「ねぇ」
「……?」
思わず声をかけると、彼女はゆっくりと上げた。
千尋の顔を見て、彼女はさらに顔を真っ赤にさせる。
「良かったら、一緒に何か食べて行かない?もちろん驕るよ。」
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